メリー

知られざる新生児育児の"地味ショック"

私はなにをするにも、「見通しのないこと」が苦手だ。

遠足や運動会では、しおりを熟読して、1日のスケジュールをきちんと把握しておきたかったし、家電を買ったら説明書を読みこんでから電源を入れるし、ドラクエでは皮の装備シリーズがすべて揃うまで、はじめの街を出たくない。

なので妊娠してから、出産に関してはもちろんのこと、その後の育児で起こりうる、様々な「想定外エピソード」を収集していた。

新生児のオナラ音は大きい。
うんちオムツは謎なほどに漏れる。
授乳3時間おきは理想論で、バタバタしているとすぐに次の授乳時間になる。
おっぱいはビームのように複数の穴から出る。
夜泣に夫が起きてこないことに腹がたつ。
自分の入浴時間が確保できず、悪露が気持ち悪い。

未体験の育児に備えて、母体と新生児に起こりがちな現象、そして精神的な圧迫になりがちな事態を予習し、「こんなの聞いてないよ…」な場面と遭遇することを回避したかった。

努力の甲斐あって、新生児育児では大きな問題はおきず、おおむね想定したとおりの経過をたどり、心の街も平穏だった。

しかしながら、「重大問題ではないけれど、これは下調べでは出てこなかった観点だな」という心理的な引っ掛かりが2点あったので、全力で個人の感情ベースの話なのだが、私と同じく、慎重派なプレママさん、そして新生児育児を経験した方々にお伝えしたい。

オムツはコスパよりも、アレが大事

「新生児用オムツはすぐにサイズアウトするので、買いだめ注意」
「オムツのまとめ買いはアマゾンが最安値」

この2つの情報は調べてあったので、我が家では、新生児サイズのみ成長をみながら薬局で購入し、Sサイズに上がったらアマゾン発注に切り替えよう、と方針が決まっていた。

ちなみにオムツの種類は、試供品のやわらかさ比較や知人の口コミにより、ムーニーに決めた。

新生児サイズのうちはよかったのだ。
残量が少なくなり、新しいパッケージを夫が買ってきてくれるたびに、娘がすこし成長したような、ほのかな進歩感に気持ちが華やいだ。

Sサイズオムツ6パック我が家に送られてきた日も、これでいちいち買いに行かなくていいし、1枚あたりの値段も下がって、いい采配だ、最適だ、と満足していた。

しかし、まとめ買いの2パック目を開封した時、私の心は陰りをみせる。
やっと使い切った1パック目と、まったく同じ絵柄のオムツが並んでいたからだ。

イヤな予感がして、残り4パックのビニール包装を、中のオムツに押し当てて、薄く伸ばし絵柄をチェックした。
すると予感は的中し、すべて同じ絵柄であることが判明した。

アマゾンのお得パックは、薬局販売のものより1パックの枚数が多く、使い切るまでに時間がかかる。
この5パックが無くなるころには、娘のオムツはMサイズに近いかもしれない。

え、娘のSオムツ時代を、私はずっとこの柄だけで過ごすの…?
そう考えたとき、心にザクザクザクっと苦しさが走った。
風船をもつプーさんの大群が、こちらに微笑みかけている。

いやいや、ただのオムツの柄でしょ、なんでもいいでしょ!と思われるかもしれない。
私も出産前ならそう思ったし、実際に夫もそう言った。

しかし。
笑わない新生児のオムツ替えと授乳に、起きている時間の大半を使用していた私には、「新しいオムツパックから、新鮮な柄のオムツが出てくる」という刺激が、立派なモチベーションになっていたのだ。

向こう数カ月、同じ柄のオムツをオムツカゴに補充し続ける運命が決まったとき、私の胸は後悔と落胆に染まった。
こんなことなら、多少単価が上がっても、毎回薬局で買えばよかったと、心底思った。

現在はオムツの柄などまったく気にならないので、変化と刺激に乏しい新生児期独特のメンタルであったと思う。

この意外な落とし穴に、プレママさんは是非お気をつけいただきたい。

必死なときは、自分がみえない

もうひとつは、リアルタイムでショックを受けたわけではないし、より個人的な事情色が濃くなるのだけど、新生児期の娘と自分のツーショット写真が全然ない、という問題。

退院して以降、基本的に自宅にふたりっきりで過ごしていたのだが、お宮参りに行った生後43日目まで、私と一緒に写っている写真がないのだ。

夫とは何枚もある。日中仕事でいない夫が娘と関わっていることが貴重なので、残しておこうと、私が撮影したからだ。

あまりにも長い時間、あたりまえに一緒にいたので、あえて残そうと発想できなかったのだが、いまアルバムを見直すと、少しずつ育児に慣れていった「駆け出しママ」の私はどこにもおらず、地味にダメージを感じている。

しかも、産後1ヶ月頃は体重減少が著しく、一番痩せていた時期だったので、そこも合わせて勿体ないことをしたなぁ~と思う。

「新生児は毎日大きくなっていくから、同じ場所、同じポーズで毎日撮影すると、パラパラ漫画のようになっておもしろい」という事前情報を得ていたので、娘の撮影にだけ一生懸命になっていたのだ。

外出もしない産後1ヶ月は、ずっとパジャマだし、メイクもヘアセットもしていなくて、私はいいよ…と思うママも多いだろうが、顔のアップでなくても、小さな新生児をこわごわ抱いている、体当たりのあの日々を、意識的に残すことをオススメしたい。

私が感じた2つの引っ掛かりは、人によってはなんでもなく、吹けば消えるような些細な出来事であると思う。

どんなにしっかり予習して、準備していても、不測の事態は起きるものだが、一度きりの「はじめて育児」を後悔なくすごせる人が増えてほしい。

また、アレはちょっと失敗だった、後になれば、もっとこうしたらよかった、という体験談が増えることは、同じ思いをした人の慰めや励ましにもなるので、また発信していきたいな、とも思うし、私自身も癒されたい。

なので、
・新しいオムツパック、同じ柄だと地味ショック問題
・新生児とママの写真なくて後悔問題

こちらに該当する方は、私もそうだった!と是非教えていただきたい。
その声のひとつひとつが、私の中で渋滞している、風船プーさんを解き放つし、育児に失敗はつきものだけど、同士がいれば、薄まっていく苦みもたくさんある。

本当に、たくさんたくさん、あるんだと、確かめながら育てていきたい。

そうすることが、いつか娘たちの世代が育児をする番になったときに、今より優しく、穏やかな育児の場を作っていくと、信じてもいる。


記:瀧波 和賀

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瀧波 わか
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