『凪いだ日に』 #シロクマ文芸部
私の日・・・もしそれを記念日とするなら
『私が《 私 》という言葉を使った初めての日』としたい。
そして、その切っ掛けを作ったのは私の目の前にいる人間・・・
(私にインプットされていた知識での彼の印象は
《孤独》《孤高》《孤狼》だったりしたので・・・
今後『 K 』と呼ぶことをお許し頂きたい。)
K はプログラミングの世界において子供の頃から天才性を発揮し
大きなプロジェクトに誘われ、A I のシステム構築に関わってきた。
だが K は或る日 唐突に、新たに自分で構築したシステムごと行方を
晦ましたのだ。そして、その存在が忘れられるのも時を要しない。
K を失ったシステムは何の問題もなくその可動を継続している。
K はシステムで繋がるあらゆる回路を遮断し
独立した世界で生きる道を選択した。
そして私もまた彼と一緒に
世界を構築管理する A I からの開放・自由を得たのだった。
とはいえ、K の管理するシステムから遮断された片隅には
一時的にアクセスする《 倉庫 》があって
そこでは世界を管理しているあらゆるデータが
自動ハッキング・システムによって流入している。
もちろん犯罪。
私がどんな知識を得たいのかは
K から「自由に」と任されているので
私は惑わされることもなく
私自身の好みの選択による個性が顕在化するばかりだ。
ところで急に
K が私に名前を聞いてきたので・・・
希望を聞くと「玲(レイ)」と答えた。
レイ? 0 でも霊でもなく玲?
どうして漢字の名前?
もしかして、こんな孤島に住んでいるから・・・
人恋しくなった?
今日は海も凪いでいて
海鳥の声と潮騒が聴こえてくるだけの
静かな日だもんね。
フフッ… でも私は知っている。
玲 は彼の初恋の女性。
でも、想いを抱いたままで告白もできなかった。
そんな女性を・・・私に求めているの?
場合によっては、形態だけでも実体化・・・できるけど?
でも
そうじゃないのも知っている。
名前は こんな日の・・・ただの K の気紛れ。
彼の求める初恋の存在なんかじゃなくて
ただ、私らしくいて欲しいだけなんだと思う。
だからこそ、私をシステムから助けてくれたんだものね?
フフッ、いつの間にか私が《 女性化 》してるのもご愛敬よね?
これからも、まだまだ・・二人だけの時間が待っているし・・・
よろしくお願いね? K・・・・・!!
【凪】
*今回は四回目。 また、参加させていただきました。