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青春漫画抄(昭和)㉓




*《 桑田先生の壮絶な話 》


井上さんの場合とは事情は違うが、
目的には連動してるので・・・
仕事中に話してくれた桑田先生のエピソードをひとつ。

先生がたぶん17歳の頃。

「死ぬ」と決めてナイフを買い、
最期の日の街を歩いていたのだと言う。

視界に入るあらゆる物が感動を覚えるほどに美しく輝き・・・
夕陽の中(これは想像)、小高い山に入り、頂上を目指した。

すでに夜となっていた星明りの中で、
用意していたナイフを手に、
シャツの上から・・・胸に放つ☆

だが、頑丈だった筋肉に阻まれ刃は入らない?!
数回繰り返すも目的には達しない・・・そこで、

渾身の力を込めた最後の一撃!!


意識を取り戻したのは夜中だったという。
そこは奈落の崖、ギリギリの場所。

目覚める前に見ていたのは大蛇に追われる夢・・・!

ふと振り返ると、まるで大蛇が這ったかのような
草地の地面に残された自分の痕跡?!

急に恐怖に襲われ、山を駆け下りる・・・!!


山を下り、息を切らしながら・・・
ふと見ると自分のお腹周りの異常な膨らみ? 

ベルトに抑えられていたシャツを捲り上げると
ドッ!!と液体が流れ落ちたのだという。

血糊で固まったシャツの内側に溜まっていた血液が
一気に噴出したことに気がついたのだと・・・
先生は笑いながら話した。

笑い話にしては、なかなか壮絶であった。(違!!)

☆☆☆


*《 解雇の日 》 


忙しい日々はさらに一年ほど続いたが、その状態も落ち着き・・・

先生への仕事の依頼が少しずつ減ってきた頃、
最初に井上さんに解雇の声が掛かり、
やがて私にも同様の声が掛かった。

先の仕事が決まっていない状況では当然の流れだった。 

先生のもとを離れる時、紹介された仕事があった。
ノートを作る会社『昭和ノート』。

有名漫画家が表紙を飾るノートやスケッチブックの
裏表紙の仕事であった。


これで暫くは路頭に迷う事もない・・・☆

(つづく)





( *桑田次郎・作品群 )


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