なぜ台湾のマングローブは伐採されるのか?生態系保護の最前線
ある日、淡水に近づく車窓を眺めていると、マングローブの伐採工事が行われているのを見かけました。多くの重機が木々を切り倒し、根を掘り起こしていました。なぜマングローブが伐採されているのでしょうか。調べてみると、深い理由があることが分かりました。
マングローブが伐採される理由
台湾の沿岸地域でマングローブが伐採される理由には、いくつかの要因があるようです。まず、マングローブはもともと台湾の一部地域には存在していない外来種であり、その密集した成長が生態系のバランスを崩す原因となっているのです。特に、渡り鳥や底棲生物が生息できなくなり、台湾固有の招潮蟹(カニの一種)などが生息地を失ってしまいました。さらに、洪水排水の問題も深刻です。マングローブが河川や海岸に広がることで水の流れが悪化し、上流の水位が上昇して洪水のリスクが高まることも、伐採の理由となっています。
マングローブが植えられる前の情景
マングローブが植えられる前、台湾の沿岸地域には広大な灘地が広がり、そこには豊かな生態系が存在していました。特に、台湾固有の旱招潮蟹やその他の底棲生物が多く生息していました。また、広い砂地や泥灘地は、毎年多くの渡り鳥にとって重要な生息地であり、鳥たちは底棲生物やカニを餌にしていました。これらの泥灘地は、カニや鳥、魚、貝類などが共存する独自の生態系が発達していた場所でした。水の流れも自然で、砂質の土壌が保たれ、浄化機能も働いていたのです。
なぜマングローブが植えられるようになったのか
マングローブが植えられるようになった理由は、主に海岸保護と生物多様性の促進に対する期待からです。マングローブはその根が強固で、沿岸の防波効果や浸食防止に役立つと考えられていました。また、生物多様性を豊かにするという誤解から、多くの生物を湿地に引き寄せると信じられていました。さらに、近年ではマングローブは成長が早く、二酸化炭素を吸収するブルーカーボンとしての役割を果たすことから、気候変動対策の一環としても注目されるようになっています。
マングローブの問題点
しかし、マングローブの導入には多くの問題が伴います。まず、外来種としてのマングローブは、先述のとおり、既存の生態系を破壊し、もともと生息していた台湾固有の生物を追いやってしまいます。特に、底棲生物や招潮蟹は、マングローブの酸性度が高いため生息できなくなりました。また、洪水排水の悪化や砂地が泥地化することで、渡り鳥やその他の種がその地域を利用できなくなっています。さらに、気候変動対策としての炭素吸収に注目されていますが、マングローブの成長過程で放出される温室効果ガスが、逆に環境に悪影響を与える可能性も指摘されているようです。
今後はどうなるのか?
今後、台湾ではマングローブの伐採と生態系の回復が進められる見込みです。すでに多くの地域で、人為的に植えられたマングローブの除去が始まっており、これにより元々の灘地や泥灘地が回復し、台湾固有の生物が戻り始めています。さらに、今後は湿地保護法のもとで、自然の湿地を適切に管理しながらマングローブを制限する取り組みが進められています。重要なのは、炭素削減のためにマングローブを過度に利用するのではなく、元々の自然状態を維持しつつ生物多様性を守ることを進めています。
このように、マングローブの植林と伐採は台湾の生態系に大きな影響を与えてきました。今後、台湾政府は自然と共生しながら、過去の誤りを修正し、持続可能な生態系の保全を進めることが求められます。