ちょっぴり怖い話(ビルの清掃)
これは、高校の同級生から聞いた話です。
彼は、ビルの清掃のアルバイトをしていました。
主にオフィスビルの清掃を請け負う会社で働いていました。
週末の金曜日や土曜日、社員がすべて退社したオフィスに入り、床のカーペットを清掃するのです。
深夜0時頃にスタートし、朝の5時頃までに終了するのだそうです。
ある夜、古びたオフィスビルの清掃のシフトに入りました。
そのビルに入った瞬間に、なにか嫌な雰囲気を感じたそうです。
しかし仕事なので、時間内で清掃を終わらせる必要があります。
数名の社員と担当フロアを決め、それぞれ清掃作業に入りました。
節電のため、清掃範囲以外の場所の照明は消した状態で作業を実施します。
クリーニングの機械で床の清掃をしていると、どこからか男性の声が聞こえてきました。
「おーい。ここ、ここ」
スーツ姿の男性が、足元の床を指さしています。
社員の方たちは全員退社しているはずなのに、いったい誰なのだろう?
不思議に感じながらも、友人は応えました。
「順番にやりますので」
すると男性は、どこかに行ってしまったようです。
姿が見えなくなりました。
清掃作業をして、先程の男性が指さしていた当たりに来ました。
床には、黄色っぽい液体が大きく円を作っていました。
何だろう?
確認してみると、尿のようでした。
こんな場所に排尿する人がいるのか?
昼間はみんなが仕事をしていたはずなのに。
念のために報告しておこうと、今回の作業の責任者のところに向かいました。
「尿なんてありえないだろう」
責任者とともに戻ってきましたが、尿だと思われる液体は消えてなくなっていました。
寝ぼけてたんじゃないのか、と笑われてしまいました。
その後、何事もなく清掃作業は終了し、無事に撤収できました。
後日、当日のシフトに入っていなかった社員から声をかけられました。
「変なものを見たんだって?」
尿のようなものを見たが、責任者の社員に報告している間に消えてしまったことを話しました。
「スーツの男が指さしたんだろう?その男、宙に浮いてなかったか?」
そう言われてみると、普通の人よりも上の方から声をかけられた気がします。
浮いていたと言われたらそうなのかもしれないと思いました。
その社員さんから聞いた話では、そのオフィスで自殺した男性がいたそうです。
ちょうど声をかけられた場所で、キャビネットにロープをかけていたそうです。
自分のせいで汚してしまった床を、きれいにしてほしかったのかもしれません。