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とある寂れた時計店にて 『Autumn poem』


○前書き

梅熊大介さんの記事の「オータムポエム」なる野菜の流れから、
阿北ボタンさんの『昭和の少女漫画風小説~Autumn poem~』に進化し、

その記事につい「書きませんから!」とコメントしたことで、阿北ボタンさんから

「ソレはまさか(押すなよ、押すなよ~、絶対押すなよ!)的な?」

とのお言葉を頂いたまま知らない素振りで放置していたものの・・

胸につかえた感じたままの日々を過ごした結果、
やっと本日、覚悟を決めて書き流した作品を投稿することにしました☆

「私なら・・時計屋のお爺さんと死と同時にタイムスリップして少女になったお婆さんとの儚いラブロマンスにするかも・・って、書かせないでください!」と、コメントしたこともあってSFにしようかとその流れの話も考えたのですが長くなりそうなので止めました(笑)

何かが起きそうで何も起きない・・・そんなお話です。  細かい描写を排した無責任な小説未満の箇条書きのような文章になってしまいました・・・☆

そして・・・

阿北ボタンさん、梅熊さん、皆さんの共通する「オータムポエム」のイメージを壊すことになったのでは?・・・と、危惧しております。どうかお許しください!!


とある寂れた時計店にて ・   『Autumn poem』


某街・某町・某商店街。

かつては温泉街として栄えていたその地は寂れて人影さえない。
シャッター街とさえいえぬ廃墟の通りである。

そんなかつての商店街の外れに小さな時計店があった。
主人は老齢で客もいないのに何故か店仕舞いはしなかった。

毎日毎日依頼されてもいない時計の修理をしつつ生きるだけの日々を
過ごしていた。

そんな老人が晩秋のある朝死んでいた。

時計の修理の作業場の机に上に突っ伏したまま冷たくなっていた。

表情は全てを終えて安らいだ様子もなくただ生気を失くした亡骸でしかなかった。

市役所から便宜上の職務を装う輩に発見されるのにも数日はかかるだろう。

そんな老人のとある日の出来事を記す。


「カララン☆」


来るはずもない来客を知らせる昔ながらのドアの呼び鈴が鳴った。

気のせいか?と老人はドアを見やる・・・

晩秋の西向きの入口には逆光で霞む少女?と思える影があった。

「・・・何かな?」

小さな影は老人の座る作業机の前まで歩いて来た。

老人は再び問う。

「何かな?」

「とけいをしゅうりしてもらえますか?」

客にはほぼ無縁の老人は認知症のような質問返しをする。

「時計・・・修理・・・?」


「そうです。 おねがいします!」

「・・・・・」


老人には現状が飲み込めていなかった。

(この・・眩しいような幼い少女が・・・私にお願いだと?)

「時計を修理して欲しいって言ったね・・・持ってきたの?」

「はい!」


少女は大事そうに両手で胸に押し当てていた手にあった丁寧に包んだ
布を解いて・・・腕時計を取り出した。

老人は受け取り・・・

「女性用だね・・それもかなり古い・・・?!」

少女に答えながら老人の手は小刻みに震えていた。

「・・・なおせるでしょ?」

「・・・中を開けて観てみないとね・・・」

「おねがいします。」


「この時計・・・お嬢ちゃん、誰かから頼まれたのかい?」

「はい。 わたしのおかあさんから・・」

「どうしてお母さんが来なかったの? どうしてお嬢ちゃんに?」

「おかねははらえないけど・・・どうしてもなおしてほしいの! おねがいします!!」

「・・・・・・・」

「おかあさんが・・・おじいさんでないとなおせないからって・・・!」

「・・・・・・・?」


「なおるまでどのくらいかかりますか?」

「そうだね・・・中を開けてみないとわからないけど・・・時間をもらえるかい?
そうだな・・・二日、いや・・・三日。 もらえるかな?」

「・・・よかった。 ありがとうおじいさん!」

「・・・・・」


「それじゃおねがいします!!」

そう言って幼い少女は入口に向かう。 ふいに振り返り・・・

「あ、おかあさんがね! これだけはおじいさんにいってほしいっていってた!!」

「・・・何かな?」

「ありがとう、おとうさん!・・・って!!」

カララン☆


そう言って少女は逆光にその姿を消した。


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(馬鹿な!!)

と、老人は思う。

時計職人の老人には子供は居なかった。

恋愛さえ・・・と思いながら、
すでにフラッシュバックしている女性を思い起こしていた。


老人が青年だった頃、たった一度だけの儚い恋愛経験があった。

遠い地に旅立つ彼女に時計を手渡したことがあった。

老人が子供の頃に母の形見として受け取っていた高級時計は壊れていたが
想いの全てを込めて修理した時計・・・

彼女は時計を受け取り、哀しい笑顔を残したまま長距離列車に乗った。

それが老人にとって、たった一度の彼女と恋愛との決別だった。


(さっきの女の子は「ありがとう、おとうさん!」と言っていたが…)


作り笑いも出来ないくらいに、もとより有り得ない話である。

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時計を触ることでしか自らの生を確認する術のなかった老人には、やはり
少女の残していった時計を修理するしかなかった。

作業しながら・・・遠い日の彼女との会話を思い起こそうとしていた。


「私・・・ね、貴方と結婚して子供ができたら、今あなたが修理している時計をね
譲ろうと思うの。 あ、子供はね・・女の子だってわかってるの!」

「・・・? 俺は・・ずっとキミに使ってもらいたいと思っているのに」

「その時計・・・貴方にしか直せないんでしょ?」

「・・・・・・」

「だから・・・私たちの娘の時計が壊れた時にも貴方に直してもらうの!」


(・・・なんだかそんな会話だったような気がする)


老人は作業を進めながらさっきの女の子のことを考えていた。


(仮にあの時の彼女が妊娠していたとして・・・子供が産まれて・・

その子は女の子で・・・

女の子が大人になって恋愛して身篭り・・・女の子を産んだとして・・・?

その子がさっきの子だなんて・・・有り得ない!!!)



「でも・・・あぁ、これであの子に渡せるな・・・!!」



店内には眩しいばかりの西日が射し込んでいた。
老人が命を閉ざして三日が過ぎていた。


そして今・・・
老人の修理していた女性用の高級時計が静かに時を刻み始めた・・・☆



(終わり・そして始まり)

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おそまつさまでした☆

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