ちょっぴり怖い話(小学校の絵)
これは小学校で経験した話です。
ぼくは都内にある小学校に通っていました。
当時は少子化が進み、生徒数が減ることで、使われない教室もいくつかあったと記憶しています。
ぼくの学年は、3クラスしかありませんでした。
その学校で、不思議な話を聞いたことがありました。
校舎の東側にある階段の、2階と3階の間の踊り場に少女の絵があり、普段はすました表情なのに、夜になると笑顔になるというものでした。
その話を聞いた直後は、その踊り場を通るたびにその絵が気になり、意識して見るようになっていました。
しかし何も変化が見られなかったため、しばらくするとその絵のことを意識しなくなっていました。
きっと作り話なのだろうと思いました。
5年生の夏休み前日。
終業式が終わって帰宅しました。
家族で夕飯をすませ、どんな宿題が出たのかと母親からきかれたため、ランドセルから教科書などを出して説明しました。
その際に、確か算数の教科書が入っていなかったのです。
学校の机の中に置いてきてしまったのだとすぐに気づきました。
教科書がないと宿題ができません。
時刻は18時頃。まだ外は明るかったので、教科書を取りに小学校に1人で向かいました。
正門の柵には鍵が掛かっていませんでした。
少しずらして中に入ります。
玄関にも鍵がかかっていなかったため、校舎内に入ることができました。
5年生のときの教室は3階にありました。
誰かに見つからないように、足音を立てないように階段を上がります。
3階に到着しました。
階段側から2つ目の教室に、ぼくの席があります。
扉の窓ガラスからそうっと教室内を覗きました。
すると、教室の中央あたりの席に、女の子が座っている姿が見えました。
赤いカーデガンを着ているようです。
窓からの日差しで、顔はよく見えません。
こんな時刻に女の子が教室にいるなんておかしいな。
そう思いながら再度教室を覗くと、女の子の姿は見えなくなっていました。
扉を開き、教室の中に入ったのですが、やはり誰もいません。
見間違いだったのかなと思いながら、自分の机の中から教科書を取り出しました。
そして顔を上げた瞬間、飛び上がるくらい驚きました。
さっき見た赤いカーディガンの女の子が目の前に立っていたのです。
うわぁ〜
ぼくは叫びながら、走って教室から飛び出しました。
そして階段に向かい、駆け下ります。
踊り場で、教科書を落としてしまいました。
拾い上げて顔を上げると、目の前の絵に、女の子の姿がないことに気づきました。
いつも見ている踊り場の絵。
描かれているのは赤い服の女の子の絵でした。
絵の中から、その女の子の姿が消えていたのです。
振り向くこともできずに、走って正門を抜けて家まで戻りました。
夏休みが終わり、始業式の日に踊り場の絵を確認したのですが、女の子は普通に絵の中にいました。
夏休み前の始業式の夜依頼、小学校を卒業するまで、いっさい不思議なことは起こりませんでした。