Doors 第3章 〜 心の扉2
ある日,その扉の横にまた別の扉があることに気づいた.もちろん僕は迷わずその扉を開けた.中は倉庫のようで,荷物が散乱していた.そのほとんどが見たこともないよく分からないものだった.それが部屋中にゴミのように詰め込まれていた.でも僕はそのゴミが宝物のように思えた.それから僕は毎日のように倉庫に来ては埃に塗れたゴミを漁っていた.
漁っていて気づいたことがある.そのゴミたちはこの世界の真理であると.何故そこに閉じ込められているのか,何故長年放置されて埃に塗れていたのか,それは分からないが直感でこのゴミたちを再生することができたなら世界が変わると思った.このゴミは宇宙のヒントであると.興味の対象はゴミに変わった.
だから周りの友達のことなんて正直どうでもよかった.不安を飲み込めない自らの未熟さを,他人にぶつけることによって生まれる権力社会,いじめ.くだらない.愚かな道だと思った.こんな価値観を持ち合わせた子供が周りから浮かないことなんてあるはずはなく,自他ともにおかしなヤツと思っていたことだろう.けれども他人がどう思おうが自分の知ったこっちゃないと思っていたのでとくに気にならなかった.寧ろヒントに没頭できるのでありがたくもあった.
ただ,しばらくすると自分でも自分自身のことを恐れてしまうようなことが度々あった.それは,自身に備わった直感力・閃き力と運動機能も含めた学習能力の高さだった.
きっとこうだと直感で思ったことは絶対と言っていいほどあっていた.だからテストの点には困らなかった.閃き力も言わば直感力と結局のところ同義である.運動は動きを見ただけで身体が勝手に再現してくれた.友達から教わったことが簡単すぎて,すぐに襲名してしまうものだから脚光どころか冷水ばかり浴びていた.だから下手なフリをする技術を覚えた.その方がこの世界では円滑に作動する.勉強も塾に行く訳でもなく特に何もしていないのに簡単に習得できた.だから,周りが何で苦労しているのか全くもって理解できなかった.ふざけているのだと真剣に思っていたこともある.
周りが10やらないといけないところを自分はせいぜい3くらいでよかった.だからウサギのように昼寝していても最後には逆転していた.それが当たり前の感覚だった.
では,一体どうして自分は苦労しないのだろうか.その答えを求めて何度も倉庫へ向かったが,当時の僕には機械を動かすことはできなかった.その特別な能力の源のことを考えているうちに,自分の中に別の存在がいて知らない間に僕を操作しているのではないかと思うようになった.自分は一体どこにいるのか.どんな姿をしていて今何をしているのか.いつも頭の中に響く声の主が自分を動かしているのだろうか.もしかしてこの考えている自分も自分ではないかもしれない.扇風機の羽のようにそんな思考がぐるぐると回り続けていて,僕はこの見えない力の恐怖に思わず目を閉じた.