部屋の中に潜む者②
この話は前回の『部屋の中に潜む者①』と繋がっています。
まだご覧になっていない方はこちらを先にお読みください。
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その後もしばらくおかしな出来事が続きました。
何度も夜中に前触れもなく目が覚めることが多かったのです。
ですが、家族でもない『何か』を見たことはあの日以来ありませんでした。
そして、小学校に上がると次第に夜中に起きることもなくなっていきました。
もう大丈夫だろう、そう思ったある日のことでした。
また夜中に突然目が覚めたのです。
久しぶりの感覚。
言葉に表せない、恐怖と関心が入り混じったような感情が胸の奥から湧き立ちました。
当時、まだ私は和室で両親と寝ていました。
「サー、サー」
寝ている私の頭上はリビングと繋がっており、そこから奇妙な音が聞こえてきました。布のような何かがフローリングを擦るような、あまり聞き慣れない音でした。
段々とその音が私の頭に近づいてきて、大きくなっていきました。その気味の悪い音が消え、私の頭のすぐ側にそれがいる気配を感じました。その直後、寝ている私と父の間を痩せ細った足が通り抜けていくのを見てしまったのです。
私は恐怖のあまり横向きに寝たまま体が強張ってしまい、その足の主が誰のものか調べることはできませんでした。ただ唯一分かるのは、人間の生気というものを感じられなかったということだけです。
言葉では言い表わし辛いですが、人のようで人ではない『人の形をした何か』だったのです。
私はその足一本しか見ることができず、最終的にどこに歩いていったのかは分かりません。ですが、少し大きめの男性のような足だったことは覚えています。
人が歩く時、体重の重みで床が軋んだり振動が起きるものです。その足は振動のひとつすら感じず、歩いているような動きはあったものの体重が全て抜け落ちたような異質な感覚は、今でも忘れられません。
また変なものを見てしまった……
次の朝は何とか忘れようと普段通りの生活をしていました。
しかし、これはまだ始まりに過ぎなかったのです。
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