昼にCDを買い、そのCDで曲を作り、夜にライブ! トラックメイクの実力を試せるイベント『Extream Remix』
1/15に野田magayuraでExtream Remix 4が開催された。今までのこのイベントの担当はTakaaki izumiさんでしたが、都合により今回から僕が担当となった。
といっても僕の作曲方法って9割打ち込みで、1割程しかサンプリング要素が無いのだが、この日以上に「サンプリングで原曲を思いっきり遊んで良い」という日はなかなか作れないので、僕はこのイベントがめちゃくちゃ好きだった。
しっかりとイベントを受け持ち、企画を進行する事にした。
イベントのザックリとした概要だが、梅田のディスクユニオンで、くじ引きで引いたジャンルのCDを購入し、そのCD達を使って、イベントの19時までに楽曲を仕上げて披露するといったイベントだ。
12時に梅田でCDを買い、そこから13時頃からの開始なので、ザックリ6時間で25分のセットを作るのだ。
クオリティーを取るか、曲数を取るか、そもそも25分に到達する事が出来るのか?
感の良い方ならお気づきだと思うが、このイベント、かなりキツイ。
過去に何度か出演してくださった方々は「次は出たくないな…」と言ってしまうようなイベントである為、4回目を迎えてこのイベント=『苦行』になってしまっているのを恐れ、当日までになるべくプラスのイメージを振りまいた。
そして当日、DatHis.さんが体調不良の為、欠席ではありましたが、僕とYAVZ.COMさんで梅田のディスクユニオンに集まりました。
1.おみくじを引く
まずは買うCDのジャンルを決めるおみくじをする。おみくじ『玄人ルーレット」の内容は以下のとおりである。
抽選の結果は以下のとおりである。
ODAGAWA SHION
・古楽
・演歌
・EDM
YAVZ.COM
・オルタナ
・テクノ
・クラシック
経験上感じた重要な点は
「スネアやキックを綺麗に抜けたり、優秀なループが存在するか」
◎R&B ×古楽
「BPMが一定で使いやすい物か」
◎テクノ ×クラシック
「知っている曲を購入できるジャンルであるか」
◎自分の知っているジャンル ×イメージが付かないジャンル
の三点である。くじを引いた瞬間、終わったなと僕は思いました。
2.ディグりに行く
1人予算1000円。作りたい物と相性の良い物、個人的に内容を知っている物…戦略を張り巡らせて購入しに行く。
ODAGAWA SHION 3枚
黒い丸に「S」の紋章はEDMに違いないと思い選択。BooyahやAnimalsといったEDMをあまり触れてない人でもフレーズを聞けば、「あぁ、あれね」となる楽曲がMIXされて収録している。
演歌は購入する人が一定数いるのか、どれも値段がそれなりにする印象。水前寺清子の選曲集を購入できたのでこちらでトライ。EDMと同様、あまり触れていないジャンルではあるが「三百六十五歩のマーチ」は、ウリナリの南原パンツ郎で馴染みがあった。
古楽で購入したバッハを演奏するグレン・グールドのCDは全く知らずに購入。前回がフルオーケストラの交響曲だったので、今回はピアノオンリーで挑戦。聴いてみてからのお楽しみというやつだ。
問題点はどれもキッチリとしたテンポが定まっていない曲が多いという事だ。EDMは定まっているが、YAMATOのDJプレイのMIX CDの為、テンポが少し変動する。
YAVZ.COM 4枚
こちらは4枚でトライ。テクノでケミカルブラザーズ、オルタナでhideを選択し、クラシックはビッグネームを掲げた2枚で挑戦。
テクノを引き、そこでケミカルのベストを手に入れたのは大きい。そして聴いていたかもしれないというhideを選択。ケミカルブラザーズは僕自身あまり聴いてはいないが、落ち着きつつカッコいいテクノのイメージがあるので、扱いやすいフレーズが抜き取れそうな印象。
お互い古楽、クラシックという上級アイテムを入手している。
恐らくEDMやテクノで基盤のリズムを固め、上物をその他で固める布陣であろう。その事を考えるとお互いの引きとチョイスは良いバランスだと改めて気づく。EDM、エレクトロ、ダブステップとかだと相当キツイと思うし。
3.制作開始
電車で野田マガユラに戻り、セブンイレブンで糖分や塩分を確保し、制作開始。相当エネルギーを使う事は確かなので、空腹では不可能。
ひたすら無言でDAWと向き合う。表情は言い表すと「棋士」というと伝わるだろうか。僕の場合ではあるが、作っては書き出し、作っては書き出し、最後にそれらを全てくっつけてライブセットを完成させるスタイルだ。
しかしここで水前寺清子が牙を剥く。EDMと融合させても水前寺清子が圧勝する事態が発生。そこで戦略はEDMをメインにすることをやめ、EDMを駆使して水前寺清子を担ぎ、グレン・グールドで援護射撃する作戦へ出ることにした。
EDMで一生懸命基盤を作り、水前寺清子をぶちかます作業をひたすら続ける。やはりEDM。勢いはバッチリでしっかり組めるし、演歌のエグみのある世界観がカオスにマッチしてくれる。やはりExtream Remixはこうでなくては…と制作時に思った。
EDMは非常にシンプルで大まかな流れを説明すると
序盤の控えめなズンズン→ビルドアップ→本ネタ
の3ステップであった。なので全部を聴かなくても大体の流れがつかめる。その代わりに分かりやすく単調である。MIX CDなので尺も1~2分程なので、よりその要素が際立った。でもまぁこういうイベントの時は有利だと思う。
古楽に関してはまぁテンポを合わせるというよりかは、適当に良い感じの所でカットし、ループしポリリズムを作成し、合わせてみて心地よかったら採用する形で進めた。切り貼りする際、Ctrl+Alt+ドラッグで波形を動かせるので、その機能を駆使してフレーズ選びやタイミングの調整などを行った。
ローが弱い音源なので、相手がEDMなら適当に配置してもそれなりの心地よさを生み出してくれる。仮にこれがテクノみたいな硬派なトラックの場合はもう少し慎重に組む必要性があると思う。
こうして14時から19時にかけて約5時間の制作を終え、クリアラインの25分を目指す。毎回このクリアラインが絶妙な難易度で、届く者もいれば全く届かない人もいる。今回は双方20分台とバッチリな仕上がりであった。
4.お披露目
ODAGAWA SHION
1.三百六十五日のブーヤ
ブーヤのあのフレーズを使いながら、三百六十五日のテーマのフレーズを演奏するという乱曲。ワンツ!や歌詞など使いやすい印象。しかし何を融合してもブーヤにしかならない。
途中「ちん〇」と言わせて遊びました。
最後はブーヤのビルドアップ後、テンポを52→8に落として終了。地獄。古楽もあっさりふりかけ。
2.男は泣いてはならぬ
個人的にお気に入り。三味線のフレーズが生きた楽曲。途中のピアノパートも不気味で良い感じ。途中からトラック全体を+4にトランポーズし、Bメロを作成。こぶしもしっかり効いてて最高。
3.わくわくボーナス
ポンチャックのような軽快なトラックを作成。EDMのキックやスネアっぽい何かを分解し、ドラムを作成。あとは演歌でゴリ押し。
シンセのコロコロしたベルのフレーズ素材が非常に良かった。
4.逃げんなよ
熱い楽曲。演歌のフレンチ感あるブラスのフレーズを上手く使いたかったが、これはまぁこれでアリかなぁ…。めちゃくちゃ不気味だし。逃げんなよからの勢いも熱くて最高。
5.日本人だね
「日本人だね演歌だね」というパンチの聴いた楽曲があったので、それをチョップド・アンド・スクリュードでかなり低くし、ヴェイパーウェーブ化。ライブでなかなかこのジャンルはしないので見せ方に一苦労。聴いている側からしたら、不気味以外なにもんでも無いが、僕は大満足。
ピアノも良い感じ。
6.捨て身
そのまま。トランポーズで半音下げしたフレーズを丁寧に並べた。
7.タンバリン
EDMのリバースシンバルと水前寺清子のフレーズを合体させた作品。ぶっちゃけ制作時に書き出したデータをそのまま間違えて1本WAVに入れてしまった作品。面白いからよし。
8.屈辱
ピアノフレーズが8個のエフェクターによって崩壊していく楽曲。滅茶苦茶にされた人の末路をイメージしました。最後は心の叫びです。
9.Tambourinng
壮大な楽曲が欲しいと思い制作。タンバリンの素材の帰属先はこの曲です。演歌とEDMを8小節交互に回してます。
何を伝えたいかは不明。でも好き。
10.アクセス乙女心
今回のリード曲。一番演歌とEDMがキレイに融合した作品なのかもしれない。途中の不安定なバックの不思議な音は、鍵盤のフレーズを超高速早回しし、半音ずつ鍵盤にアサインし、MIDIで散りばめた音。
途中から演歌の歌詞と間奏が入るが、これが絶妙にマッチして良かった。急いで作ったので、色々雑な部分はあるが、それもまた勢いがあって良き。
11.月月月月月月月月!!
最後はBPMも勢いもガン攻めのエレクトロで勝負。これも非常にお気に入り。笛の音や、鼓っぽい音が非常に良い。バックの三味線も永遠にアルペジオがループしていてカッコいい。
ジャパニーズスタイルのガン攻めエレクトロといった所。
合計11曲。
YAVZ.COM
なんといってもクラシックの使い方の上手さであろう。序盤から聴いていて心地よいループを展開した。
そこからギターのワンポイント(ケミカル??)が入り、Extream Remixらしいトラックに。パッドでのライブプレイングも入り、より楽曲の面白さが増していく。
テクノらしい攻撃力もトラックから感じ取ることが出来、5時間で作ったとは思えない、ロックHIP HOPらしい楽曲を仕上げてきた。ケミカルブラザーズのサイレン音が非常に優秀で、楽曲にいくつか登場する。このリフレインも心地よい。
ベートーベンの運命の使い方もセンスが非常に光っていた。大ネタである分、扱い方が上手いので最高である。FPMが過去に「REMIXは大ネタであればあるほど燃える」と言っていたが、それをまるで体現したかのような良いトラックである。
まさかクラシックをメインに攻めてくるとは…。5時間という制限時間の中で冷静に拾ってくるあたり…玄人!!
あと聞いていて気づいたことは「クラシックは独特なフレーズの宝庫」でもある。楽曲だけではなく、楽譜のキレイさも芸術だったので、現代ではなかなか遭遇しないメロに出会える。
そして最後のhide VS ケミカルブラザーズの張り合いも非常に見どころだ。
3つのジャンルがしっかり共生して新しいジャンルを生み出してしまうのではないか?と思わされる不思議かつ、洗練された作品だ。正しくExtream Remixのお手本的作品と言えるであろう。
5.総評
初めてリーダーとして受け持ち、時期も時期であり、2人での開催となったExtream Remix。YAVZ.COMさんもキツかったと仰っていたが、また挑戦したいというお声を頂けて非常に嬉しかった。
良くも悪くもExtream Remix=苦行というイメージが付いてしまっていたので、少しずつそれがクセになる人が一人でも増えて、挑戦したいと思えるようなイベントに出来たらなと思っております。
ルール改正については、
・ワイルドカードの廃止
・クジのダブり可
・同じネタの使用禁止から露骨な再利用の禁止
の点は非常に良かったと思う。まぁ今後も何回か開いてみて調整していけたらなと思います。そして今後からは
・引いたクジのCDは必ず購入する
・予算の無制限化(大体1,000円にするみたいな)
を導入してみようと思う。やはり演歌やクラシックだと100円コーナーが少なく、そんなに厳しく1,000円に縛る必要性はないかなぁと感じました。単純に欲しいCD買った方が、店側も買う側もお得でありますし。
そして前までは「EDMを1枚だけ購入して、それだけで購入パートは終了」という戦略も可能であったが、それも廃止。やはり謎の融合が今回面白かったので、必ず引いたクジのCDを購入する事をルールに追加しようと思う。
あと意見があったのは「ディスクユニオンではなく、ハードオフにした方が選択肢が多いのではないか?」という点もあり、確かになぁと思いましたが、利便性や時間の都合上、ディスクユニオンのまま、もう少し様子見していこうと思います。CDのラインナップが強く、ジャンル別でも見やすいハードオフ情報待ってます。
6.次回エントリー募集中!
という訳で引き続き、定期開催していきたいと思います!次回のエントリーは2/13(日)です!参加してみたい方はコメント欄、またはTwitterのDMなどからよろしくお願い致します~。
共にマガユラを盛り挙げてまいりましょう!!
ODAGAWA SHION CD売ってます!何卒よろしくお願い致します!
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