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狂言が面白すぎた話

兵庫県立芸術文化センターにて10/19,20の2日間公演された野村万作萬斎狂言を観に行ってきました。

1人で。

なんでまた突然狂言…と自分でも思うのですが、

中国に行った時に中国の伝統芸能を見ようと思ってたんです(コロナで見れなかったけど)

そこで気づいたんです。

そもそも自分自分の国の伝統芸能見てへんがな。と。

エンタメ界隈で仕事してるのに自国の昔から行われてるエンタメを見ないで今のエンタメを語れるのかと。(考えすぎ?笑)

そろりそろり言うて遊んでたけどホンモノのそろりそろりは見たことあるんかと。笑

…と思って緊急事態宣言が明けてからネットで「狂言 大阪」で検索したんですね。

そしたらちょうど2週間後にあの野村萬斎さんが兵庫県で公演をやるという情報を発見。

元々岡山に一人旅する予定を入れようと思ってたのですが次週に延期させて即チケットを予約。

A席で6000円、B席で4000円。

せっかく初めて見るなら良い席をとA席を選び、客席の中心らへん、若干右寄りで席を指定しました。

これが功を奏するとは…

能舞台は右寄り

そう、能舞台は左側に廊下的なものがあり右側3分の2くらいで正方形の舞台が組まれています。

チケットの予約の時は全く考えていませんでしたが、少し右寄りの席を取ったことで、正方形の舞台のセンターに私の席がありました。

めっちゃ見やすいやん…

表情も目線までしっかり見える距離感でこれは良い席取った…

会場は98%ご老人。一元さんは3%未満。

予想通りでしたが、客席はご老人ばかり。客席の800席あるうち600席くらいは埋まってたかと思います。2階席を確認できなかったのでざっくりですが…

公園前も補聴器の調整を促すアナウンスが流れたり、アーティストのライブとかでは体験できないなかなか独特な雰囲気で面白い。

後ろのおばあちゃん2人組は始まるまでずっと風呂掃除を夫に頼むかどうかの話をしてました。

平和か。笑

はじめに野村萬斎さんが演目の解説を兼ねた前説をしてくれるのですが、その時に今日初めて狂言を見るよ〜って方〜って会場に聞いた場面があって、手をあげたのは1階フロアで私含めて5人ぐらい。2階席は見えないのでよくわかりませんが、一見さん少なすぎでした。笑

野村萬斎による演目解説

開演時間になると萬斎さんが右奥の小さい出入り口から1人で能舞台に現れました。

その時の私の気持ちは

「本物や…」

小さい頃NHKの教育テレビで「ややこしや〜」って言ってる映像を見て歌って育ってきた私にとってご本人が目の前にいるのが不思議。笑

そのちっちゃい頃見てた人フィルターはあるにせよ、出てきた瞬間に覇気出しとるんか?ってくらい

鳥肌が立ちました。

喋り方もゆっくり、低い声で貫禄でしかない。でも冗談交えたトークで会場はクスクス笑ってる。

渋すぎる。

なんやこのカッコいい大人は。

この方が演出するオリンピックの開会式が見てみたかったものです。

石田幸雄さんによる「入間川」

逆さ言葉(言ってることとは逆の意味で会話する)がテーマの演目でした。

大名役の石田幸雄さんという方が主人公(?)で、太郎冠者という役に内藤連さん、入間の某という役で深田博治さんが出演されていました。

狂言は基本3人で演目をやるのかな…?この日は3つ演目がありましたが、登場人物はいずれも3人ずつでした。

初めて見た演目ということで、まずは狂言ってどんなシステムなんや…というのを探ることから始まり、演技がうんぬんまで実際見れていませんが、最初下手側の5色の幕が開いて演者が堂々と歩いて出てくるところに注目してほしいと萬斎さんが言ってたので目をかっ開いて見ました。出てくる時は客席は拍手しないんですね。演者さん服が擦れる音が微かに聞こえるシーンと静まり返っていました。

狂言は日常のおもしろい出来事を表現する芸能ということで、コミカルな場面が多く、言葉は難しいけど事前にストーリーを教えてもらえるのでなんとなく理解しながら見れました。

それもあってふっふっふっ…って気づいたらめっちゃ笑ってました。笑

でも言葉の意味がわからなくても、ああ、今こんなシーンなんだろうなっていうのは役者さんの所作とかで推測できますし、言葉を一語一句追わなくても勢いで見れました。

薄い感想になってしまうのですが、はかま(?)のすそがずるっずるで引きずりながら歩いてる石田さんがめちゃくちゃかわいかった。笑

そういうキャラなのかと思ったら後に主人の役をしてた方が同じくずるっずるのはかまで出てきたので、これは身分の高い人はこういう衣装になるのかな…と推測。真実はわかりません。笑

野村万作さんによる「呂蓮」

野村万作さん。人間国宝で御年90歳。野村萬斎さんの父。う…そ…だ…ろ…

五色幕が上がって袖から出てきた時の歩みはゆっくりで少し震えているもののなんか偉大な神でも見てるのかな?という気持ちになりました。

なんか本人が光って見えた。後光がさしてるみたいなイメージ。

声も普通の90歳とは思えない声量とはっきりとした発音。

めちゃくちゃかっこいい。

万作さんは出家僧の役で入間川ほど動きはなく落ち着いた演目。宿主役で高野和憲さん、妻役で中村修一さんでした。

一晩止めてもらった宿の主人に説法してたら主人が妻に内緒で出家したいと言い出して、頭を剃ってあげたり自分の着物をあげたりしたのですが、何も聞かされていない宿屋の妻が現れて主人が態度をコロコロ変えるという話です。

めっちゃおもしろかった。笑

万作さんが主人の頭を剃る場面で(実際には剃ってませんよ…)

じょーりじょり!じょーりじょり!って言いながら主人の周りを一周したのがあまりにも可愛すぎて…笑

私は小さいおじいちゃんがちょこちょこしてるのがツボなんか?笑

とにかく狂言って厳かな伝統芸能…って思ってましたし、実際そうなんですけど狂言は親しみやすいなと思いました。普通にストーリー面白いし。

この演目が終わったら15分間の休憩が挟まれました。

大体1演目20分ぐらいのようです。

野村萬斎さんによる「千鳥」

もうね、圧巻。

ちっちゃい頃見てたフィルターをなるべくかけないように見たつもりだったのですが、だとしてもやっぱすごいわ…。

先に見た2つの演目よりも動きが多くスピード感があるのもあいまって、笑いが起きてる回数が圧倒的に多い。

しかもセリフがない場面で表情や返事だけで笑いが起きる。

なにこれ?!

表情がめちゃめちゃ豊か。ひょうきんなキャラクターは前の2演目でもいましたが、なんかタイプが違う。

そういう演目のキャラで笑ってるのか、萬斎さんだから面白いのか…って考えた時にやっぱりこれは萬斎さんだから面白いという場面が結構あったんじゃないかなと素人目にみて思いました。

萬斎さんが、「え?」と横を見る時に顎から先に向くような動きとか特徴的で面白いなぁと思っていて、そういえば自分の友達に同じような仕草でえ?って言ってくる人いるなぁと思って今度教えてあげようと思いました。笑

ストーリーはツケが溜まってる酒屋から酒をもらってこいと主から言われた太郎冠者(野村萬斎)があれやこれや策を講じて酒を持って帰ろうとする話でした。

主人役が中村修一さん、酒屋役が内藤連さんでした。

まとめ

私が今まで触れてきたエンタメでは舞台から客席に届けるとなると客席をしっかり見るのですが、狂言は見ていないというか、ぼやっと客席を見ていて、それは客席ではなくその演目の情景を見ているなと思いました。

演劇やミュージカルなどの舞台と同じ感じ。でもちょっと違う。

照明も音楽もない、人間の存在感で客席を支配する。

並大抵のパワーと技術では届かないと思います。でも実際届いてる。

現代はさまざまなエフェクトや編集で見せたいところを見せることができますが、能の舞台は前に出てきた人がアップ。話してる人を引き立たせるために話さない人は動かない。など、脈々と受け継がれた表現の技巧がそこにありました。(この説明は演目前に萬斎さんが言ってました)

想像の世界で、ない物をあるかのように表現する。そしてそれを客席と共有する。

それって改めてすごいことだと思うんです。

見る側もやる側も想像力働きまくってて、目には見えないけどその想像で創造された同じ世界に私たちもいる。

どんな世界にもいけるね。

やっぱ芸能、エンターテインメントって人間だけに許された最高の文化ですわ。

…とまあ鼻息荒く帰宅して家の廊下をそろりそろりと歩いてみたかぜぱでした。

次は歌舞伎が見たい…

では!

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