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株は創業者個人名義で持つべきか?資産管理会社で持つべきか?
スタートアップの創業者は個人名義で株を持つべきか?資産管理会社を作り、会社名義で持つべきか?
税の側面から見た創業者株の最適な保有方法についての考察する。
結論
MAイグジットを目指すならば、創業者が個人名義で保有する方が得になる。
一方で、IPO後も引き続き現場で事業成長にコミットするつもりなら、創業者株は個人名義ではなく、資産管理会社に移すほうが得になる。
この結論の背景を以下で話してみたい。
MAイグジットの場合(創業者個人名義の方が得)
M&Aイグジットを狙う場合、一般的には買い手企業に株をすべて売却することになる。つまり、キャピタルゲイン課税が発生することになる。
社長が個人名義で保有している場合、個人の所得税の対象となる。所得税法によると株の売却による利益は譲渡所得に該当する。譲渡所得に対する課税は分離課税方式で20.42%という低率で済む。
これはキャピタルゲインが100万円であっても、100億円であっても一律20.42%だ。
一方で、社長の資産管理会社が株式を保有している場合、法人税の対象となる。法人税法によると儲けに対して一律の税率を乗じて納税額が算定することになるが、この税率が概ね31%。
つまり、イグジットを前提としているならば、個人で株を持っているほうが手取りが多くなるため、創業者自身で保有を続ける選択が合理的だ。
IPOの場合(資産管理会社名義の方が得)
IPOの場合、MAイグジットと異なり株式を引き続き保有することになる。東証に上場し、多くの投資家に株を買ってもらっている中で創業者が株を手放すことはなかなかしにくい。
つまり、上場後も引き続き事業にコミットし、安定して利益を上げて社長兼大株主として配当によるインカムゲインを得る方式に変わってくる。
個人の場合、配当所得も原則として分離課税の20.42%が適用される。
しかし、大株主、すなわち上場企業において3%以上の株式を保有している場合、配当所得は総合課税に組み込まれ、場合によっては最高税率55%に達する。
これは、一定の所得水準を超えると高い累進課税率が適用されるためです。
これに対して、資産管理会社が配当を受け取るケースでは、まず法人税率が31%と固定されており、また、配当金に対しては一定の非課税枠(20%~100%の幅があります)が設けられているため、実質的な税負担が大幅に軽減される。
つまり、IPOによって株が売れない。結果、配当によるインカムゲインにシフトせざるを得ない。
この場合は社長個人名義で株を保有するより資産管理会社名義で保有することで税金面のメリットを得ることができる。
繰り返しですが、まとめると、、
このように、MAイグジットを前提とするか、IPOを前提とするかによって、社長個人名義で株を持つか、資産管理会社名義で持つか、その保有方法により税額が大きく異なる。
もし、将来的にM&Aイグジットは個人で株式を保有する方が有利です。売却時の税率が低く、売却益をより効率的に手元に残せるためです。
一方で、IPOであればなかなか株も売れないので配当収入を得る術しかないが、資産管理会社に株式を移しておくことで、配当課税の負担を軽減し、経済的なメリットを享受することができるのです。
ちなみに、
「IPO時に創業者持分を売出す計画です」という場合はどうすればいいのか?
株を売却することになるので、MAとイグジットと同じで個人の創業者名義で保有していた方が税務メリットがある。
「スイングバイIPOを目指しています」という場合はどうすればいいのか?
株をイグジットするのは外部の投資家であり、創業者はIPO後も基本的に一定割合の株を持ち続け配当によるインカムゲインを目指すはずだ。
従って、その場合は資産管理会社名義で株を保有する方がメリットがある。
複雑なケースでも株を売却するなら個人。株を持ち続けるなら資産管理会社という基本的な考え方は変わらない。