『ワンフレーズ』 9話 「2人と3人と」
若干二日酔いが混じる朝、自分の部屋で目が覚めた。 携帯を見ると、なぜかヨウジから十数件の不在着信が入っていた。まだ九時半なのに、一体どうしたんだろうか。
「おはよう、ごめん、寝てて気付かなかった」
「やっと出てくれた、朝早くに悪い」
電話越しからでも、落ち着きを失っているのが見て取れる。いつも何かあると、連絡はとってはいたんだけれど、ヨウジの声を久しぶりにちゃんと聞いた気がした。
「いいよ、どうしたの?」
「おい死んじまったぞアイツ」
「え、なに、だれ?」
「カズマ」
「え?」
「今朝、カズマが家で自殺したらしい、六時ごろだって」
「え?嘘でしょ?」
「こんな嘘つくかよ」
「自殺って・・・どうやって」
「睡眠薬だって、朝になっても起きないからお父さんが部屋に見にいったら、息してなかったらしい」
「マジかよ・・・」
頭がぐらぐらした、寝起きもあいまって、ヨウジの話が受け止めきれない。
「こういう時って、どうしたらいいんだ?」
何か片付けみたいなことをしているのか、電話越しにばたばたと音が聞こえた、赤ちゃんの不安そうな泣き声も。
「今どこにいるの?」
「自分の家、リコと子供といるよ、一応仕事は休んだ」
「カズマの家には?」
「今警察がいて入れないらしい、事件性はないみたいだけど・・・」
「そうか、そうだよな今日の話だもんな」
ヨウジとカズマは、僕の幼馴染だ。ヨウジが小学校と中学校、カズマが小中高と一緒だ。家も近所で、小さい頃は、遊んでいなかった日なんて一日もないんじゃないかってくらい、いつも三人で一緒にいた。ちなみにリコは、中高が僕たちと一緒だ。
カズマは三人の中で一番頭が良かった。僕よりもヨウジよりも。ヨウジは一番馬鹿だったけれど、愛嬌だけでなんとか、生きているようなヤツ。でも、柔道の実力を評価されて、名門から推薦をもらい、僕たちとは違う高校に進学した。僕とカズマは、普通に高校受験をした、普通に。
ヨウジの高校は僕たちの地元からは離れていた。だから、高校の時は、小学校や中学校の時みたいに、いつも一緒にはいれなかった。でも、お盆とか、年末とか、彼女がいない限りは三人で過ごそうかとか、話していた。
僕は文系、カズマは理系だったから、高校の二年からは違う教室だったし、違う友達も増えた。だからそこまで、高校生活を共に過ごしてきたわけじゃない。だからって、何か疎遠になったりだとか、そんなことはなかった。ただ、いつも一緒にいた頃より、カズマのことを知らなくなった。それだけのことだ。でも、高校が違うヨウジのことは、なぜか近況もよく知っていたのにな、と思った。電話ばっかりしてくるせいか。リコは、文系、三年間同じクラスだ。
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