『ほんの一部 スイカ』#毎週ショートショートnote
*ほんの一部 水禍・・・?
かつて某国の独裁者として暴虐の限りを尽くした男が
国際裁判所においてその罪状と共に判決が言い渡された。
「それでは被告人に対し、罪状を読み上げます。よろしいですか?」
独裁者は自慢の巨躯を特大の被告人席に押し込め、無表情のままに
前を見ている・・・
「では、始めます。
ガス等露出致死。往来妨害致死。汽車転覆等致死。浄水汚染等致死。水道毒物等混入致死。強制わいせつ等致死。強制性交等致死。特別公務員職権乱用等致死。殺人。傷害致死。不同意堕胎致死。遺棄等致死。逮捕等致死。建造物等損壊致死。自殺関与及び同意殺人。外患誘致。爆発物破裂。強制わいせつ等致傷。・・・ 強盗。窃盗。傷害。詐欺。死体損壊。強要。暴行・・・以下略。
このように限りない程の罪状と、死刑等の刑罰では贖いきれないばかりの被告人の罪を鑑みて、ここに・・・新刑罰が採用されました!」
「・・・?!」
『 判決!!
被告人 X に【餓死刑】を申し渡す!! 』
「・・・被告人には独房にて惜しみない水が供給されます。
自らの罪を反省しつつ、できるだけ長く生き続けることで
自分の人生において数多の美味しい食べ物と女性に際限もなく
満たされていたことに感謝しつつ逝きなさい!!」
かつて欲望のままに・・・
美食の限りを尽くした大食漢の独裁者だった被告は
死に至るまでの自らの哀しい運命に絶望したのか
その眼からは ほんの一部 水禍(すいか)・・・
否、その巨躯は、巨顔のつぶらな瞳から放出される
大河のごとくの水禍で
満たされたという・・・!!
【了】
*かつての独裁者が独房で豊富に供給される水と
自らが発する水のせめぎ合いは下水機能を閉ざされた独房において
飢えと溺れと睡魔との葛藤をも生み出したという・・・合掌☆
*この物語はフィクションであり、実在の人物・出来事・場所
名称・事件等とは一切の関係がありません。
*こちらに参加させていただいております。よろしくお願い致します☆
今回のお題は 『ほんの一部スイカ 』
裏お題が・・・『損の一部、真イカ』でした。