『 なるべく動物園 』③ #毎週ショートショートnote
*【エデンの園】ではなく
かつて《地球》と呼ばれたとある太陽系の第三惑星を模して造られた
惑星型宇宙船は、その場をとある銀河のとある恒星の第三惑星として
その空間を定位置とし、惑星名を【金球】と命名した。
地表と地下は【人間】の生活圏とされたが、かつて地球で《人間》として
僅かな時を謳歌していた生体としての機能は彼ら自身が放棄し、その身を
A I に移し替えたままに悠久の時が過ぎ・・・その歴史もまた
原始時代をイメージするのみの悠久の果てとなった。
全てが《完全》を気取った彼らであったが、ある時から娯楽の要素として
《変化》を求める提案がなされ、『なるべく動物園』のコンセプトのもとに
プロジェクトが始動した。
《生体》である生物の全てが絶滅したことによって、原始に生きた数多の
生物姿態の復元は不可能と思われたが、《奇跡の神童》と言われた少女の
存在により計画実現の可能性を見出したのである。
それが《意識》と呼べるなら、彼女の意識は次元も時空も自由に飛び交う
事が出来た。彼女はかつての地球に飛び、その地に生きるあらゆる姿態
データを記憶にとどめた。プロジェクトの責任者は当然、彼女となった。
少女が《奇跡の神童》と言われた所以は
彼女がイメージすることを【実体化】できることにあった。
広大な宇宙においてもその能力を妨げることにはならない。
プロジェクトは当初にイメージされていた娯楽施設とは
その様相を根本的に変え、計画は巨大化した。
《なるべく》は《成るべく》にその意味合いを変えたのである。
『成るべく動物園』。
☆☆☆
【成るべく動物園】が舞台となる【地球創生】に際して影響を受けないように、少女が最初に試みたことは【金球】の定位置の時限を少しだけ変えることだった。地球創生の様子を金球から観察できる範囲で。
急激に行われた【地球創生】だったが、それでもかなりの時間を要した。
少女がその身を女性の姿態に入れ替える程には・・・
【地球】が創生されてから、【金球】は地球の周りを回る《衛星》となり、
その名も【 月(Moon)】と変え、それまでの惑星の立場を地球に譲った。プロジェクトのリーダーである少女の絶対的な指導によるものだった。
そのことにより、同じ時限での観察も可能となり、やがて【動物園】となるべく【地球】を、悠久の時と共に見守ることとなった。もちろん娯楽の対象として・・・・・・
☆☆☆
かつての地球がそうだったように単細胞のバクテリアが全地球に広がることから生物の発祥が見られ、やがて魚類や両生類や爬虫類や鳥類・・・中生代の三畳紀にはついに哺乳類の誕生までも見ることができた。
すでに開園していた『成るべく動物園』だが、創生の主たる・・・今は女性の姿となった少女の、究極の目的を実現すべく時がついに来たのである。
「いよいよ・・・【ヒト】を創るわね ♪
他の生物と同じようにオスとメス・・・
もう、名前も決めたの。
最初は、大昔の地球のときのように
オスが【アダム】で
メスを【イブ】にしようかと思ってたんだけど
それはやめたの。
やはり新しい【動物園】に相応しい名前がいいと思って・・・
オスは【タロウ】。
メスは【ハナコ】。
反対意見は・・・ないわね? じゃ、決まり!!」
こうして、新に創生された地球の『成るべく動物園』の主役も決まり、
宇宙空間ではお祝いの花火が盛大に炸裂したのだった☆☆☆
『成るべく動物園』に幸あれ!!!
【始】
(1,369文字)
*このお話はフィクションであり、実在の歴史、人物、施設、出来事等とは
一切の関係がありません。特に動物園とは関係がありません。
*こちらに参加させていただいてます。
今回のお題は 『なるべく動物園』
裏お題が・・・『あるべき成仏宴』でした。