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歪んだそれに名前はない 01|連載小説

波の音がすぐそばで聴こえる。
ボンネットの上に座り、煙草の煙を夜空に吹き掛けた。

あの夜も…こんなに星が瞬いていた。



15歳の時には、俺は夜遊びの常習犯だった。
察にも何度も補導され、酒に酔ったままの母親が迎えに来るのはお決まりだった。

帰れば母親からビンタされ、俺は殴り返した。
父親は帰って来ても、直ぐに別宅に向かい翌日の夜に帰ってくる、それが我が家だった。
父親は徹底して、俺を居ないものとして扱い、母親は世間体を気にして離婚しないだけの存在。
アルコール依存症になっていても、何も助けもせずに十分過ぎる生活費を渡していた。

父親の不倫は俺が物心ついた時には、もう始まっていた。
母親も、その時には他に何人もの男がいた。

ある日学校から帰って来たら、2階の寝室から声が漏れていた。
まだ小学生の俺は、母親が泣いているのかと思い
「ママ…どうしたの…」
その時の光景は、当時の俺にはショック過ぎてハッキリ思い出せない。
ただ、俺の中で何かが崩れ落ち、代わりに歪んだ感情が芽生えたのを覚えている。

それから3年位が経った頃、風呂に入っていたところ、急に母親が「一緒に入ろう」と言いながら、背中を洗ってくれていたら突然、柔らかいものが押し当てられた。
俺は何が起きてるのか分からずに混乱した。

母親は俺の勃起したものを強く握り、激しく上下に動かし始めた。
頭が真っ白になった。

それを見て母親は「気持ち良かったのね?」と、女の表情で言った。
以来、母親は風呂に入って来るのが日課になり、行為はエスカレートして行き……
俺は童貞を捨てた。

俺の上で激しく腰を振る母親の唇を舌でこじ開け、舌を絡ませた。
お互いに求め合い、愛も知らないセックスを繰り返した。

高校生になり、初めて彼女が出来た俺は夢中になった。
学校は相変わらず行っていなかったし、喧嘩もしてたが、彼女に会うと荒んだ心が癒された。

初めて彼女を抱いた時、処女だと告げた彼女の少し不安そうな顔が愛しく、大切にしたいと思えた。
こいつとずっと…そんな生易しい事まで考えていた。

だが俺の変化に一早く気付いた母親は、彼女の携帯に無言電話を非通知で掛けたり、SNSに彼女が淫乱だと書いたデマを拡散したりした。
俺は怒り狂い、母親を殴った。
その度に母親は、腫れた顔で俺に抱きつき、俺にキスをした。
俺は、此処には居られない、そう決心して家を出た。
ただ、高校生のガキの家出だ。
たかが知れてる。
父親にもすぐにばれ、家に連れ戻された。

冷たい空気が流れるリビング。
誰も口を開かなかった。
突然母親が、キッチンに向かい包丁を取り出した、かと思ったら手首に滑らせた。
あまりに素早い行動に、俺も父親も一瞬頭が追いつかなかった。
ドサッと倒れた音と、父親が「119番!」と叫んだのが同時だった。

俺は震える手で、通話ボタンを押した。


[ᴛᴏ ʙᴇ ᴄᴏɴᴛɪɴᴜᴇᴅ]



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