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カナリヤ


ふと
感じた
それは
かすかにあたたかく
やわらかな小さな小さな風だった
頰をふわりとなでていってしまった
追いかけたかったけど
探しに行きたかったけど
わたしはそのまま
そこにたたずんだ
切なくて
甘酸っぱくて
それでいて
とてもなつかしかった

家につくと真っ先にハイボールをつくって
ぐびぐび飲み干していた
それが わたしのルーティン
それが わたしの毎日のご褒美
それが わたしの癒し
それが わたしの一日の締めくくり
それが わたしの頑張った証
それが わたしそのもの
だった

歌を忘れたカナリヤ
っていう歌があったなあ

歌詞も知らないし
歌詞の意味もよく知らない
違う意味かもしれないけど
今のわたしは歌を忘れたカナリヤみたい

どんな気持ちで
どんなふうにして
どんな表情で
どんなわたしで
飲んでいいかわからなくなってしまった

大好きなひととすごすときは
いつもそこに美味しいお酒があった
自然に笑顔がこぼれ
たのしくて
やさしくて
あたたかくて
おだやかで
しあわせな時間だった
それが
わたしそのものだった

完全に
迷子になってしまった

歌を忘れたカナリヤのように
またいつか思い出したい
あのときの
いや
今までの
無邪気で
はしゃいで
お酒が大好きだったわたしを

新しい扉が
勢いよくばーんと開く日を
わたしは待っている





















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