3輪のアサガオ
我が社の男子トイレには小便器が3据(すえ)並んでいる。
と、書いたが、実は便器の数え方がわからずヤホーに聞いてみたところ、「金庫や便器は一度据えたら動かさないため『据』という単位」だそうだ。へえ。
さて、用を足しにきた私はこの3据のうち、どの便器前に立つか。
選択肢は以下の2パターンのどちらかだ。
〈ケース①〉先客がいた場合
手前が塞がっている場合は奥へ、奥が塞がってたら手前に立つ。
〈ケース②〉自分一人だけの場合
真ん中に立つ。
「ケース①」については賛同いただけるだろう。先人の隣(中央)へわざわざ行く人はいないはずだ。
自分のこだわりは「ケース②」だ。
なぜ両端に行かないのか?
それは真ん中の小便器の使用頻度を高めるためだ。
据え付けるコストは同じはずなのに、中央部分の使用頻度は高くないのだ。
なぜそう言い切れるのか?
シングルの先客が中央の便器を使っていたことがほとんどないからだ。
さて、話は越後に飛ぶ。
新潟競馬場には名物「千直」レースってのがある。
オーバルコースを周回して走る通常と異なり、スタートからゴールまでの千メートルを真っ直ぐ突っ走るレースだ。
スタンドから見て左側からスタートし、右側に走っていく。
このレースで予想の肝になるのが枠順。
外枠(手前側)が有利なのだという。
そもそも馬はラチ(柵)に沿って走る性質があるらしい。
馬は柵を目指して走ろうとするが、奥のラチは周回レースのイン側となり踏み荒らされているため、フレッシュな手前側を走る方がベターだ。
だから騎手はスタート直後、手前側に手綱を向ける。
だから外枠が有利なのだと。
遠く離れた新潟から、九州のトイレに戻ろう。
さらば、ビッグスワン。
アデュー、おいしいお米と海の幸・・・。
人は馬と同じくラチ沿いを選択する生き物ではないかと思う。
歩道を往くときド真ん中を歩いている人はあまりいない。
そんなことしたら美川憲一に叱られてしまう。
エスカレーターも然りだ。人は大体どちらかに寄る。
特に小用を足す際は、無防備極まりない態勢になるわけだから、左右どちらかは壁で塞ぎ突然の襲撃から身を守っておきたい本能が湧くのも必然だ。
だから、である。
中央の便器は放っておくといつまでも利用されないまま、コスト償却が進むことなく鎮座する羽目になるのだ。
不均衡を是正せよ!
皆の者、センターへ集え!
と、いう話を同僚にしたら、彼はこう言った。
「表彰台も真ん中が優勝ですから。立つと気分もアガるでしょうね」
なるほど。良いこと言う。