故郷は地球
1963年6月16日、ソ連の宇宙飛行士クレンチナ・テレシコワは有人宇宙船ボストーク6号に搭乗し、地球を48周するミッションを達成、人類初の女性宇宙飛行士として讃えられました。
彼女が発した言葉『ヤー・チャイカ!』
は「私はカモメ」と訳され、長く人々の記憶に残ることになりました。
しかし、テレシコワさんは、初めて宇宙を飛んだ女性ではなく、
初めて宇宙から帰ってきた女性だという説があります。
1961年2月17日、ソビエトのバイコヌール基地から発射されたロケットには、男女それぞれ1名の飛行士が搭乗していました。
2人の乗ったカプセルは7昼夜にわたって予定のコースを飛び、彼らはその模様を基地に送信し続けました。
しかし、2月24日の夕刻に地球に届いた送信が、彼らの最後の言葉になりました。
男性の声が、
「我々はダイヤルを読むことができるが、しかしシグナルは明瞭でなく、なにも見えない」
それから5秒ほどの沈黙が続き、突如女の声が聞こえました。
「私はこのようにして、右手でしっかり支えていましょう!このようにして、私たちははじめて平衡を保つことができます。
のぞき窓をのぞいてごらんなさい!のぞき窓をのぞいてごらんなさい!私は…」
数秒後に男の声が叫びます。
「ここに、ここになにかがある!ここになにかがある!むずかしい…」
数秒の後に彼は再び続けます。
「もし我々が脱出できなくとも、世界はなにも聞くことはあるまい。むずかしい…」
これを最後に、地上は二度と2人の声を聞くことはなかったといいます。
おなじみのフランク・エドワーズが1964年に書いた STRANG WORLD 邦題「世にも不思議な物語」に収録されている逸話です。
これがはたして事実なのか?
私は他の情報を持ちません。
しかし、1966年に放映された「ウルトラマン」の第23話、「故郷は地球」において、他の惑星に到着後に地球から見捨てられて怪獣化し、復讐のために地球の国際会議を妨害しようとしたジャミラとは、この2人のうちどちらかではなかったか?とさえ思います。
ちなみに、「私はカモメ」は、ウルトラマンに先立つ「ウルトラQ」(1966年)の放送第10話「地底超特急西へ」のエピソード中で、宇宙空間に飛び出した人工生命M1号が同じセリフを喋ります。
浜ちゃんじゃないよ。
実はソ連の宇宙飛行士にはすべて固有のコールサインが設定されており、テレシコワさんのそれがチャイカ(かもめ)だったのです。
『私はカモメ』というのは、チェーホフの戯曲「かもめ」の中の同じセリフになぞらえた日本人の意訳で、
テレシコワさんは基地からの通信に対し、事務的に『こちらチャイカ』と返答していただけという、あまりロマンのないエピソードで、
M1号も(なんでこんなセリフいわされてんだろう?)と思ったかもしれません。