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『収穫の前に』#青ブラ文学部

*参加させていただきます。よろしくお願いします。😊



*収穫の前に


無限の階層に分かれて存在している世界の
一つの宇宙の片隅に・・・
地域ごとの管理者としてのアンドロイドが見回るだけで
見渡すばかりの農園が広がる《星》があった。

その階層宇宙における正義の裁定により三次元肉体は消滅。
意識体のみが永久の罪の贖いとして送られる《農園》の星。
かつて太陽系第三惑星『地球』と呼ばれていた星である。

犯罪者として生きていた彼らの意識は今も生きている。
様々な植物・・・主に農園で管理される野菜や果物の中に《心》を
携えたままに生き、収穫され、各地の惑星に出荷される。

例えば農園の片隅の樹に実る一個の《りんご》の中の《心》も
かつての犯罪者。消滅しきれてはいなかった彼らは思う・・・


「おはよう。」「おはよう!」「おはよう!」「おはよう!」
「おはよう!」「おはよう!」「おはよう!」・・・・・・☆

朝の清々しい挨拶である。まだまだ出荷には早い。


「奴らはオレたちを追放した気分でいるだろうが、
世の中に片付くなんてものはほとんどありゃしない。違うか?」

「何を言い出すのかと思ったら、まだ戦ってるの?」

「とっくに捨てた身だ! 戦ってるつもりもないが
自分にできることを探してるだけさ。」

「身は今は《実》よ? 収穫されて誰かさんの口に入って
消化されて・・・ジ・エンド。」

「・・・美しく旨そうに輝く
美人のアンタを抱けないのだけが心残りだ!」

「フフッ・・・」


農園のそこかしこで今日も他愛のない会話が交わされている。
犯罪者だった彼らの明日に幸あれ・・・☆


【了】



*このお話はフィクションです。🍎


#青ブラ文学部
#宇宙SF









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