夢を買いに
マシュマロ課題「家を出てお店に行って帰って来る」
今日は寒いから、上着を羽織って家を出る。
夢を買いに行くのだ。
店に入ると、ぐわーんと店内が広がって見える。
それはいつも高い所にある。
欲しい夢を探して、頭を巡らせる。
視線を走らせるが、何故だろう。視界がぼやける。
そうだ、いつもここで見失うのだ。
よく目を凝らして見るが、突然視力が落ちたようにピントが合わなくなる。
目が疲れた気がして、視線を外し、ふと足元を見ると、下にも夢が置かれていて、それはよく見える。
子供じみた夢。
案の定、見知らぬ子供がそれを眺めて、一緒に来た親らしき大人に欲しいとねだっている。
もう子供じゃないよ。
でもはっきりと見える夢は、足下の夢だけだ。
もしかすると、この夢を買って叶えれば、その上の夢が買えるのだろうか?
子供の頃は親は夢なんて否定し続けた。
夢を語ると言葉こそ出さないが、夢を語る自分を笑っていた。
生きていくため、子供の自分を養うため、夢なんていらなかったんだろう。
そういう時代だった。
でも自分は夢が欲しかった。
大人になったら手に入れるのだと思っていた。
けれど、何度店に訪れても視界がぼやけ、何の夢が欲しかったのかわからなくなる。
仕方ない。
足下の夢を拾い上げる。
そしてレジに向かって歩き出して、あっと気づいた。
夢を買うにはコインが必要だ。
専用の。
ポケットをまさぐっても入ってない。
家を出る時確認して来なかったのだ。
ため息をついて夢を戻す。
出直しだ。
店を出て家に戻る。
玄関のドアを開けると、目が覚めた。
これが昨日買った夢の結末か。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?