そごう・西武百貨店の売却


そごう 西武百貨店が8500万円で売られた

センセーショナルな記事だ。池袋の東口にある大きなデパート。これが8500万円で売られたのだ。今では一軒家だって8500万円以上する。それなのに、巨大駅ターミナルの駅前のデパートで8500万円だ。多くの人が目を引く記事になったに違いない。

実際にはそごう・西武百貨店のすべてが8500万円で売られたのだ

そごう・西武百貨店は日本全国で10店舗ある。名前は、そごうだったり西武だったりするが同じ百貨店になっている。この全ての売却で8500万円だったのだ。
記事によると、そごう・西武の企業価値は2200万円。ただし、有利子負債は3000億円。今回の売却でセブン&アイ・ホールディングスは一部の負債(916億円)を放棄したそうだ。その結果、8500万円での売却となった。
企業の売買の場合には、かなりざっくりした価値を資産する傾向にある。負債については、ローンの金額も金利もしっかりと記述している契約書を結ぶが企業価値は将来の予測と現在のそれほど流動性がない資産の価値を元に計算をするため、相当にざっくりだ。
資産 - 負債 = 買収価格 とすれば、2200 - ( 3000 - 916) = 116億円となるが、100億円単位は誤差の範囲だろう。

経営陣は退任。フォートレスから関係者が新規に就任予定

現在の社長である田口広人社長は代表権のない取締役となり、新たな代表取締役にはフォートレスから関係者が就任する予定だそうだ。田口元社長は、西武百貨店の入社したので、プロパーの社員からの登用だったが、平の取締役に降格となった。
今後は、フォートレスを中心とした再編が進んでいくのだろう。

キーカンパニーはヨドバシHD

今回の騒動については、ヨドバシHDとフォートレスとの連携が重要だ。ヨドバシHDは、西武池袋本店の土地について3000億円で取得する報道がなされている。

これを見ると、フォートレスは資産2200億円で負債が2200億円の企業を購入して、その一部を3000億で売却したことになる。これで、負債の返済は可能だし、池袋以外の資産についても、徐々に売却していけば濡れ手に粟状態になる。本当に美味しい状態だ。
だからこそ、フォートレスは積極的にそごう・西武百貨店の買収をすることができたのだろう。

疑問は、なぜヨドバシが単体で交渉しなかったのか?、とセブン&アイ・ホールディングスはこんな条件で売却したのかだ

ヨドバシが単体で交渉しなかったのは、日本人特有の交渉ベタがあるのかもしれない。また、セブン&アイ・ホールディングスにとっては、ヨドバシに売るよりもフォートレスに売ったほうがイメージ戦略としてはいいからかもしれない。社員も納得が行く。ひろゆきも同じことを言っていた。

個人的には、セブン&アイ・ホールディングスが自分でやれば、残ったお金で従業員に厚い手当を提供できたのではと思うが、お金だけではなく、西武百貨店で働く誇りとか、従業員たちの居場所とかを剥奪させる勇気がなくて、フォートレスに売った気がした。その代償が1000億円になる。お金だけではない、日本人のプライドを大切にするために、このような結果になった気がしている。

また、セブン&アイ・ホールディングスだが、他の米国のアクティビストからコンビニ経営への集中を迫られている。そのため、西武百貨店に対する運営をきちんとしていかなくては行けなかったが、うまく行かなかったため、売却先を探していたと推測している。
ダイヤモンドでは、西武百貨店のパートナー選定に不動産ファンドを選ぶミスをしたために、強行して売却をしたとと報道している。

また、米国のアクティビストは、イトーヨーカドーに対しても厳しい指摘をしており、早々の売却を迫られている。そのため、同じことがイトーヨーカドーでも起きる可能性は高い。

経済はいつも動いており、覇王はいつまでも覇王ではいられない

西武百貨店は、堤義明さんのシンボル的な百貨店だった。西武グループを大きくした堤さんは、バブルのときに世界一の大金持ちになった。その象徴が西武百貨店だった。
私自身は、池袋はよく使うが、西武百貨店はほとんど使ったことがなかった。使っても、レストランかLOFTぐらいだろうか。品はいいとは思うが、高くて手が出なかったのだ。西武百貨店はキラキラとした存在として、あこがれを持って店員さんや置かれた商品を見ていた。

しかし、今となっては時代遅れになっているのかもしれない。家電量販店のヨドバシHDが西武百貨店を購入する様は、堤義明さんの父親である堤康次郎を思い起こさせる。堤康次郎も、戦後の混乱期に元皇族や華族から土地を購入し事業を大きくしていった。それが西武グループの繁栄につながるのだが、今となっては西武百貨店が元皇族や華族に見える。

覇王は常に覇王ではいられない。時代は流れており、常に覇王は入れ替わるのだ。



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