急行電車、清潔不潔、ルッキズム
夜に快速急行に乗ることはゴミ溜めのなかに突っ込まれるような気持ちだとはっきり言ってしまうことにする。
汗ばんで体の周り 10センチを温め続けている薄ら禿げの男の背中と、毎日ハンガーに綺麗にしまっているトレンチの腕をくっつけたまま15分耐えなければならない。
揺られながら、初めて読んで気に入ったから大事にしようと思っていた『坊ちゃん』の背表紙にそいつのうなじが当たってずった。
汗が染みただろうと思うと大変気持ち悪い。新宿の綺麗なお姉さんが折ってくれたブックカバーは今日で捨てる。
汗かきというだけでここまで言ってるのではない。服も垢だらけな色で臭いも然嫌な匂いがする。局所的に潔癖なのか知らないが、消毒液とか汗拭きシートのようなアルコールの匂いも混ざっていて頭痛がしてくる。不快だ。隣がこれだけはずれの人間でなくても、散々だ。
快適な満員急行など存在しない。
朝は耐えられても夜は無理だ。老若男女皆コンビニの飯を食べた脂でギットリときたない。自分だってそう綺麗でもいられない。痴漢に遭うものも日々いる。ろくでもない。しかも、ホームに早いうちから並んでいると、この惨状に目が覚めた頃には戻れない渦に巻き込まれていて、やっぱり乗るのを辞めよう、ということも出来ない。
そうこう思っていると駅に着いた。
男は出るんだか出ないんだか何だか怪しい動きなので見ていると、精神年齢が肉体年齢に追いついていない、障害のある人のようだ。
私はこういう状況で、普段優等生の面を下げて生きている人間が急に良いも悪いもわからなくなって意見のない人になるのが大変気持ち悪い。かといって自分もなんとか言えるわけではない。が汚いものは汚いのだ。虫を嫌うのは虫が病気を媒介するから嫌うように遺伝子がきめたんだろう。汚いものは体に悪いから、嫌いなのだろう。
見た目の清潔な人というのは、清潔がどこからやってくるのか理解する力がある人ということだ。ルッキズムというのは、お前の遺伝子だ。逃げられないぞ。なんだこの文章は。
ということで、現状から言って不適当なのは私の方だ。満員急行はこれで歓迎されているから人気なのだ。私は稼いだ金でスタバでも寄って、大人しくもはや各駅にでもゆったりと乗ることにしたいと思う。
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