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忘備録(107)『アリラン物語』第2話
「忘備録(106)『アリラン物語』第1話」 からのつづきです。
◆この記事の内容:
東大阪市にある「韓国アカスリ店」を手伝うことになり、店内の掃除、広告動画の撮影などをしたことを書いています。
(注意)内容は18歳以上向けです。
元はスナックのアカスリ店
「今日、店、来るの?」ママからラインで連絡が来た。
「夜9時に行くよ。」
少し遅れて午後9時半にアカスリ店「アリラン」に着いた。ガラスのドアを開けて、大き目の階段を上がった。
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階段を上がる途中でセンサーが反応して「ピンポーン」と鳴って、内部カメラで誰が入ってきたか分かるようになっている。
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ママがすぐ出てきた。「いらっしゃい。待ってたよ。ご飯、食べた?」
「まだやけど。。この前、来た時より店の中、綺麗になってる。」
「そうや。わたし、ずっと掃除や。この店、汚なすぎる。物が多い。じぇ~んぶ(全部)ほかすんや。」(ほかす=捨てる)
「ほかす時、気をつけや。なんでも勝ってにほったらアカンで。東大阪市の決まりがあるはずや。」
「知ってるわ。この前、8000円払ったわ。」
「8000円?!なんか高いな。どんなもの出したんや?まぁ、あとで調べるよ。」
(コンビニで売っている400円シールを20枚使ったのか?)
「ちょっと、こっち来て。この部屋、なんとかしたいの。」
ママは店の奥のお客さんの待合室を僕に見せた。大きな赤いソファーが置いてあり、壁はすべて鏡張り。
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「鏡張りの部屋やな。元々、この店、何やったん?」
「前はスナックや。その前はたぶん。。。ヤ〇〇の事務所や。」
「そうやろな。それはすぐわかったわ。ビルの2階に隠し出口あって、、、、そっち系の事務所や。」
「あんた、この部屋だけ使ってよ。あんたの仕事、ここでしたらいいやん。月3万円でいいよ。」
「俺の仕事、知ってるやろ、24時間パソコン使う仕事やで。こんな鏡ばっかりの部屋で仕事したら気が変になるよ。」
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「鏡なんて、上から壁紙貼ったらいいやんか。コーナンで売ってる。それより、このアカスリ店、一緒にやってよ。あんたとやったら、大丈夫や。前にも言うたやろ。」
ママは以前から僕に好意を持っているので、すべて面倒なことになる。日本橋の韓国式アカスリ店のママ、Kちゃんと仲悪くなって決裂したのも、ママのせいだ。でも、一方でKちゃんを僕に紹介してくれたのもママだから、僕もママには偉そうには言えない。
この話については、「【私の仕事】 忘備録(64)チャイエス「S」店の調査開始」~「【私の仕事】 忘備録(90)慣れるのも早いが飽きるのも早い」をご参照ください。
ママの旦那さん?
「ママ、もしかして、この店のお金、まだ全部払ってへんのとちゃう?」
「そうや。まだ、あと50万払う。」
「ふ~ん。50万か。そんなに高いお金でもないな。いつ払う?」
「12月や」
「大丈夫?払えるんか?」
「わたしの旦那、払ってくれるって言ったもん。」
「ええ旦那さんやなぁ。旦那って、あの背の高いHさんやろ?」
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「違うわ。あの人とはもう会ってないもん。50万払ってくれるんは、わたしの本当の旦那や。」
「ふ~ん、ほんまもんの方か。」
「わたし、あんたが考えるような人と違うで、真面目なんやから。」
「ふ~ん。。」
決して真面目ではない。ママには常に男の影がある。
そもそもママは美人だ。本当の歳より10歳くらい若く見える。
中国人の女の子
「今日は、広告動画の撮影したいんやけど、まず店内、綺麗にせなアカンな。アカスリルームと個室のマッサージする部屋、見せて。」
アカスリルームは、さすがアカスリ専門店だけあって、広く、設備も完璧。綺麗に掃除されている。この状態なら、撮影できる。OKだ。
個室マッサージルームは3つある。2つの内部は綺麗に掃除されていた。
「綺麗になってるやん。問題ない。すぐ撮影できる。もう1つの部屋は。。」
その部屋から、女の子が出てきた。違う、申訳ないけど、女の子ではない。けっこう年いってるなぁ。でも、笑顔で頭を下げたり、礼儀正しい。
「中国人、雇ったん? 韓国人の女の子、いなかったんか?」僕はママの耳元で、囁いた。
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「あんた、今、知ってるやろ、コロナやで。女の子、探すのしんどいねんで。どの店も女の子、いないから、店つぶれてる。」
「そうやな。今、日本に入るのは厳しいからな。ところで、あの中国人の女の子、日本語大丈夫?」
「アカン、全然ダメや。あの子一人やったら、店の留守番もさせられへん。だから、あんたにこの店の店長やってほしいねん。」
「アホな。。もし、俺が店長やったら、ママは何すんねん?どうせ、パチンコするんやろ?」
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「なんで分かる?」
「分かるよ。ママとは長い付き合いやで。顔に書いてある。」
「先月まで、ずっとパチンコ、負けばっかりや。全然ダメ。毎月40万くらい使ってしもたわ。」
「店やってるほうがいいよ。その間はパチンコ、できへんから。」
「そうや。そう思って、この店買ったんや。」
スーパーで牛乳を買うようなノリだ。実際、このママは金回りがいいのか、そうでないのかよく分からない。
お店の改修工事
「まず、店を綺麗にしようか。それからや、撮影は。」
二人で店の掃除を始めた。といっても掃除ではない。ライトを付け替えたり、不要な設備を外したり、カーペットを剥がしたり、改修工事と同じ。なぜか、いろんな専用工具が置いてあった。
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「なんで、こんなに工具あるん?」
「前の店の人、スナックからアカスリ店にするときに使ったんやと思う。」
「前の人、中国人か?韓国人か?日本人と違うやろ。」
「なんで?」
「この壁紙の貼り方とか、電気の配線処理のところ、みたら分かるわ。めっちゃ、適当やで。こんなん、漏電するで。」
「わたし、本当はな。。。この壁もぶち抜いて、全部捨てたいねん、店のものじぇ~ぶ(全部)。200万くらいいるんやけどな。」
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「せやな。捨てたほうが早いな。壁と設備とか、ここまで古かったら、どうしようもない。」
「それにしも、あんた、綺麗好きやな。あたしと合うのと違う?
違う?一緒のお店やれるよ。あとで、あたしとあんたの相性、占いで調べてみるわ。スマホに占いのアプリあるんやで。」
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「調べんでええよ。」
ヤバイなぁ。あんまり、深入りするのはやめとこう。このママには前に一度やられてるからなぁ。とにかく、撮影だけはやりたいと思っていたけど、今日は無理そうだな。まず、店内を綺麗にしないと。。
それに、ママはコロナ対策として、清浄機や消毒液、お客さんへ配布用マスクなど、ちゃんと用意してるんだから、自分としてはそのへんも、お店を綺麗にした後で広告動画に載せたい。
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ママの特製冷麺
それにしても、ママはよく動く。じっとしていない。一人で冷蔵庫を移動させたり、カーペットを剥がしたりしている。気がついたら夜の12時を過ぎていた。
「あんた、お腹減ったやろ?冷麺食べるか?」
「冷麺、作れるん?」
「当たり前や。美味しいんやで。ちょっとそこの部屋で待ってて。」
と言うとママは、店のキッチンに入っていった。以前、この店はスナックだったので、食べ物を作る場所が元々あったようだ。
10分もしないうちに、ママが冷麺をお盆の上に載せて持って部屋まで持って来てくれた。
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「すごい!美味しそう。リンゴ入ってる。野菜みたいのは何?」
「キャベツや。」
11月末の夜中、隙間風がすごく入ってくるお店、普通なら寒いけど、ずっと掃除を手伝って体を動かしているので汗をかいた。冷たいシンプルな冷麺は美味しかった。
リリーちゃん
「それにしても、あの中国人の女の子、全然何もせーへんな。ママがこんなに体動かしてんのに。。」
「あぁ、あの子はいつもそうや。でもな、あの子、あんまりしゃべらへんしおとなしいやろ。うるさくないから、あたしは好きや。」
「冷麺食べたら、後でアカスリの撮影をしようか?あの女の子、モデルにしようよ。」
僕がそう言うと、ママは、部屋にいる中国人の女性に、「リリー!」って叫んだ。
へぇ、、店での名前は「リリー」か。。
部屋から出てこない。ママから部屋に向かって行って、中国語でその女性と何かケンカのような口調で話している。
ママが戻ってきて、「モデルはようせんて。写されるが嫌なんやろ。YouTubeにアップするんやろ?」
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「あのね、顔は撮らへんよ。アカスリやねんから、背中だけや。それに撮影っていうても10分で終わるで。」
「あんた、モデルしてよ」
「じゃ、誰が撮るねん?ママの旦那、呼べる?モデルなってくれるやろ?」
「アホな。無理や。まだ、この店のこと旦那にちゃんと言うてへんねん。」
「ええ?ヤバイな。でも50万は出してくれるんかいな。いい旦那さんやな~大事にしいや。」
僕も面倒になってきて少し嫌味を込めて言ってしまった。
ママは再び、リリーと中国語で交渉しているようだ。5分くらいしてママはリリーと一緒に戻ってきた。
「あんた、この子に撮り方、教えてや」
「へぇ?大丈夫?」
もうなんか、どうでもよくなってきた。
「今日は試し撮りや。とにかく撮ってみよう。使える部分あったら使うよ。」
僕は、リリーに撮り方を教えた。撮影機材は防水機能付きの小型カメラ。操作は簡単。
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「あんた、服じぇ~ぶ脱いで、アカスリの部屋で待ってて。あたし、着替えてくるから。」
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僕はまな板の鯉のように、アカスリのベッドにうつ伏せになった。
ママが派手な水着のような、、、なんとも表現し難いコスチュームで入ってきた。
さあ、アカスリの撮影開始だ。
つづく。。。
*このnoteで書いてある記事はすべて実話です。「忘備録」として自分のために書いています。
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