これからの時代
今年が始まったころ、まさか半年後に世界がこんなに変わってしまうとは思ってもいなかった。人間が長い歴史の中で営々と築き上げてきた文化や文明は、言葉を介したコミュニケーションから始まり、コミュニティや社会が築かれ、人と人との関係を基本として発展を遂げてきた。それを根底から全て覆したのが新型コロナウイルスだ。ほんの半年(実際には数ヶ月)で「人と人との距離や接触」「多数の人が集まる空間」「コミュニケーションのための表情」という、社会を構成する上で最も基本的なことが「いけない」ことに変わってしまった。いま世界中の人たちは「人と会わない」「近くで会話しない」「集まらない」「マスクで顔を隠す」ことを強いられている。もしかしたら新型コロナウイルスの目的は「人の体を害する」ことではなく「人と人とを断絶する」「社会を遮断する」ことなのではないかと勘ぐりたくなるほどだ。とはいえ、これからもこの世界を、社会の営みを継続していくには、人と人との関係や社会運営を継続していかなければならない。それではどうすれば良いのか。
岩手県は全国で唯一感染者が確認されていない。これは世界的に見ても稀有なこととされ、注目を集めている、・・・が、実際に住んでいる人間にしてみれば、それほどの不思議なない。全国で2番目に低い人口密度(1番は北海道。ここでは感染者が出ているが、ほぼ札幌という都市部に集中している)により、もともと人と人との距離が離れている。自宅の周りを1時間散歩しても誰とも合わなかったりするのだ。知らない人と必要以上に近づくこともほぼない。家々の敷地も広いから、例えば都会の人々がSTAY HOMEを強いられたGW中も、自宅の庭でBBQなどして過ごせた。加えて真面目な人柄。岩手県でも、花巻市でも、3月初め頃から全国に先駆けてかなり大規模なコロナ対策を打ってきたが、基本的にみんなそれに従っている。自営業者などはかなり厳しい営業状況だったはずだが、それに気遣って支援の手もあちらこちらから差し伸べられるコミュニティがある。
考えてみれば、満員の通勤電車はもちろんのこと、ランチも夜の盛り場も、そして食料や生活用品の買い物も、人口密度が高い都会は三密の場ばかり。それを避けようと、仕事の上ではテレワークやオンラインミーティングがこの2ヶ月ほどで当たり前になったが、普段の生活に必須の移動や買い物にかかるリスクは変わらない。加えて、普段は便利に見える都会での生活は、阪神淡路や東日本大震災などの災害時にも実感した通り、なにかコトが起きた時のリスクは大きい。人が多いというだけで支援はなかなか行き届かず、生活すらままならなくなる。考え方によっては「都会にいること=リスク」とも言えるだろう。このコロナ禍をきっかけに、考え方を変えて会社そのもの、あるいは一部機能を地方に移す企業も増えてくると思われる。
さてその際の移動、移転、移住先だが、私が住む岩手県花巻市はどうだろうか。新幹線駅、空港、高速道路が整備されていて東京までは2時間半、大阪や福岡、札幌にも2時間かからずに行ける移動の便利さ。土地が広く、密にならずに仕事や生活ができる余裕。廃校となった学校や使われなくなった施設、空きビル、空き家もいろいろ選べ、都会から見ればかなり格安な家賃。
仕事の上で必要な情報インフラやサプライヤーも都会と変わりないほど問題なくあり、また震災やコロナ禍により地元就職を希望する学生が増えているので、人材確保や優秀な学生採用は都会にいるより競争なく確保できる可能性がある。高度なスキルやキャリアを持った若手プレーヤーもいま花巻周辺に集まってきており新しいコミュニティを作ることもできるだろう。
生活の質に至っては、新鮮で美味しい穀物、肉、野菜、果物をはじめ、山の幸や三陸が近いので海の幸も豊富だし、市内には10以上も温泉があるので、いつでも気軽に日帰りでも温泉を楽しむことができる。庭でのBBQも、自然散策も、特別なことではなく普段の生活だ。花巻市のファミリー向け、子育て世代向けの充実した施策も魅力。今もその手厚いサポートを求めて他市からも移住者がいるほどだ。歴史ある祭やマルシェイベント、ウインタースポーツなど、生活に彩りを添える楽しみもたくさんある。
美しい風景の中で、ゆっくりと仕事に取り組み、四季折々を感じながら人生を楽しむ生活を、コロナ禍を機会に初めてみてはどうだろうか。災い転じて福となす。仕事上も、生活も、この重苦しい世界から明るいものに変えられるのではないかと思うし、そう強く願う。
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