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姿なき

愛が揺らいで

風になる

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不意に、風がゆらぐ時。

何か、大切なものの声を聞くような氣がしてならない。

切なくて、懐かしくて。
新鮮で愛おしい。

心を、ここに留められるような。

もう、そんな感触に囚われて長いのですが。

この感触は何なんだろう?

ずっと問うていました。

⭐︎

上高地での最後の朝を迎え、ホテルの洗面台の鏡を見ながら歯を磨いていると。

ぽっかりと、言葉が浮かびました。

それは、すでにわたしの中を漂っていた言葉にぴったりのものでした。

⭐︎

清らかな空氣、水、この地の時の重なりを感じて過ごすうち、決して自己主張しない存在の有り様に心惹かれた上高地でのひととき。

我の強いわたしの中にも、その種が撒かれたことでしょう。

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写真は、今、上高地の森で盛りを迎えている二輪草です。

徳沢までのトレッキングで至る所に咲いていました。

途中、ニホンザルの群れに出会いましたが、彼らが二輪草の葉を食しているのを間近で目撃しました。

思いの外毛並みもよく、柔軟な背中と肢体から繰り出されるしなやかな彼らの動きに、こちらの足取りも軽やかに。

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風の種
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