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Photo by
soranochihiro
高野山のお土産屋さんにて
文香は数珠を買おうと、高野山のお店にいた。仏教系の幼稚園出身の文香はずっと、幼稚園でもらった数珠を使っていたが、そろそろきちんとしたものを買った方が良いのではないかと思っていた。
沢山ある様々な種類の数珠を前に、どう選ぼうか少し戸惑っていた。祖母は108個の木でできた数珠を使っていたが、文香は使いこなせる自信が無かった。
パッと目を引いたのがピンク色の透明の数珠。とてもキラキラしていて綺麗で一瞬で目を奪われた。ただ、今までピンクの数珠を持っている人を見たことがない文香は、はたしてこのピンクの数珠は法要の席等に相応しいのかどうか分からなかった。
店員が声を掛けにきたので
「このピンクの数珠に惹かれてるのですが、ピンク色ってどうなんでしょうか。祖母に怒られるかなぁと心配しています。」
と尋ねてみた。
「そんなん、怒られへんよ!和尚さんのおざぶは赤色でしょ。」
と返ってきた。
恐らく、このお店のオーナーまたはオーナーの家族であろう、この中年女性はとても声が大きく豪快な感じで小気味よい会話のテンポだった。
なにより、おざぶという表現を初めて聞いた文香は、その言葉の響きがとても面白いと思った。
オブラートに包んだ表現が苦手でストレートな表現でキツイと人から言われがちな文香は言葉を発する前に色々と考えを巡らせるからか、この女性のように切れ味が良い会話をする人にとても憧れる。
とても短い会話だったけれど、とても印象に残る出会いだった。