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小田川クソ小説 第4話 「ウィンターマジック」

 マッチングアプリで女の子と出会い、バーでデートした所、思いの他、話が盛り上がり付き合う事になった。
 
 彼女が出来たことなんて、高校生以来だから凄くテンションが上がった。運転が苦手だからドライブデートがしたいと言っていたので、週末にレンタカーを借りる事にした。

 デート当日、レンタカー屋に一緒に行き、二人で練習するので軽で十分と思い、借りようとした瞬間、「私この車が良いな」と指を差してきた。

 マツダのロードスター(オープンカー)だった。

 季節は冬なので、それはやめようと言ったが、彼女は一目見て凄くときめいたのだろうか。頑なに譲らなかった。でもまぁせっかくの初デートなので特別な車に乗るのもアリだなと思い、ロードスターを借りた。

 車でしか行けない場所を運転しながら、僕は彼女に運転を易しく教えた。オープンカーなので少し恥ずかしかったが、開放感があり、遊園地の乗り物みたいで二人とも凄くテンションが上がった。

 「次の交差点を左に行くと、美味しい韓国料理の店があるから、そこで夜食べよっか」と言うと「うん!!」と言いながらハンドルを右に切った。右に切ったせいで金沢行きの高速に乗ってしまった。
 
 一瞬何が起こったのか分からなかった。きっと焦ってハンドルを切る方向を間違えちゃったんだ。幸いゲートはまだ通ってないので「路肩に止めて係の人に誘導してもらおう」と言うと「うん!!」と言ってETCの門をくぐった。

 「…どこに行くつもり?」と僕は聞いた。
 「もっと遠くへ一緒に行きたいな。」と返ってきた。
 
 話を聞くと、彼女が行った教習所では高速教習は実習ではなく、バーチャル教習だったので一度乗って練習してみたかったらしい。
 僕は焦ったが、彼女に一緒にいたいと言われて嬉しかったし、こんな奇想天外な子と一緒になれたら、毎日が絶対楽しくなるに違いないと思った。

 僕は「それじゃあ行ってみようか」と言った。

 夜で気温は0℃で、オープンカーで時速100㎞を出しながら高速の風声を全身に浴びながら走った。体感温度はおそらく‐10℃ぐらいだろうか。出口をどんどん通過していく。降りようと何度言っても反応が無く、彼女はヘラヘラしながらどんどん日本海側へと出て行った。

 雪も降ってきた。全身に大量の雪が僕に襲い掛かってきた。流石にいい加減にしろ!と声上げようとしたとき、

 「きゃー!雪!綺麗!!私こんなにたくさんの雪を見たことないんだ!!」

 そういえば言ってたな。出身鹿児島だって。そうか、雪が見たかったんだね。なら凄く良かった。

 「私、寂しかったんだ。一緒についてきてくれてありがとう」

 その声を聞いた時には僕の身体は全身雪だるまになっていた。気が付いたら寒さで眠気が襲い、気を失った。

 
 …


  …目が覚めると僕は毛布を掛けられて寝ていた。なんて優しい子なんだ。

 コンコン

 ノックの音がした。扉を開けると見知らぬオッサンが立っていた。

 「いつまで寝とんじゃあああ!マグロ漁早く手伝えボケェ!!」

 地面が波打っていた。ドアを開けて見渡すと、見渡す限り日本海だった。

 売り飛ばされた。

 僕は2年間、地に足を付ける事が出来なかった。

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