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カンボジアの音楽エンタメ業界 その1「どんな業界構造?」

はじめに

私は2010年代からカンボジアで生活をしている。これまで素朴な疑問だったのが、「この国にジャニーズや吉本みたいな芸能プロダクション、そしてそこから生まれるエンタメ業界」みたいなものはどうなっているんだろう?ということだ。現地語が分からないからということでもなく、カンボジア人にヒットチャートの1位はだれなの?ときいてもそもそもヒットチャートもない。そこで今回はカンボジアのエンタメ業界の構造について整理してみた。

音楽エンタメ業界の登場人物は誰?

カンボジアの現状だと下記の5つに整理できそうだ
①アーティスト本人
②マネジメントチーム(マネージャー、メイク、撮影クルー的な集まり)
③プロダクション
④アーティストを広告に使う一般企業
⑤一般消費者(ファン含む)
日本ではプロダクションが業界を創造、リードしてきた部分があるが、カンボジアは市場形成の最中にSNSで誰しもが情報発信ができる環境が出現した。これによりプロダクションのような大資本に頼らない活動の形が共存した状態だ。

プロダクションの具体例

小さな組織(アーティスト+マネジメントチーム)でも生存できる業界と言いつつプロダクションも存在している。人づてに聞いたところによると「いま知りうる」大きなプロダクションは以下の3つのようだ。※「いま知りうる」を強調したのは変化の速い国の浮き沈みの激しい業界のさらに統計情報もない不確かな情報という意味です

①HANG MEAS VIDEO (ハンミャ)
いわゆるテレビ局。参加型オーディション番組を企画、放映するなど企画から放映までを一手に手掛ける企業。さらにタレントを自社に擁している。

https://www.youtube.com/@HMHDT


②Baramey Production(バラメイ)
いまカンボジアで流行っているラップ。その代表的なアーティストであるVANNDA(バンダ)が所属するプロダクション。いわゆる音楽プロダクションで日本にも近いスタイルだといえる。

③Galaxy Navatra (ナバトラ)
こちらも多くの有名シンガーを抱えるプロダクションらしい(正直私は初耳の会社だった)。主たる事業は不動産らしい。

この3つのうち日本でよくみるいわゆるプロダクションのモデルはバルメイ。いっぽうで「これがやれたら最強じゃん」と思うのはハンミャ。
電波もそこで流す企画も、演者まで抱えており本来1強になりえるポテンシャルがあるビジネスモデルを持っている。
そしてナバトラは次回のテーマにも通づるカンボジアらしいモデル。エンタメとは距離のある不動産を基幹事業として有する企業群らしい。

タレントはどうやって稼いでる?

カンボジアでは音楽エンタメの収益はどこから生まれるのか?
日本での一般的なエンタメの収入源は以下のようなものが考えられる。
①イベントチケット:コンサートを独自で企画開催しチケット収入を得る。
②物販:いわゆるファングッズを販売して収入を得る。
③(日本的な仕組み)特典会:握手会やチェキ会など原価をかけずに収入を得る。
④広告、イベント出演料。
⑤著作権関連
以前から日本でも広告やイベントへの出演料は大きな収益源であった。だからこそ人気者になるためにテレビやラジオといったメディアに露出することが重要であった。一方でアーティストの単独ライブに赴く熱狂的ファンからのみならず「推し活」が大衆化してゆく中で①②③のような収益源もそれなりの規模となっていった。また原盤権や著作権といった権利収入も見逃せない。これらの権利は国際条約を以て国境を越えて相互に保護しあっています。このことで生まれる使用料収入は日本だけでも1000億円を超える規模となっている。どの収益もそれぞれについて触れることはここでは割愛する。
これらの収益源のなかでもカンボジアの音楽エンタメ業界はとにかく④広告・イベント出演料を得ることで成り立っているように見える。
つまりエンタメ業界の登場人物のうち、一般消費者からは収益を得ず、企業案件で稼いでいる。企業案件のうち「広告」は日本でもよくある形だ。広告から収益を得る、あるいはその先に広告にするためにアーティストを抱えるという姿についても次回触れる。またカンボジア音楽エンタメ業界で特徴的なのは下記のようなイベントの仕組みだ。

カンボジアの参加無料の音楽イベントたち

カンボジアでは大型の野外イベントが時々開催されている。
その多くは携帯通信会社やビールの会社が主催している。彼らのサービス利用者は無料参加、または全くの無料参加だったりする。
リンクを見ていただくとわかるが、かなり大規模だ。そしてここにカンボジアで1番のアーティストたちが参加している。

ここまでのイベントではなくとも、毎晩クラブではテレビに出ているようなアーティストがパフォーマンスをしている。クラブに入ることにお金はかからない。つまり飲み物代を払っているだけで消費者は無料でそれらのパフォーマンスを楽しんでいるのだ。こんなものがタダで見れる消費者は幸せだな、、と思いつつもファンはお金を推しに直接払っていない。



次回、カンボジアの音楽エンタメ業界 その2
   「エンタメは基本タダのカンボジア」に続きます。


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