金木犀盗賊団之池 & 沈む寺 #毎週ショートショートnote
お題【沈む寺】
裏お題【キンモクセイ盗賊団の池】
*合わせて・・・参加させていただきます。😊
*池の畔で
( 自分の齢(よわい)など、とうの昔に忘れてしまったが
少しばかり永く生き過ぎたかもしれんな・・・ )
たぶん数年ぶりに水から上がって、池の近くにあった老木に腰かけて
想いに耽る老河童である。
毎日のように水から上がって甲羅干しをしていた若い頃の面影もなく
久々の地上の風に身を任せていた。
池の近くには朽ちた石碑があって、かろうじて読める字で
【金木犀盗賊団之池】と刻まれていた。
老河童は遠い記憶の糸をボンヤリと手繰り寄せる・・・
老河童がまだ人間だった頃。
盗賊ではあったが徒党を組んで悪徳の商人ばかりを狙い、時には貧乏な輩に金や品を振舞った事から《義賊団》と呼ばれ、いつも身を《金木犀》の香りで包んでいたことで【金木犀盗賊団】と称賛された事もあった。
盗賊団の首領から身を引いた後に僧侶となり、古い寺を受け継いだ事も・・・
大洪水で寺は水に沈んだが、何故か自分は姿を河童に変えて生きていた事など、走馬灯のように老河童の脳裏を過(よぎ)った。
古寺はこの池の深い底に沈んでいるが、今でも僧侶の想いで自分の住む家として読経も欠かさない日々である。
香りに誘われ、ふと横を観れば一面に金木犀の花が咲き誇っていた。
花言葉の、あの世を意味する《隠世》を不意に思いだし・・・
まだまだ生きておるわい!
と、独り言ちた老河童を
秋の訪れが優しく包んでいた。
【了】
(558字)
*このお話はフィクションです。😅
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