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ロティチャナイ

深雪はグループ会社のカフェテリアにいた。
ここのロティチャナイが大好きで、朝の時間帯にしかロティチャナイは無いので、グループ会社の社屋で働く人と個別でミーティングがある時は、朝の時間帯にこのカフェテリアを指定して、少し早めに行きロティチャナイを食べ終わった後に珈琲を飲みながらミーティングをする段取りにしている。

ある日、この段取りでミーティングを組み、ロティチャナイを心待ちにしながら、このカフェテリアに来た。異動前に、この社屋で働いていた深雪はこのカフェテリアのおじさんとは顔見知りだ。
おじさんに挨拶をし、ロティチャナイを注文すると
「ごめんねー。今日はロティチャナイ、もう売り切れちゃったのよ。他の物食べる?」
と言われ
「え!売り切れ??何で?新しいの作れる?」
と悪あがきを試みたが
「今日はもう作れないのよ。」
と返された。カフェテリアのカウンターの後ろにお皿に乗ったロティチャナイが目に入った深雪は
「そのロティチャナイは食べられないの?」
と聞くと
「これは既に売られたものなの。ここでキープしてるだけなの。」
と言われた。深雪は悲しそうな顔をしながら両手で目から涙が零れているジェスチャーで悲しみを表現した。
するとキープしてあったロティチャナイを買った人-以前仕事で関わったことがある人が後ろから表れ
「2枚あるから1枚あげるよ。」
と申し出てくれたが
「大丈夫!冗談でしてただけだから、お気持ちだけで。ありがとう!私は違うものを注文するよ。」
と答えるも、その人とカフェテリアのおじさんの阿吽の呼吸で、おじさんからロティチャナイを1枚とカレーを渡された。
ロティチャナイをくれた人に何度もお礼を言い、カフェテリアのおじさんに飲み物を注文した。

飲み物代を払おうと幾らか聞くと
「ロティチャナイをくれた人の友だちが既にあなたの飲み物代、払ったよ。」
と言われた。
いつの間に!!とビックリしつつも、深雪は彼らのテーブルに行き、そのお友達に飲み物のお礼を言い、改めてロティチャナイをくれた人にもお礼を伝え自分のテーブルに戻った。

2人に感謝しながら、普段よりも味わって食べた。ここのロティチャナイは外のお店のロティチャナイよら美味しいと深雪は思っているが、この日は特別美味しく感じた。

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