せだい
忙しさのチラつく言葉遣いに ほとほと疲れてきたこの頃 薄く張った氷の奥に いつも明日があった 当たり前だけれど わたしはあなたの笑顔が好きで なんだかそれだけで 申し訳なくなった 自覚のないエゴイストが わたしの中で踊る 天にものぼるように 腐ったままの理由を サイドポケットに詰め込んで 後腐れのないわたしたちに なりましょう 「お気をつけて」を そのとおり解釈できるような わたしたちに
不安がしがらむとき この世界の小さなひとつを想像する 心は明日の準備のための 今日のことでいっぱい 「誰か」に助けをもとめる 誰か、とは誰になるのか わたしが決めてしまっている わたしは浅ましいから 「助けてほしい」といえない 助かる理由が あなたにないことを知っている 言葉で怒らせて 言葉で慰めて わたしはそれから笑っても きっと助からない
極寒な帰り道にとらわれて 死んだ人のようにトボトボ 新しい生活も慣れたから こんな風に思うのでしょうか 布団の中で塊になって 夕方過ぎまで夢の中で わたしは疲れていると 言い訳をダラダラしてる このまま人生が終わったら わたしは寂しくなること きっとわかっている筈なのに その時間を大切にはしない となりには美しい人、いやかわいい人 いたような気がした ふたりで一緒になることが まるで目的みたいに こっち向いて笑わないでよね グッドエンドをもとめて 極寒の帰り道を歩く
人間なんて矛盾する生き物だから そう開き直ればこの不機嫌も理解できるのかな 心のどこかにある不安が いつもあなたの陰だって わたしはわかっていた わたしは午前11時半に起きる 寝ぼけたあなたを横目に あなたはわたしを知らない人の名前で呼ぶ がたがたと階段を転げ落ちるように わたしの気持ちは水面に触れる ご飯を食べるより どこかへ遊びに行くより 夢を叶えるより わたしは好きな人に会いたい でもだからって それ以外が必要ないなんて 子供じみたことは言わないわ もう陽が落ちる
小学生に感じた転校の気持ちは 大人になってみればただの転勤であり さみしいといえばそうなのかもしれないが 忙しさにさみしさは殺されていった 愛を深めることは 浮気をされたあと性行為をすること? 例えばといえばそうなのかもしれないけれど ただ、性行為をすると 日常でその相手に触れることは抵抗がなくなる いいことかわるいことかはわからない 大切に思うことは守ることとイコールなのだろうか 守るという行為がただのエゴになっている人間関係をよく見る なんだか家族的で怖い 「誰にな
「お仕事お疲れ様」 あなたは私に毎日欠かさずこの言葉をかけてくれる。幸せなことだと思う。 だけれど私はたまに「ありがとう」と返すことが嫌になる時がある。 嫌になる、とまで明確な気持ちかは分からないけれど、 これといった深い思い入れみたいなものもなく、「ありがとう」と返す気がなくなる。 私はこんな時、いわゆる「やり取り」に疲れている。 いつも慰労の言葉をくれることを幸せと思え、なんて、 もし世界中の誰かに批判をされてしまっても、 好きな人との時間は素直になった方がいい、なん
「私、自分に自信がないから彼氏に嫉妬しちゃうんだよね」と僕に相談を持ち掛けた友人がいた。どうやらパートナーの取り巻く人間関係に納得がいっていないらしい。 嫉妬心が自分の心に生まれてしまう人には規則性があると僕は思う。 みんな「どうして私がいるのに」と心のどこかで唱えている。承認欲求ともいうけれど、自分が誰かにとって特別な存在だと自負できる環境の心地よさを知ってしまった人は、嫉妬するとその心地よさを離すまいと必死になっている。 ただ、その狼狽にはひとつおおきな矛盾
忘れられることのできない夜 忘れられることのできない朝になった こんなとき 君の言葉の冴えなさが かえって琴線に沁みる「わたしのわがままのせいで」 このセリフは いつしか聞いたことがある 心の優しくない人間は 最期の別れ際の修羅でさえも その場の正解の言葉を探す たとえどんなに嘘であっても 恋人を終わらせたい理由がどんなにグロテスクなものであっても そのありのままは決して伝えない 別れ際の振舞いは己防衛だと自覚しているからだ 相手の惨めはナニモノにも変え難く 醜くて見ていら
「本のページを忙しくめくるみたいに 新幹線の窓から流れていく景色を見ることが好きだった」 みたいな喩えが嫌いだった 「形があるプレゼントは捨てれば忘れられるけれど ふたりの思い出は形がなくて捨てられなかった」 みたいな引合いが嫌いだった 「言葉を並べただけで意味が無い方が かえって美しいはずだ」 みたいな悟りが嫌いだった 「好きなものにすきというような 素直な表現はむずかしい」 みたいな穿ち過ぎが嫌いだった 新幹線から見える景色 言葉は要らず、美しいと思う 盂蘭盆会、
向かい合って わらい合って 見つめ合って わたしたち正座ごっこ 勝ち負けが 生まれるような関係は 品性の無いモノと 思っていたけれど わたしとあなたの土俵際 ピリピリと音がした わたしの恋に 「つまらない」という気持ちを 植え付けたあなたは それはそれは重い罪なんだと 自覚するべきだわ わたしたちの正座ごっこは そろそろ足がしびれて来る頃 立ち上がってもがまんしても きっとわたしの負け
何だかんだで 吐き叫ぶほど不幸じゃない 心の中の徳川家に 上手く飼い慣らされている 生身のあたしを愛して欲しい お手手を握りあって 言ってしえば、やってしまえば 大したことでは無いんだけれどね 売れないバンドを慰めるような 「新曲はでないの?」の言葉 曲とよべるような代物は まだひとつも出来上がってないの いつだってシフト制のわたしは 月曜日の意味を忘れている 女子高生のキラキラの頃に 戻れちゃったら思い出せそう
楽しみにしていた映画 わたしのために待ってくれた それなのにわたしとあなたは 一生一緒にいられない関係 僕はお酒が飲めて あの子は飲めない 居酒屋へいってもつまんないんだろうな それくらいに吐き捨てた わたしは恥ずかしいけれど あなたの前で口を開けた 何かを食べる行為って 突然恥ずかしくなるわよね 僕らがどんな関係だって 語り合うことはやめよう きっとアイスのように 溶けていきそうだから
あの子があの子たる理由 あの子の笑顔は決して わたしのものとは違う あの子の困った顔は 漏れなくあなたを虜にさせてる あの子みたいな言葉遣いが わたしの口から垂れ落ちても わたしがわたしたる理由で あなたには響かない 「特別」という言葉が この世界にはある この狭い世界で あの子はあなたの特別である わたしはどんな気持ちを あなたにぶつけてやろうかと 顔も言葉も憎しみを込めて そのまま愛をかたる わたしみたいなひとは あの子みたいに
いつでもどこでも 助けてくれる男の子よりは どうしようもないまま わたしをつなぎ止めてくれる方がいい わたしはわたしを大切に わたしと対をなすわたし わたしはなんとなくわたしと 一生付き合っていけるはず 初めて会った時は まるでどこかの天使のようで 向かい合わせの珈琲を飲むだけで すぐに空へと飛んでいけそうだった 鏡にうつるわたしの平日 このまま生きていけたらいいな 泣いてるあの子もきっといつか ほしい言葉が見つかるはず
きっと君は 僕が助けてくれると思ってたんだろう きっと捨てられないと思ってたんだろう まだまだ君を知らないから 間違いだと言われるけれど 失敗して成長をするって 人間は一体いつまでやっているの? 両腕で抱きかかえて なんて愛しい言葉も今ではセンシティブ 気付かなければいけないわけではなくて 気付いた誰かが傷つけばいいだけ 空いっぱいの水面を見上げて 割り切れない気持ちに終止符を打つ 投げやりな気配を その眼にたっぷり含ませて
「夏」にまつわる全てのことに 飽き飽きしてきた 排水溝に転がした氷 こんなにも暑いのになかなか溶けない 生活に何も起こらなくて わたしたちどうなっちゃうかな? わたしっていらなくなっちゃうかな? 弱々しく伸ばした手が いつかの彗星のよう 小っ恥ずかしい言葉遣いは もうあなたにはしたくない 強がって不機嫌にさせた方が あなたの感情が見えていい くたくたの「ワイシャツ」に 色気を感じていたわたし 彗星のような 真昼の氷をグラスに落とす