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エイトボールとスタートアップのための会計基準 - Diligence at Social Capital : Part 6

BY JONATHAN HSU  翻訳 玉井和佐・岡村ゆり子

この数か月間、Diligence at Social Capitalの連載を通じて、Social Capitalが実践する定量的なスタートアップの企業精査方法について述べてきた。以前の記事ではグロースアカウンティングコホートとLTVに対するアプローチ、与えられたプロダクトのエンゲージメントの深さを私たちがどう捉えるかを含むいくつかのトピックをカバーした。私達はこれらのフレームワークを企業精査の一部として利用しているが、同時にこれらをスタートアップのオペレーションの一部としてどのように活用できるかについても解説している。

今回のポストでは、以下2点をカバーする。

1. 私たちがなぜこのシリーズのポストを書きたいと思ったのか
2. これまで紹介してきたアプローチを実際にあなたのプロダクトに用いるための分析ツールの紹介

The 8-Ball - エイトボール

このプロジェクトは、私達が2014年後半に、従来の企業精査方法ではスタートアップのコアのプロダクトマーケットフィットの兆しを見つけることができないということに気付いたのが始まりであった。 Facebookではデータサイエンティストのチームを率い数々の指標のコレクションを作り実用的なデータインフラを発展させてきた。これまでに培ってきた経験をスタートアップの評価基準の構築に活かせないだろうかと考えプロジェクトを立ち上げた。

幾度かのアドホック分析を行い、Facebookで用いたSNS以外の指標を加え大幅にスコープを拡大した後、この分析パッケージ全体を「マジック・エイトボール」または短く「エイトボール」と呼ぶことにした。エイトボールは、以下のポストで説明された3つのポイントから構成されている:

1.グロース・アカウンティング
2.コホート・行動分析
3.プロダクトマーケットのディストリビューション

数多くの創業者と共にデータを掘り下げ、エイトボール分析で得られた発見を共有していく中で、これらの分析が多くのスタートアップにとって価値のあるものであることが明らかになっていった。

しかしコホートLTV分析で用いる私たちのヒートマップグラフとLTVトレンドビューはほとんどの起業家にとって見たことのないものであり、その結果私たちは自分達自身でそれぞれのスタートアップのチャートを用意し、一人一人にその意味を説明をしなければならなかった。

そこで私たちはウォータールー・コープ・プログラムからピーター・ゼンをインターンとして採用し、分析をサポートするエイトボールツールのバージョンゼロの作成を依頼した。こちらをチェックして、是非ともトライして欲しい。もしあなたがスタートアップの創業者で、私たちにピッチをしたいと考えているならば、是非このツールを利用して欲しい。

現在のバージョンでは、このツールはコホートLTVのアスペクトのみが使用可能だが将来的には、このシリーズで説明された他のスタンダード分析にも使えるより多くの機能を付け加えていく予定だ。

スタートアップのためのGAAP

企業精査においての有用性に加え、エイトボールはスタートアップ・エコシステム全体においての大きなニーズを示している。それはすなわち、指標とレポーティングにおいての基準の欠如である。これをさらに詳しく説明するために、まず財務指標の話をさせて欲しい。

財務会計・報告の世界では、会社が財務的に健康かどうかを的確に把握するために用いる会計基準が存在する。これらはGAAP(Generally Accepted Accounting Principles/米国会計原則)として知られており、統一された基準を用いて企業を比較したいという投資家の希望からできたものである。

しかし従来の財務諸表には存在しないがエコシステム・ダイナミクスを通して、世の中で一般的に使われるようになった指標もある。例えば、MAU(月間アクティブユーザー / monthly active users)の概念は、Facebookの成長により有名になった。Facebook以前は、ページ閲覧者数か累積登録者数でその数を測るのが一般であった。その後Facebookがプラットフォームをローンチした際に、MAUとDAUの概念が有名になった。そしてそれが企業と投資家のエコシステム全体の標準言語として用いられるようになった。

同じように、MRR (月次の経常収益 / monthly recurring revenue)もテクノロジーへの投資の世界においては比較的新しいコンセプトである。(21世紀初頭に )セールスフォースのようなクラウドを使用したSaaSがたくさんでてきたことにより、MRRはSaaSビジネスのサブスクリプション収益を議論する際のスタンダードとなった。

会社が設立されたばかりの頃は、投資家はプロダクトマーケットフィットの証拠を求めており、GAAPに集約されるの財務指標はあまりそれに関係しない。このように、アーリーステージの企業のプロダクトマーケットフィットの度合いを比較するスタンダードは現在のところ存在していない。

このシリーズで説明してきたエイトボール分析は、アーリーステージの企業のプロダクトマーケットフィットを把握するためのGAAPのようなスタンダード形成の足がかりとなるということを私たちはここに提案したい。

もちろん、GAAPの実際の生い立ちは、上記で述べたものよりもはるかに複雑である(特に規制機関に関してーGAAPの簡単な歴史についてはこのペーパーを参考にして欲しい)。しかし、初期段階のスタートアップの株式市場の成長は目まぐるしく、(特に最近のTitle III of the JOBS Actの制定にも伴い)、アーリーステージのプロダクトマーケットフィットを精査するのにより多くの時間が要されることになるだろう。

このトピックに関しての私たちの見解をシェアすることによって、さらに議論を深めることのきっかけとなることを期待しつつ、 あなたの会社、プロダクト、投資またはポートフォリオを少しでも異なる視点から捉えるための補助線となることを願っている。

Appendix: One Big Query

エイトボールの分析ツールを使うためには、集合データとしてあなたのデータベースから書き出したCSVのインプットが必要になる。多くの企業はこのデータを何らかのデータベースに保存しており、これを得るには一定のクエリーを用いなければならない。私たちが仕事をしている大半の会社では、関連するデータはトランザクショナル・データベースかSQLインターフェイスのあるアナリティックス・データ・ウェアハウス(大体はアマゾン・レッドシフト)に保存されている。グロース・アカウンティングに必要なデータピースをつなぎ合わせたり、完全なコホート・ビューを集計することはトリッキーでもあるため、ここにグロース・アカウンティングとコホートLTVデータの両方を含むSQLクエリーを以下で提供する。


https://gist.github.com/hsurreal/4062f2639d4bb6fab6fb

このソースはPostgresで書かれているので、一連のWITH Clausesに手間がかかる。これはアマゾン・レッドシフトでも稼働する。もしあなたのSQLバージョンがWITH Calusesをサポートしていないのであれば(例:MySQL)、それぞれをテンプレート・テーブルとして分けることをおすすめする。参考までにこちらの参考例はModeによって提供されたチュートリアル・データセットを使用している。彼らの提供するチュートリアル・データセットの、ModeのインタラクティブSQLエディターで直接このクエリーを実行することができる。

このクエリーをあなた自身のデータに反映させるには、WITH節の最初のテンプレート・テーブルを修正し、ファイナル・クエリーを選択することでグロースアカウンティング及びコホートLTVの出力することができる。

目次
1. ユーザーグロースのためのアカウンティング
2. 収益グロースのためのアカウンティング
3. 実用的なコホート・LTV分析 (収益)
4. 実用的なコホート&LTV分析 (エンゲージメント)
5. エンゲージメントの深さと収益の質
6. エピローグ : エイトボールとスタートアップのための会計基準

翻訳ソース記事 : 
https://medium.com/swlh/diligence-at-social-capital-epilogue-introducing-the-8-ball-and-gaap-for-startups-7ab215c378bc#.wxc2lc8dp

※尚、本記事はSocial Capital社の許可のもと翻訳記事として掲載させて頂いております。スタートアップ業界の投資家、起業家の皆様のビジネス分析の参考にしていただければ幸いです。当該和訳は、英文を翻訳したものですので、和訳はあくまでも便宜的なものとして利用し、適宜、英文の原文を参照していただくようお願い致します。

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