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「ステレオタイプ」が正しかったことって一度も無いよね。

こんにちは、カザバヤシです。

最近NARUTOを観ていてイタチっていうキャラクターが「人は皆思い込みの中で生きている」って言っていたことから色々考えさせられたので、もっと掘り下げて僕たちの毎日に落とし込んでみたらどうなるんだろうねって話です。

文脈はとりあえず無視して、実は「思い込み」って結構危なくって
何が危険かと言うとそれが「偏見だ」とか「思い込みである」といったことに気づかず受け入れてしまっているせいで、不正確な意思決定に導かれちゃっているんだよってところですね。

例えば、「星が綺麗なのはなぜ?」って問いに対して「空気が澄んでいるから」とか最もらしくそれでいて不正確なステレオタイプだったり。
朝はパンとコーヒーってイメージがあったり、コインを投げたら表と裏が出るのは、どっちも50%ずつの確率、とかね。

子供の頃から、そう教わってきたし、何となくそんな気がしますよね。
僕もずっとそう思っていました。でも、世の中には「それ、本当にそうなの?」って、当たり前を疑う、ちょっと変わった人たちがいるんです。

最近、そんな「当たり前」に「ちょっと待った!」をかけた研究が発表されましてこれが結構面白かったので、「思い込みの中で生きている」皆さんの視座を少し高めてみようと思います

それが、František Bartošさんたち、総勢49人がかりで行った、コイン投げの大実験、「Fair coins tend to land on the same side they started: Evidence from 350,757 flips」です。

タイトルから度肝抜いてくるものでして、たしかイグノーベル賞受賞したんですよね。日本語訳すると「公平なコインが、最初に上を向いてた面で着地しやすい…? しかも、証拠は35万回以上のコイントスから…?」みたいな感じです。

彼らは、世界中のいろんなコイン、46種類も使って、じつに350,757回もコインを投げ続けました。

で、結果として
投げ始める際に向いていた面で着地する確率が、50.8%だったんです。
つまり、最初に表が上なら、50.8%の確率で表が出るということ。

たった0.8%の違いって確かに、普段の生活で気にする場面なんて、そうそうないんですが。

でも、この研究のスゴイところは、
確率が50%からちょっぴりずれているってこと自体よりも、「コイン投げは完全にフィフティ・フィフティ」っていう、僕らの「常識」が、実はそうでもなかった、ってことを突き止めた点なんですよね。

この研究の裏には、実は何十年も前からあった、コイン投げの動きを研究してきた人たちの歴史がありまして。
1980年代には、Joseph B. Kellerさんが、コインの投げ方で結果が変わるかも、なんてことを言い出したり。
2007年には、Persi Diaconisさんたちが、もっと精度の高い計算で、やっぱり開始時の面が上に来やすいかも(約51%)、という結果を出し、しかもマジシャンに手伝ってもらって実験までしてエビデンス出してきてるんです。

これは回転しているコインの軸が、フラフラと円を描くように動く「歳差運動」のせいらしい、なんて言ってしまえばコイン投げもなかなかどうして奥が深いなぁって感じたり。

でも、これまでの研究は、あくまで理論上の話だったり、特別な環境で、プロが投げた場合の結果だったりしたんです。
今回の論文が新しいのは、その辺にいる僕らみたいな言ってしまえば普通の人たちが、普通にコインを投げても、やっぱりちょっとだけ偏りがある、ってことを、これでもか!っていうくらいの数のデータで示しちゃったところなんですよ。

もうひとつこの論文の信憑性をさらに高めてくれるのが、これがベイズ推定だってところですね。
ベイズ推定っていうのは、ざっくり言うと、最初に「これくらいかな?」っていう予想(事前分布)を立てて、そこに新しいデータ(この論文では35万回のコイン投げの結果)を加えて、その予想を修正していく(事後分布)っていう、統計学の考え方です。

この論文では、まさにこのベイズ推定が使われてたんです。
研究者たちは、まず「コイン投げは50%」っていう常識を、最初の予想として立てるわけです。
そこに、35万回を超える実験データを加えることで、「いや、実は50.8%ぐらいで、開始時の面が上に来やすいぞ」っていう、新しい予想にたどり着いた。
つまり、この大量のデータによって、僕らの「常識」が、より現実に近い形にアップデートされた、って考えることができるじゃないですか。

ベイズ推定の良いところは、最初に予想を立てるところ。
この予想があるおかげで、データが少なくても、ある程度は推測ができて。
そして、データが増えるたびに予想を更新できるので、どんどん精度が上がいく…ってところですね。
この論文みたいに、大量のデータを組み合わせれば、その結果はかなり信頼できるものになります。

「だから何?」って言われれば、それまでかもしれないですし
明日から、コイン投げで一攫千金!なんてことには、まぁまずならないんですが。。
でも、今まで「当たり前」だと思ってたことが、実はそうじゃないかもしれなかったり、結局「思い込みのなかで生きている」この世では、
まだまだ僕らは見えていない小さな数字に行動とか考え方までも左右されていると思うとちょっと楽しくなりますよね。

このコイン投げの研究が示唆するのは「小さな疑問を大切にしよう」っていうところもわずかにあるような気がしていて。
別に、難しい数式を理解したり、何万回もコインを投げたりする必要はないんですが。
ただ、普段の生活の中で、「あれ、これってなんでだろう?」って思ったことを、ちょっとだけ深掘りしてみる。それだけで、今まで見えなかったものが見えてきたり、新しい発見があったりするかもしれません。

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ってことで、また次回の記事にてよろしくお願いいたします。


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