佐伯剛

2003年4月 風の旅人を創刊。2015年10月の第50号まで制作発行。 2016年1…

佐伯剛

2003年4月 風の旅人を創刊。2015年10月の第50号まで制作発行。 2016年10月より、「日本の古層」というプロジェクトを開始。 2020年4月から、毎年一冊、「 Sacred world 日本の古層」シリーズを制作発行。

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トランプ氏に象徴されるアメリカの今

アメリカ大統領にトランプ氏が当確という結果に、トランプ嫌いの人は失望しているだろうが、私は、個人的に、バイデン氏やハリス氏より、この方が良いのではないかと思っている。  私だってトランプ氏が好きなわけではないが、トランプ氏は、表の顔も裏の顔もあまり変わらないような気がするが、バイデン氏やハリス氏は、その差が大きいという印象が強いのだ。  大統領ともなれば、裏の顔というのは、自分個人の顔だけでなく、そこに利権に絡んだ多くの者たちの顔がある。  とくにアメリカの場合、軍産複合体の

    • 写真における、独自の視点と、その人ならではの姿勢。

       東京の写真を撮っている人は、とても多い。  そして、それらの写真を持ち上げる際に、「独自の視点で東京と切り取った!」という言葉が使われることが、とても多い。  気鋭の写真家とか、重鎮の写真家とか、なんでもいいが、「独自の視点で切り取る」という言葉に、私は、いつも違和感を感じている。  東京という場は、単なる風景ではなく、生身の人間が生きて活動している舞台なのだが、その舞台を、自分が好きなように切り取って料理することが、アート表現ということになってしまっているようで、けっきょ

      • 「狂」という特別な霊力。

         10,000人の感想よりも、その人の一言が、自分の方向性を決めることがある。  私が、ずっと長い間、自分がアウトプットするものが果たしてうまくいっているかどうか、確認するための指針としている方から、このたびの「かんながらの道」に対するお言葉をいただいた。  この方は、写真家ではないけれど、写真と同じく「視る」ことと「在る」ことのあいだにおいて、最も深いところで考えて、決して世の中に妥協することなく作品を作り続けている人。寡作であり、流行の物は作らないし、メディアに登場しない

        • 思念の宙返りと、新しい世界の円環

           恋愛において、どんなに異性にもてる人でも、自分の意中の人に振り向いてもらえないと、心の中は辛く悲しいはずで、それは、物づくりでも同じ。  100人の感想よりも、あの人の心に届くかどうかが気になるという存在がいる。  なので、新しく本ができれば、まず、その人たちに見てもらう。そして、その人たちは、日本の中でもっとも尊敬している人たちでもあり、かつ厳しく確かな目を持った人であり、発せられる言葉は、それがたとえ否定的なものであっても、次に向かう際の指針になって、より深く高いところ

        トランプ氏に象徴されるアメリカの今

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          日本人とは何か? 日本文化とは何か?

          ここ数年、遺伝子解析の技術が進んでいるようで、数限られた古代人の人骨のDNAと、現在の日本人のDNAの比較が行われている。その結果、これまで考えられていたような、日本人の起源を縄文人と弥生人のどちらかとする説ではなく、古墳時代に大挙してやってきた人たちの遺伝子と現代人の遺伝子の共通性が、縄文人や弥生人よりも高いという説が、数年前に唱えられた。ところが最近、他のサンプルでの調査で、やっぱり縄文系と弥生系のどちらかだと主張する専門家も現れた。  遺伝子研究の分野の専門家にとっては

          日本人とは何か? 日本文化とは何か?

          かんながらの道と、ピンホール写真

          昨日と一昨日に行ったワークショップに、ドンピシャで、新発売の「かんながらの道」が納品されました。  すでにお申し込みいただいている方には、今日、発送をすませました。明後日あたりからお手元に届くと思います。ありがとうございました。  今回の本は、自分で言うのもなんですが、世の中にあまりない写真本です。  ピンホール写真によって、古代世界のリアリティを引き寄せようとするものであり、私は、同種のものを他に観たことはありません。  私は、ピンホール写真の魅力を伝えたいという理由で、こ

          かんながらの道と、ピンホール写真

          この世から肉体は消えても。

          人生において、明確に自分の意思や計画だけで始めて、続けていることが、どれだけあるだろうか。  私の場合、何かしらの縁をきっかけにして始めて、やっているうちに天命だという気持ちになって、続けてきたことの方が多い。  今から4年前の10月19日、鬼海弘雄さんが他界した。  その1年前の2019年の年末、広尾の赤十字病院に鬼海さんを見舞った時、枕元には文学本などが積まれていて、鬼海さんの気力と脳力はまったく衰えていなかったので、それまで3年ほど撮り溜めていたピンホール写真をお見せし

          この世から肉体は消えても。

          空海の思想の奥義と、かんながらの道

           このたび発行する「かんながらの道」〜日本人の心の成り立ち〜の制作において、空海の思想を、頭の片隅に置いていました。  今日の思想世界の混迷のなかで、日本から生まれた空海の叡智を、再発見する必要があると私は思っているからです。  空海の思想の核心にある両界曼陀羅の二つの曼陀羅のうち、胎蔵曼陀羅は「理」の世界、金剛界曼陀羅は「智」の世界ですが、万物の理と、その理を体得していくための智の道筋の二つを体得することが、空海が開いた真言密教における真言への道です。  密教というのは経典

          空海の思想の奥義と、かんながらの道

          すべてをこの地上の生のうちに見ること。

          「 かんながらの道〜日本人の心の成り立ち〜」の納品日が、10月26日と決まりました。  ワークショップ の日と重なってしまうので、受け取りのタイミングが問題。  それはともかく、オンラインでの販売サイトを立ち上げました。  詳しくは、次のアドレスからホームページをご確認ください。https://www.kazetabi.jp/  年があけて2025年2月6日~2月17日に新宿のOM SYSTEMギャラリーで写真展を開催しますが、その展示作品は、この本に掲載されているもので構

          すべてをこの地上の生のうちに見ること。

          かんながらの道〜日本人の心の成り立ち〜

          今年中に出版するつもりで取り組んできた日本の古層Vol.5「かんながらの道」の入稿が終わった。  完成は、来週末(10月25日、26日)に行うワークショップに、ぎりぎり間に合うタイミングか。  今回は、日本人の心の成り立ちに焦点をあてて、仮名文字が日本人の世界観や人生観に与えた影響とか、現在のポストモダンの思想を超える空海の叡智とか、永遠の謎のように思われている古事記の冒頭とか、律令制の開始時期の日本人の心模様とか、かなり深く古代のミステリーゾンに潜入したけれど、文章全体はい

          かんながらの道〜日本人の心の成り立ち〜

          不易流行と、現代都市文明。

          「シカゴ シカゴ」や「桂離宮」などの写真で知られ、戦後日本写真界でもっとも重要な写真家である石元泰博さんは、長いあいだ五反田に住んでおられ、90歳に近い年齢の頃、カメラを首からぶらさげて山手線に乗って、渋谷の街に出かけて撮影をしていた。  当時、私は目黒に住んでいたので、時々、自転車で石元さんのご自宅にお邪魔し、石元さんが撮ってこられた様々な写真を「風の旅人」で紹介した。  その最後になったのが、風の旅人の第43号の特集「空即是色」の誌面だった。これは、2010年の年末年始に

          不易流行と、現代都市文明。

          約束の地をめぐる煩悩の醜い争い

          これまで何度も惨たらしい争いが繰り広げられてきた中近東で、もっとも深刻かもしれない事態がはじまって1年が経つ。  ポケベル爆弾といった最新テクノロジーを使いながら、3000年前のユダ王国を引き合いに出して自らを正当化するという傲慢。  その傲慢さは、自分たちの神が、自分たちの行為を許してくれるものだと迷信しているところからきている。自分たちの神は、自分たちを導いてくれる良き神で、イスラムの神は、人々に服従を強いる悪しき神であるという善悪二元論。常に、自分が善なる側にいるという

          約束の地をめぐる煩悩の醜い争い

          おのずから、しからしむ道

           伏見稲荷大社は、外国人旅行客の人気ナンバーワンの場所だそうで、連日、ものすごい人だかり。  境内には、「伏見稲荷は祈りの場です」という言葉が掲示されているが、果たして、どれだけの人が、祈るために、この場所に来ているのか?  しかし、聖所というのは、古代から二種類の場所があった。  一つは、正真正銘の祈りの場であり、厳粛な神事が行われ、巫が憑依して神の声を降すような場所。  そしてもう一つは、この伏見稲荷大社や、江戸時代の伊勢神宮のような場所で、様々な地域から、物見遊山で大勢

          おのずから、しからしむ道

          五大の響きと、写真。

           連日、京都市内をピンホールカメラで撮影し続けている。  京都の観光名所に群がる人たちは、いろいろな会話をかわしながら、人とぶつからないように巧みに左右に進路を変えながら歩いていて、その場にはすごいエネルギーが渦巻いている。  私は、その場に三脚を立てて、長い時間立ち続けているので、一人ひとりの顔は覚えていなくても、そのエネルギーを、記憶化することになる。  写真というのは、「真実の瞬間を捉える」などというキャッチフレーズがつけられた時代もあったが、真実のリアリティを、もう少

          五大の響きと、写真。

          細江英公さんが、超新星爆発のように、その生涯を終えられた

           「薔薇刑」、「鎌鼬」、「胡蝶の夢」、「抱擁」、「男と女」、自分の書棚にこれらの写真集が置かれている幸運な人は、今、改めて見つめ直しているかもしれない。  戦後日本の写真表現界が生んだ大きな大きな星、細江英公さんが、超新星爆発のように、その生涯を終えられた。しかし、宇宙に飛び放った星のかけらから、きっと新たな大きな星が生まれてくることだろう。細江さんの命は、途絶えたわけではなく、これからも、その命を継ぐ誰かによって、続いていく。  写真家という枠を超えて、芸術家という名がふさ

          細江英公さんが、超新星爆発のように、その生涯を終えられた

          京都がなぜ千年の都になったのか。

          前回の記事で、平安京が、四神相応ではなく、京田辺の甘南備山を軸にして、その真北に朱雀通りや大極殿が来るように設計されたということを書いた。  このことで明らかにしなければいけないのは、なぜ京田辺の甘南備山が軸になったかということだ。  桓武天皇というのは、第26代継体天皇のことを強く意識していており、京田辺は、継体天皇が2番名に宮を築いた筒城宮の地で、甘南備山は、古代から京田辺の聖山でありランドマークだった。   桓武天皇は、歴代天皇のうち唯一、公の場で即位式を行ったが、その

          京都がなぜ千年の都になったのか。