水地一彰(みずちかずあき) スタートアップ× web3× 公認会計士

スタートアップの経営とトークン・NFTの制度(法・税・会計・ファイナンス)の情報発信します!会計士|税理士|元経産官僚|エンジェル税制|エクイティ| SO | トークンファイナンス| M&A | IPO | IEO | 事業再生|スタートアップの入口から出口まで支援

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最近の記事

株とトークン

株式会社において資本家からお金を集める際に発行される株式。 トランプ大統領誕生以来爆上げしているビットコインなどの暗号資産に代表されるトークン。 この2つの違いを理解している人はどれほどいるだろうか? これを説明する上でいくつか切り口はあるが、本noteでは株主としての権利である「議決権の有無」と「配当の有無」の2軸4象限で切って解説したい。 株式とトークンの分類株式とは「均等に細分化された割合的単位の形を取る株式会社の社員としての地位」であると定義されている。 端的

    • カブアンドピース社の何が斬新なのか?

      「1億総株主化計画」を打ち出したカブアンドピース社(前澤さん)の取組が本当に面白い。 前澤さんのSNSやyoutubeを見ても本気度が窺えるし、テレビCMも始まりいよいよ走り出した感じだ。 「何がどう斬新なのか??」僕なりに少し整理できたのでまとめてみた。 まずは前提として、「一般的な株式会社の型」を説明することから始めたい。 一般的な株式会社の型株式会社にはトヨタやソニーのように世界中でビジネスして、株主が数万人を超えるような大企業から、地元の商店街にある電気屋や町工

      • SOの権利行使価額はどうすればいいのか?

        SOのセーフハーバールールが国税庁より発表されて1年。 一株当たり純資産を時価=権利行使価額として、(場合によっては)1円の権利行使価額で適格SOを発行することが可能になった。 これまでは税制適格要件にタガが嵌められて、SOの設計に裁量の余地はそれほどなかった。 しかし、国税庁の発表によりこのタガが外れたことで税制適格ストックオプションの設計の自由度も上がった。 自由な設計ができるようになった反面、各社の置かれた状況を踏まえて自身で決定しなければならなくなった。 何が

        • SOの会計処理(権利行使価額を時価以下に設定した場合)

          セーフハーバールールができて1年。 「結局SOどうすればいいですか?よく分からないのですが。。。」 という質問を未だによく受ける。 「1円SO発行できるからサイコーじゃん!」と一瞬沸き立ったが、、、 すぐに株主からは1円SOに否定的なことを言われて、監査法人もセーフハーバールールを適用するSOを発行するならば監査報酬を上げる的なことも言われる。 2024年11月時点で一旦総括すると、結局1円SOの発行はそれほど普及しなかったように思う。特にシリーズA以降の会社においては。

          スタートアップMAイグジットをPLとBSから深掘る

          I. はじめにスタートアップMAが活況になってきた。冷え込んだグロース市場を背景にIPOイグジットが増えてこない。 そんな中10年の満期を迎えるVCのイグジット手段としてMAの選択肢が増えてくるのは必然だ。(セカンダリーマーケットの議論も同じアナロジーだろう。) IPOといえば、監査法人の監査、主幹事証券会社と東京証券取引所の審査という重たいプロセスを経る必要があり、この知見はオンライン・オフラインを通じて、先輩経営者からも共有されているため、なんとなく大変だということは

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          1億総株主計画カブ&ピースのスキーム

          I. はじめに前澤さんが新たに始めたカブ&ピース社の取組が面白い。 新たに展開する電気、ガス、モバイル、ひかり、ふるさと納税、ウォーターサーバーの6事業の顧客に対して自社の株式を配るというもの。 割引券やポイント配る代わりに自社の株を配ろうとする斬新的な取り組みだ。 あまりにも面白すぎる取組なのですが、同社が発行する有価証券届出書をちゃんと見てみたら、そのスキームも超面白かったので、以下で解説してみようと思う。 II. 有価証券届出書をして資金調達するということそもそ

          NFTが資本コスト(WACC)を下げる

          I. はじめに2021年-2022年に盛り上がったNFT市場が徐々に下降の一途をたどり、2024年7月現在マクロ的に見ると厳しい状況に陥っている(定量的分析はここでは割愛)。 「時代を変える画期的なテクノロジー」と言われたが、2-3年経って答え合わせをしてみると、「あれは一次のブームだった」と評価せざるを得ない。 では、、 NFTという技術に価値はないのか? ビジネスで活用することはできないのか? と問われると、「可能性は無限にある」というのが僕の見立てだ。 具体

          トークンファイナンスか?エクイティファイナンスか?

          I. はじめにweb3スタートアップで悩ましい選択がある。 エクイティで資金調達するか トークンで資金調達するか この2択は実に難しい選択だ。 そして、比較的早いステージでこの選択を迫られることが多い。 そこで、 なぜこの選択が悩ましいのか?そして、エクイティ、トークンそれぞれを選択した際のメリデメ、そして、最後に今時点で考える僕の解をまとめてみる。 誰か1人でも参考になれば幸いです。 II. エクイティ vs トークンの選択が悩ましい理由なぜ、エクイティとトー

          トークンファイナンスか?エクイティファイナンスか?

          シリーズAの前にM&Aイグジットを検討しておく理由

          I. はじめにスタートアップのM&Aがイグジットが増えてきた。 国を上げた起業ブームで起業家の絶対数が増え、リスクマネーの総量の増加により日本のスタートアップの裾野はこの10年で拡がった。 一方で、イグジットとしてのIPO件数はここ5年でほぼ横ばい。全く増えていない。 上場承認をする東証上場審査部のリソースを考えても100件程度が現実的なラインだし、証券会社や監査法人といったIPOに関与するプレイヤーも人不足で案件を受けられないという事態に陥っている。 兎にも角にも、

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          アーンアウト条項に関する税務上の取扱い

          I. はじめにスタートアップのM&Aがイグジットが増えてきた。 国を上げた起業ブームで起業家の絶対数が増え、リスクマネーの総量の増加により日本のスタートアップの裾野はこの10年で拡がった。 一方で、イグジットとしてのIPO件数はここ5年でほぼ横ばい。全く増えていない。 上場承認をする東証上場審査部のリソースを考えても100件程度が現実的なラインだし、証券会社や監査法人といったIPOに関与するプレイヤーも人不足で案件を受けられないという事態に陥っている。 兎にも角にも、入

          ステーブルコインでの現物出資

          I. はじめに最近「USDTで出資できますか?」という問い合わせが増えてきた。 2023年に資金決済法が改正され、いわゆるステーブルコインが日本でも認められるようになった。 もともと米ドルにpegしたUSDTやUSDCは仮想通貨のボラティリティを回避する目的で流通していたが、 今般資金決済法の改正によりステーブルコインが法制度に位置づけられることで、これらUSDTやUSDCの出資も一般的になってきたことが背景だ。 II. 結論USDTやUSDCなどのステーブルコインで

          1円ストック・オプションの会計処理及び監査対応

          I. はじめに2023年7月国税庁が「信託型ストックオプションは給与課税の対象!」という旨の見解を出し、スタートアップ界隈が震えあがった日、国税庁はこれまで曖昧になっていたストックオプションの権利行使価額の考え方を明確に示した。 俗にいう1円SOの解禁である。 信託SOにNGを突き付けつつ、一方で、1円SOを認めるというバーター取引。アメとムチを使いこなす国税庁の手腕には頭が下がるばかりだ。 この1円SOとは、端的に言うと、適格SOの要件として「権利行使価額を時価以上と

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          IPOとIEOを比較する

          I. はじめにIEO(Initial Exchange Offering)という資金調達方法があるのをご存知だろうか? 暗号資産取引所を通じてトークンを投資家に販売し、そのトークンをそのまま取引所で売買できるようになる仕組みだ。 これは、株式を上場するIPO(Initial Public Offering)のアナロジーからIEOと呼ばれるようになった。 そもそもIPOとは株式を発行することで多数の投資家から資金を調達することを意味するが、同時に株式を市場に上場させること

          エルフトークンIEOに関する会計処理と今後のIEOで思うこと

          I. 訂正と謝罪「IEO時の会計処理は売上計上するのではなく、負債として計上される。」と記載した。 しかし、ビットフライヤー社がリリースしているIEOに関する開示情報ではエルフトークンのIEO時の会計処理について「売上計上」という記載がある。 結果、発行元の株式会社HashPalletの純資産は改善され、債務超過は解消される(と考えられる)。 この点は、僕が開示情報を十分に読み込まずに誤った情報を伝え、多くの方に誤解を与えてしまった。深く反省します。 そして、本件ご指摘いた

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          フィナンシェのスキームと法、税、会計

          I. はじめに最近話題のフィナンシェ。 「トークン!!ウェイ!!」みたいな一部のweb3の人の間で盛り上がりを見せているが、実はCAMPFIREやready forなどのクラウドファンディングのプラットフォームと同じく、どちらかというとweb2的な購入型(or寄附型)のクラウドファインディングのプラットサービスを提供している。 ざっくりサービスを解説する。 フィナンシェが発行するフィナンシェポイントをクレジットカードで購入する 購入したフィナンシェポイントでフィナンシェ

          どうする?1円ストックオプションの対応

          I. はじめに2023年7月に国税庁から発表された1円ストックオプション(権利行使価額1円で適格要件が満たされるストックオプション)。 https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/kaisei/230707/pdf/02.pdf ストックオプション(SO)を付与された従業員のインセンティブが増加する改正であることは間違いないが、一方で、SOの設計の自由度が増すことにより、これが却って多くのスタートアップを悩ませている。