東京
東京ってすごい。
私の住んでる街じゃ1時間に1本しか来ない電車も東京だと5分も満たないうちに来るし。
それに終電が12時ぐらいまであって夜遅くに人がごった返す車内もこれまた新鮮だった。
人ごみの中で1人立ち止まってみる。
誰も私を振り返らない。
皆がそれぞれの道を歩いている。
信号が点滅し始めた。
足を早める人を横目にゆっくりと踏み出した右足は、もう歩みを止めなかった。
今の私はどこへ向かっているのだろう。
目的地も分からずに歩き続けた。
私はこの街で働くことはないだろう。
だから東京で働く人は本当にすごいと思う。
カチッと決めた服装も夜にはどこかへ置き去りにして、でもその数時間後にはまた同じ服装で電車に揺られる。
その生活を何年も、何十年も。
働いている大人はかっこいい。
隣の席の左薬指に指輪をはめているサラリーマンが上司らしき人に怒られていた。
“ありがとうございました。お疲れ様でした”
くたびれた様子の男性はシャキッと背筋を伸ばして凛と駅のホームに降り立っていった。
上司というしがらみから解放された男性は帰ってこっそり子供の寝顔を見るのだろうか。
奥さんに愚痴を言うのだろうか。
それとも明日はどこ行こうかなんて話してるのかもしれない。
他愛もない話に幸せを噛み締めて。
なんだ、東京でも星が見えるじゃんか。
燦然としたビルの隙間から月も星も負けじと光ってるじゃんか。
私もそんな存在になれるのかな。
一際目立つ輝きじゃなくていい、でも誰かを隙間からひっそりと照らせるような存在に。
私が語る理想郷は、いつか現実になるのだろうか。
このまま夜に取り残されてみたかった。
読んでくださってありがとうございます。
東京繋がりで今度は東京旅行記でも綴ろうかなと思います。
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