【なぜ値段が10倍以上違う?】安い服と高い服の違い
テレビに出ているタレントさんのお洋服、
ふらっと入ったラグジュアリーブランドのショップに並んでいるお洋服、
服好きなお友達が来ているお洋服、
あなたはこれまで「この服、値段が普段買っている服と一桁違う」と感じられたことはありますか?
またはすでに服が好きな方は、「なんでそんなに高い服を買うの?」と言われた経験はないでしょうか?
食べ物や雑貨など以上に、服には同じようなデザインでも値段が開いているものが多くあります。
しかしその理由について、深く知っている方はあまりいらっしゃいません。
服に興味がない方は「なんであんなに高いのか訳がわからない」と遠ざかったり、逆に高い服を買っている方も「よくは知らないけど相場がこんなものだから」と知らないままにしてしまうからです。
しかし、どちらの立場の方にとっても、正しい知識をつけることは正しい選択への大事な一歩です。
今回の記事では「高い服と安い服って何が違うの?」というシンプルな疑問に、2つの視点から答えてまいります。
2つとは、「服そのものの違い」と「作り方の違い」です。
もちろん高い服にも安い服にも様々なものがありますので一概には言えませんが、ご参考にはしていただけるかと存じます。
今回は、当店でお取り扱いさせて頂いている「山内」のシャツ(超高密度バックサテンシャツ 税込¥37,400-)と、コストパフォーマンスの高さで知られる「UNIQLO」のシャツ(ファインクロスストレッチスリムフィットシャツ 税込¥3,289-)を比較してまいります。
実に10倍以上の価格差がありますが、どのような点が異なっているのでしょうか?
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服の作りの違い
一つ目の違いは生地感です。
写真では伝わりづらいところではありますが、UNIQLOのシャツに比べると山内のシャツは光沢があり奥行きのある表情。
肌触りもストレスのない滑らかな質感です。
特に山内は糸からこだわって服作りをされているため、世の中に出回る洋服の中でも特に上質な仕上がりです。
山内のシャツ生地に使われているのは非常に細い糸であるため、密度が非常に高くなります。
UNIQLOの生地もかなり密度はあり普段使いには十分ではありますが、高級感や存在感ではかなりの差がございます。
次は縫製の部分。
少々見づらいですが、襟のステッチを見比べて頂くと、違いに気づいていただけるかと思います。
UNIQLOに比べ、山内のステッチはかなり細かく美しい仕上がりです。
ステッチを細かくするには、その分時間がかかってしまうため、手間がかかる仕様です。
それによって見え方も上品で美しく、細部まで洗練された印象になります。
使われているパーツも当然異なります。
このシャツでは特にボタンの部分。
UNIQLOのボタンはポリエステル製なのに対し、山内のシャツは貝ボタンを使用しております。
貝ボタンとはその名の通り貝を削って作られたボタン。
真珠と同じ成分であることからもわかるように、貝ボタンは光を上品に反射し、まるで宝石をつけているような高貴さがあります。
ボタンの付け方も差があり、UNIQLOでは機械付けをしているのに対し山内は手付け。
裏側の美しさやボタンの取れにくさに大きく影響します。
今回のテーマとは逸れますが、他にもパンツのジップなどはクオリティーが分かれやすいパーツです。
細かな仕様にも違いがあります。
例えば袖の作り。
シャツの袖は基本的には一枚の布からできていますが、山内のシャツは袖が2枚の布からできております。
そのため、より着た人の身体にフィットし、快適な着心地を実現しております。
また、シャツを裏返してみると縫い目の裏側も異なることがわかります。
UNIQLOの方は一般的なシャツと同じ折り伏せ縫いという方法で縫われているのですが、山内は袋縫いという、ポケットなどに使われるような方法で縫われています。
それにより、サイド部分の固さが和らぎ、着た時のストレスが軽減されています。
このシャツは全体的に、裏にステッチをできるだけ出さないことを意識されており、その細やかなこだわりが着心地を極限まで高めているのです。
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服の作り方の違い
以上が、服の作りの違いになります。
もしかしたらまだ、
「違いっていってもそんなもの?じゃUNIQLOでいいか」
と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
ここからは、服の作り方に関わる一番大きな違いについて、考えていきます。
その違いとは、ブランドの根底にあるコンセプトの部分です。
適正価格の上質な商品を目指している山内に対し、コストパフォーマンスの高さで現在最高得点を叩き出しているのがUNIQLOと言えます。
コストパフォーマンスが高いことが最も重視される今の時代、特に日本で、UNIQLOが人気を得ることは必然的と言えます。
UNIQLOのすごさは、Tシャツがわかりやすい例です。
個人でTシャツの生地を買おうとするとそれだけで1000円以上はかかりますが、UNIQLOの「UNIQLO U クルーネックTシャツ」は税込1000円。
その1000円の中には当然生地代だけでなく、生地の裁断、縫製、輸送、店頭販売の人件費、EC・実店舗の運営費などが含まれているわけですから、価格の低さが伺えます。
そしてコストパフォーマンスが高いことで、どんな人でもおしゃれを楽しむことができ、家計の負担を減らすと言う価値を持っているのです。
一方で、適正価格を目指す山内のようなブランドの価値はどこにあるのでしょうか?
これは、フェアトレードやサステナブルにも関わる話ですが、消費者である私たちのための話でもあります。
服を作るには、長い時間と様々な労力がかかります。
山内の服は種々の手間が惜しみなくかけられており、時給約1000円の日本で作ると考えると理にかなった金額です。
ここであなたに考えて欲しいのは、コストパフォーマンスが本当に全てなのか、ということです。
服には、生地感、デザイン性、機能性、着た時の高揚感などさまざまな評価軸があって、コストパフォーマンスは本来その中の一つに過ぎないはず。
しかし現在は、コストパフォーマンスという一本だけの評価軸を持って服を見ている方が非常に多いのです。
加えて、コストパフォーマンスが高いということは、その分無理をしている人が作り手の中にいるということです。
それは発展途上国で服を縫っている声の小さい労働者の方かもしれませんし、素材となるコットンを育てている人かもしれません。
私たちが享受している安さは、どこかに必ず皺寄せが起こるものなのです。
「その国は賃金が日本よりも安いからでしょ?」というご意見もあるかもしれませんが、これは日本にとっても危険なことです。
実は日本の物価はどんどん下がっており、ディズニーランドの入園料も中国や香港を差し置いて世界一安い国です。
そして、UNIQLOのタグに生産国として書かれた「中国」の文字を見なくなったように、発展途上国は発展し、賃金も上がっていきます。
このまま日本の物価が下がり続ければ、「日本よりも賃金が低い国」がなくなる未来が来るのは至極現実的な話です。
安くできるからと国外に生産を頼っている現在、国内の縫製業は衰退しています。
「日本よりも賃金が低い国」が無くなり、国内で生産するしかなくなった時もう既に技術が残っていない、というシナリオは決して非現実的な話ではないのです。
また、安さを求めることが正義の社会に生きていると、あなた自身も安さを求められ、余裕のない生活を強いられることにもなります。
つまり、コストパフォーマンスを追い求めることが他人や未来に負荷を転嫁する側面があるのに対し、
適正価格を払うことはその逆で、今の技術を維持したり、社会全体を無理なく回す働きがあるのです。
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最後に
これはもちろん洋服に限った話ではなく、スーパーに並んでいるチョコレートや自動販売機で売っているコーヒー、窓の外を走っている車など、全ての商品において共通していることです。
価格を安くすることは、より多くの消費者がその商品を手に取ることを可能にし、生活を豊かにすることに貢献しています。
それは決して悪ではなく、否定するべきものではありませんが、負の側面を持っているのも事実です。
「オーガニックのものやエシカルなものは値段が高くて買えない」と言われますが、もしかするとそれで買えないものは本来買うべきではないのかもしれません。
谷家屋が取り扱っているのは服ですが、服でなくても、せめて本人が好きなものに関しては適正価格を払おうという意識が少しでも広まればと考えております。
ここまでお読みいただいたあなたは、そのような意識の高い方かと思います。
この記事を読み終わった後のお買い物ではぜひ、「安い」以外の基準を持ってみるのはいかがでしょうか?
それでは、最後までお読みいただきありがとうございました。
素敵な1日をお過ごし下さいませ。