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"必要な" 語学レベル

私は海外で暮らし始めて十数年になる。1年ほどの留学目的で来たが、旦那と出会って永住することになった。日本の知り合いによく聞かれる質問が、海外暮らしに必要な語学レベルは、実際のところどれぐらいなのか。
 
答えは、「人によりけり」としか言いようがない。その理由は、
地元の人との交流を望むのか。⇒ どんな交流を想像しているのか。会話の内容は浅い知識で受け答えができるものなのか、専門用語が必要な内容のものなのか。
それとも、一人で過ごすことを好むのか。
医者、業者等に、現地語で相談や問い合わせをする状況を想定するのか。
それとも、日本人医師・業者を見つけるのか。または通訳に頼ることを厭わないのか。
働く意志があるのか。
働くなら、どんな職場で働くのか。
期限付き滞在なのか。永住するのか。
その国の言葉で思い通りの意思疎通ができなくても、ストレスを感じず気楽でいられる性格なのか。
など、自分がどんな性格でどんな暮らしを想定しているのかによる、と思うから。
 
因みに、渡航した時の私の語学レベルは英検2級ぐらいだったと思う。大学は英文科を卒業し、英語関係の仕事に就いていたのに英検2級程度止まりだったのは、英語を学ぶ意味をずっと見誤っていたから〈*1〉。渡航後に半年ほど通った英語学校の授業のおかげで、1級ぐらいまで上達したように感じたが、その2、3年後には3級ぐらいまで低下してしまったような気がしている〈*2〉。

私が英語技能試験を受けたのは過去に2回のみ。大学時代に受けた英検と、移住5年後に受けた IELTS 。IELTSは筆記試験と口頭試験があるが、事情があって口頭試験しか受けなかったので、総合判定は無い〈*3〉。

英検も何級を受けたのか、合否すらも覚えていない。ただ、口頭試験の試験官が典型的な日本語訛りの英語を話す人で、そのことに対して「ネイティブのような "正しい" 発音をしない日本人に判定されるのか!?」と低劣な不満を抱いたことは覚えている。若気の至りとは言え、恥ずかしく、情けない。ネイティブのような発音に拘ることが、如何に愚かしいことかを大学時代の自分に説教してやりたい〈*4〉。
 
現在の私の語学レベルがどれぐらいなのか、はっきりとはわからない。この間、 TOEIC の過去問を試してみた。全問正解したけど、スピーキングとライティングはネットで試せないし、5技能全体の判定は今のところ不明。

私は旦那と二人暮らしで、家での会話は全て英語だが、お喋り好きの旦那が会話をほぼ独占しているので、私の話す力は伸びている気がしない。その分、聞く力が伸びているとは思うけど、旦那以外の人と話す時には言葉を聞き取れないことが多い。 TOEIC のリスニング問題で全問正解できたのは、「私に英語を聞き取る力があるから」ではなく、「ただ選択肢の中から正解を選ぶことができたから」と考えるべきだと思っている。だから、実際のところ、旦那との会話を通して鍛えられているのは、英語を聞き取る力というより、 “旦那語” を解釈する力のような気がしている。日本人同士でもある「夫婦の間柄だから通じる」というような感覚的なもの…。

ところで、旦那は社交的だが、私は大勢でいるより一人で過ごすことを好む。仕事に必要な語彙力や英語に基づく論理的思考法などは身に付いてきたとは思うが、社会の一員として生きる実践的な英語力の習得は全くできていない。
 
私以外の人達はどうか。あくまでも私が偶々見聞きしたことだけど…。
●渡航後、銀行での口座開設の手続きの際、口座の種類の説明で ”This one is more good.” とアジア系の女性行員が言うのを聞いて驚いた。正しい英文法の知識は、銀行員としての採用に必ずしも必要ではないのだと知った。

●公務員(事務職)として働く或る日本人男性。話す力は単語を並べるだけの初中級レベルらしいが、それを気にしていないのだそう。家族は日本人で、家では英語禁止だとか。もちろん、公務員の資格を取るために専門的な内容の読み書きの技能は必須とのこと。

●旦那が贔屓にしているカフェの経営者(日本人女性)が話す英語は、たどたどしいらしい。高校生の娘さんと二人暮らしだということが漸くわかったそうだ。日本の開業届・許認可申請などにあたる手続きや、税理士とのやりとりなどは、一体どうしているのだろうか…と、他人事ながら私は気になって仕方がない。私も店を持つことを淡く夢みているのだが、資金が皆無という理由より言葉の壁の方が大きく立ちはだかっている。

●「子どもをこの国で育てたいから」と、小学生の子を連れて二人で渡航してきた日本人の未亡人に偶々出会った。本人は「私の英語は英検4級レベル」と言っていた。子連れで暮らすには、住む家の手配・契約や公共料金の支払いの他に、子どもを学校に通わせる手続きや先生との連絡も英語でしなければいけないはず。その人は社交的な人だったから、日本人の友達がたくさんできて、その友達に色々助けてもらっていると聞いた。
 

「自分には、海外で暮らすのに必要なレベルの語学力があるのだろうか」と気にするよりも、知っているつもりの自分の性格を見つめ直し、暮らしたい土地に身を置く自分を想像し、その自分が何をしているのか、どんな風に暮らしているのかを場面ごとにしっかり思い描いてみることの方が、実は大切なのではないかと思う。

「細かい事は行ってから考えればいい」「行けばどうにかなる」と思って私は日本を発った。ある程度英語が話せたおかげで “どうにか ” なったが、「海外に住めば自然と英語が伸びるだろう」などと期待した私は、大馬鹿者だった。自分の非社交性を甘く見すぎていた〈*5〉。
 
とは言っても、この歳になって、無理に性格を変えてまで(=ストレスを抱えてまで)、社会に溶け込んで実践的な英語力を身につけるべきだとは、現段階では思っていない。設定した目標達成に向け、じっくり進めるつもりだ。そのための学習方法のひとつが、旦那に英語の質問をしまくること〈*6〉。それを経て、ストレスを感じずに人との交流ができるようになると計画している。



〈*1〉〈*2〉〈*3〉〈*4〉〈*5〉〈*6〉についてはまた今度書こうと思う。
 

・・・つづく。


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