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Photo by
nao_nyao
カナリヤ
ふと
感じた
それは
かすかにあたたかく
やわらかな小さな小さな風だった
頰をふわりとなでていってしまった
追いかけたかったけど
探しに行きたかったけど
わたしはそのまま
そこにたたずんだ
切なくて
甘酸っぱくて
それでいて
とてもなつかしかった
家につくと真っ先にハイボールをつくって
ぐびぐび飲み干していた
それが わたしのルーティン
それが わたしの毎日のご褒美
それが わたしの癒し
それが わたしの一日の締めくくり
それが わたしの頑張った証
それが わたしそのもの
だった
歌を忘れたカナリヤ
っていう歌があったなあ
歌詞も知らないし
歌詞の意味もよく知らない
違う意味かもしれないけど
今のわたしは歌を忘れたカナリヤみたい
どんな気持ちで
どんなふうにして
どんな表情で
どんなわたしで
飲んでいいかわからなくなってしまった
大好きなひととすごすときは
いつもそこに美味しいお酒があった
自然に笑顔がこぼれ
たのしくて
やさしくて
あたたかくて
おだやかで
しあわせな時間だった
それが
わたしそのものだった
完全に
迷子になってしまった
歌を忘れたカナリヤのように
またいつか思い出したい
あのときの
いや
今までの
無邪気で
はしゃいで
お酒が大好きだったわたしを
新しい扉が
勢いよくばーんと開く日を
わたしは待っている