風沢氷花

シナリオライター。漫画原作者・編集者。大手アニメ会社脚本チーム所属。複数案件進行中。 【受賞歴】 note創作大賞2024ミステリー小説部門入選 「夫にナイショ」シリーズ漫画原作コンテスト受賞 インモラル×Webtoonコンテスト2作同時受賞

風沢氷花

シナリオライター。漫画原作者・編集者。大手アニメ会社脚本チーム所属。複数案件進行中。 【受賞歴】 note創作大賞2024ミステリー小説部門入選 「夫にナイショ」シリーズ漫画原作コンテスト受賞 インモラル×Webtoonコンテスト2作同時受賞

最近の記事

  • 固定された記事

「死、のち殺人」第1話

あらすじ 主人公は目覚めると別人に憑依していた。記憶はなく、自分が死んだことしか知らない。体の持ち主であるバンドマンとして徐々に生活に順応していくが、十日後に突然風俗嬢に憑依してしまう。実は主人公のような死者は別人への憑依を一定期間ごとに四回繰り返し、その間に生前の未練を晴らさなければ悪霊化して殺人を犯してしまうのだった。 主人公は自分の生前の未練が何かを探り、晴らそうとするが―― 第1話   私が自分自身のことで知っているのは、死んだことだけだ。  名前も年齢も性別も

    • note創作大賞2024授賞式から1週間、いま何してる?

      こんにちは。風沢です。 皆様が素敵な授賞式レポートを書かれていたので、私も短いながら投稿させていただきます。 (スケジュールの都合で出遅れてしまいました💦) 2024年10月25日(金)はnote創作大賞2024の授賞式に参加させていただきました。 前回のご報告の通り、ミステリー小説部門で入選させていただいての参加です! 入選作、入選した心境、授賞式の模様は下記の記事をご覧いただけると幸いです。 授賞式は大変華やかで、かけがえのない思い出になりました。 noteの皆様、

      • note創作大賞2024ミステリー小説部門で入選しました!

        こんにちは。この度、『死、のち殺人』がnote創作大賞2024ミステリー小説部門で入選しました。 52,750作品中もの応募作品の中から選んでいただけたことを光栄に思います。 それと同時に、小説全体では5作品、同部門では唯一の受賞だったこともあり、賞の重みを感じています。 ご推薦してくださった編集部様、賞に携わっておられる方々、応援してくださった皆様に心から感謝申し上げます。 入選作品はこちらです↓ 私は約4年前、コロナ禍真っ只中のときに小説を書きはじめました。 当時はラ

        • note創作大賞2024中間選考を突破しました!

          この度、「死、のち殺人」がnote創作大賞2024 ミステリー小説部門で中間選考を突破しました。 52,750作品中の305作品に選んでいただき、大変光栄です。 是非お読みいただけると嬉しいです!

        • 固定された記事

        「死、のち殺人」第1話

          「死、のち殺人」第12話

           私は西水谷中学校の社会科の教師で、地理部の顧問だった。  休職明けの私は、人手不足を理由に担任を任され、地理部の顧問まで継続させられた。当時の私は家庭と仕事の両立に精一杯で、休職前のように熱心に生徒と向き合う余裕がなかった。  そんなときに、地理部の遠原さり香から相談を受けた。 「紗来ちゃんが優乃ちゃんをいじめています」  紗来とは札幌で出会ったあの女子高生の紗来。そして、優乃は私の腹違いの妹だ。優乃が中学に上がってから両親が再婚したから、同じ中学校にいた。  顧問でありな

          「死、のち殺人」第12話

          「死、のち殺人」第11話

           十日目の朝はよく晴れていた。入道雲が夏の到来を感じさせる。今日は夏休み前最後の登校日。多くの学生にとっては明日から人生の夏休みなのに、私だけは明日から永遠の夏休みが始まる。下手したら地獄行きかもしれない。  極限まで追い込まれているはずなのに、心はやけに凪いでいる。それはきっと、夜中にきた鈴木萌桃からのメッセージのおかげだろう。 『返信できなくてごめん。生きてるよ』  その一言だけで、破裂しそうなほど膨らんでいた不安が一気に萎んだ。彼女が生きているということは即ち、凛花も無

          「死、のち殺人」第11話

          「死、のち殺人」第10話 

           精神的疲労が限界を超え、帰りの電車で泥のように眠った。  あのときの私は、末永の提案に肌が粟立ち、反射的に平手打ちを食らわせて全速力で逃げた。柚木優乃の足は思いの外速く、なんとかまくことができた。しかし、走り終わった後の体力の消耗はすさまじく、ふらふらになってしまった。  それにしても、恋人の報復をしようとした相手をデートに誘うなんて常軌を逸している。サイコパスなのではないかと疑ったが、自分の一番大切な人間が死んでしまったとしたら、普通の人間でも壊れてしまうのかもしれない。

          「死、のち殺人」第10話 

          「死、のち殺人」第9話

           まぶたの裏に鮮血の残像が映る。目の前で血を吐いた女性。お腹の子に憑依した夫に殺された女性。思い出しただけで胸が引き裂かれるような痛烈な痛みが走る。微電流を流されたように全身が痺れている。嗅いでもいない血生臭さが鼻腔の奥を刺激する。暑い。息が苦しい。鼓動に胸を殴られる。あえぐように息を吸うと過呼吸が悪化した。苦しい。まぶたを開けても闇が広がっている。全身が何かに圧迫されている。汗で湿った肌にそれが吸いついている。  やみくもに手足を動かすと、ばさ、ばさ、と布が擦れる音が鳴った

          「死、のち殺人」第9話

          「死、のち殺人」第8話 

           帰宅すると、状況報告のために早速ロクへ電話した。昼間だから出ないかと思ったが、すぐにつながった。 「突然どうしました? こんな時間に」 「忙しかったらすみません」 「ちょうど昼休み終了三分前なのでお気にせず」  皮肉めいた回答だが、三分しかないのなら腹を立てる余裕もない。 「参加者のめどが立ちました」 「おお、何人ですか?」  人数の目途は立っていない。返答に悩んだが、計画性のなさを露呈しないように留意した。 「……開催日によって変動します。ロクさんには必ず参加してもらいた

          「死、のち殺人」第8話 

          「死、のち殺人」第7話

           それから数日間を地獄の底のようにいるような心地で過ごした。  鈴木桃花の安否は不明。生前の未練は想定不能。毎日届くDMはいたずらばかり。数人だけ憑依者らしき人からDMが届いたが、どの人からもWeb会議への参加は断られ、音信不通になってしまった。それ以外に目ぼしい手掛かりは何ひとつ見つからない。  気は塞ぎ、食は細くなり、体は信じがたいほどに怠い。辛酸を嘗めるとはこういう状態のことをいうのだろう。このままだと鬱になって悪霊化の前に自殺しかねないため、やむなく一度外に出ることに

          「死、のち殺人」第7話

          「死、のち殺人」第6話

           あえぐように息を吸った。呼吸は荒く、拍動は乱れ、全身が小刻みに震えている。  カッと目を見開くと、シーリングライトの眩しい光に瞳を犯された。カバーの中には虫の死骸が星のように点在している。 「助けて!」  咄嗟に叫んで気付いた。声が男性だ。  飛び起きると見知らぬ部屋だった。白い正方形の部屋の真ん中に、シングルベッドが一つ。あとは何もない。悪霊化した草心はおらず、静寂に包まれている。  三人目に憑依したのだ。それに気付いた途端、全身の力が霧散して腑抜けた状態になり、安堵のた

          「死、のち殺人」第6話

          「死、のち殺人」第5話

           草心は私と外で会えることを喜んでくれた。行先を話し合う時間は嘘みたいに楽しかった。彼が時々思い詰めたような表情をするのは気がかりだったが、浮足立った気持ちが負の感情を相殺した。  彼との約束は日常生活を明るい色に染め上げた。育児の辛さよりも、凛花と過ごせる幸せを強く感じるようになった。 「ママ、だいすき」  凛花は毎日、私に愛情表現をしてくれる。こんなに愛おしい子がいるのに育児の苦悩ばかりに目を向けていた自分が恥ずかしい。 「私も凛花が大好きだよ」  それは紛れもない本心だ

          「死、のち殺人」第5話

          「死、のち殺人」第4話

           夜間託児所は雑居ビルの二階にあった。押しつぶされそうな心をなんとか奮い立たせ、階段を上る。  錆びた鉄の匂いがする無機質な扉を開けると、子どもの泣き声が鼓膜に刺さった。 「鈴木です。すみません、遅くなって……」 「随分と遅かったですね。凛花ちゃんが最後です」  女性の保育士はちくりと刺すように言った。あくびを嚙み殺しているように見える。接客業とはいえ、彼女がそういう反応を示すのは仕方がないだろう。  剣吞な雰囲気を割くように、凛花がこちらに駆け寄ってきた。 「ママぁ」  そ

          「死、のち殺人」第4話

          「死、のち殺人」第3話

           まぶたを開くと、隣で寝ている吉永の背中が太った中年男性に見えた。  夢と現実の狭間にいるのかもしれないと考えて強く目をこすったが、状況は変わらない。焦って飛び起きると、部屋すら違うことに気付いた。  セミダブルベッドの足先には、段差を隔てて洗い場と浴槽がある。洗い場は一般家庭のそれよりも広く、ビニール製の巨大なマットが敷いてある。異様な光景だ。浴槽のお湯にも大量の泡が浮かんでいる。  そして浴室とベッドの間に仕切りがないせいか、湿気が肌に纏わりついて気持ち悪い。部屋全体には

          「死、のち殺人」第3話

          「死、のち殺人」第2話 

           夕方に家に着き、シャワーも浴びずにベッドに雪崩れ込んだ。疲労感に溺れてすぐに意識を手放すと、次に目覚めたのは翌朝十時だった。確か今日は昼過ぎからバンドの打ち合わせ、十八時からバイトの遅番があるため、急いでシャワーを浴びて家を飛び出した。  電車に乗って一息つくと、脳内でメンバーの情報を整理した。まず、所属しているバンド名は『今日シ』。『人は今日死ぬかもしれないから今を精一杯生きたい』という思いが込められているらしいが、字面だけ見るとセンスのかけらもない。メンバーは三人で、ギ

          「死、のち殺人」第2話 

          プロの方からお墨付きをいただきました

          私の青春小説の企画書を著名な作家様や編集者様がレビューしてくださいました! 「狙うのであれば芥川賞」「新人賞できたら、審査は必ず通すと思います」などのありがたいお言葉をいただけたので読んでいただけると嬉しいです。 この企画を小説として世に出すことが目標です。 目次:企画書④

          プロの方からお墨付きをいただきました