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『星降る夢』星が降る・・・② #シロクマ文芸部

「星が降る」から始まる小説・詩歌・エッセイなど
締切は1/26(日)23:59。

*続けて参加させていただきます。😊



*『星降る夢』



「星が降る?
・・・そんな光景に出会えるとしたらご褒美ね?」

そんな言葉を最後に彼女は短かった命を閉じた。
俺はといえば・・・
そう時間を永らえるでもなく同様の運命だ。

      
     ☆ ☆ ☆ ☆


地表で様々な生が謳歌されていた永劫と思える時代は去り
全てが地下での生存を求めたという寂しい伝説。
古代史は地下なりに夢を虚飾した歴史として刻まれたが
全ての生が外壁に囲まれた星の中でしか営まれない世界で
地表も空も妄想でしかなかった。

文明の利器として輝く人口太陽は巨大な空洞に築かれた街を
かつて地球が恵みを受けた太陽のように照らしていたが
エネルギーの枯渇と共にその光を失った。

闇を常とするその世界で、人々はただ生きる為に生きながら
天を塞ぐ果てない外壁が奇跡のように崩れる日を夢見ていた。

不思議と生きたままの夜光虫がそこかしこを飛び交い・・・
その小さな灯が心を癒し、伝説の星々を思わせて美しかった。

誰もが闇の中で天を仰ぎ、星々を妄想しつつ
残された時間を生きた。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆


宇宙に点在する無数の星々の片隅で
闇に包まれたままの死を迎えた星があった。

その星の一部に大きな穴が開いて
地下深い巨大な空洞が顔を覗かせていた。

かつて生物の営みでもあったのだろうか?
文明を証明するかのような巨大な瓦礫の人工都市を
微かな星灯りが照らしていた。


仮に穴の底から天を見上げたら・・・

闇をくり抜いた巨大な円窓から宇宙に広がる
無数の星々の降る夢の光景と出会えたことだろう。


紛うことのない・・・

星降る夢をみた人々に幸あれ☆




【了】

(694字)


*このお話はフィクションです。


#シロクマ文芸部
#宇宙SF
#ショートショート









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