ちょっぴり怖い話(おばあさんのお金)

ぼくは社会人になって数年経つまで、実家で暮らしていました。

実家は都内の一軒家でした。
子供の頃は祖父母も一緒に暮らす、大家族でした。

社会人になった頃に、祖父と母が亡くなり、祖母と父、そして妹と暮らしていました。

ある日の夕方、仕事を終えて帰宅すると、妹からこう聞かされました。
「裏に住むおばあさんが、祖母のことで話をしたいので来てほしいって」

父はいつも、仕事から帰宅するのが22時頃です。
ぼくが裏のおばあさんの家に行くしかないなと思いました。

家の前まで行き、「こんばんは」と声を掛けました。
すると、玄関に人が出てくる気配がして、引き戸が開きました。

おばあさんがいて、招き入れられました。

畳の部屋のコタツに入るように言われ、座りました。

おばあさんの話では、ウチの祖母が、おばあさんの家の植木にいたずらしているので、注意してほしいという内容でした。
ウチの祖母は認知症が進んでいたため、今ではほとんど家の外に出ることはありませんでした。
このおばあさんも何か勘違いしているのだろうとは思いましたが、事を荒立てたくなかったため、「はいはい」と返事をして、帰ることにしました。

おばあさんは玄関まで見送りに来てくれて、ぼくに何かを渡してきました。
それは、一万円札でした。ちゃんと来てくれたのでお駄賃だと言うのです。
もらえませんと断ろうとしたのですが、最終的には押し切られて受け取ってしまいました。

帰宅して妹に、植木をいたずらしてると言われたけど、そんなことないよねと話しました。

その夜、眠っていると、家の外でざわざわと人の気配がしていました。
そこにはパトカーが停まっていて、制服姿の警察官が数名いました。
その中に、町内会の男性がいたので、何があったのかときいてみました。

何でも、裏に住むおばあさんが、一週間以上も姿を見せていないため、様子を見に来たそうです。
扉には鍵がかかっていて、声を掛けても返事がないので、警察を呼んで扉を開けてもらおうとしているところでした。

ぼくは、今日の夕方におばあさんの家に上がったことを話そうとしたのですが、町内会の男性は慌てふためいていて、話を聞いてくれませんでした。

様子を見ていると、警察官が二人で、鍵のかかった引き戸を外し、家の中へと入っていきました。
すぐに救急車が呼ばれましたが、おばあさんはすでに亡くなっていたそうです。

あとで聞いたのですが、おばあさんは発見された一週間前には亡くなっていたそうです。
ぼくが会話したおばあさんはいったい...

そして、ぼくの財布の中には一万円札が残っていました。

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