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その翳(かげ)、離れがたく繋ぎとめるもの 黒碕 薫著

まず、この小説の構成はるろうに剣心裏幕― 炎を統べる―の110ページ目から始まる小説であり、その前ではるろうに剣心の主人公剣心の最大の敵である志々雄真実が自分の組織である十本刀を結成する様子が漫画で描かれている。

その漫画で描ききれない細かい描写がこの小説では描かれている。
あらすじは志々雄、方治、宗次郎らが十本刀招集の際に吉原の遊郭に宿泊する。そしてここで出会う世話役が後に志々雄の愛人となる吉原で当時一番人気の花魁、華焔こと駒形由美とその妹分の華火である。

そしてこの小説の主人公は志々雄真実の右腕である方治(ほうじ)と遊女の華火(はなび)であり、両者の甘く少し切ないやり取りが最大の醍醐味である。

また、いくらるろうに剣心とは言え比較的子供向けのアニメであるジャンプ作品の中の小説でも、卓越した対比の表現や隅々まで描かれた生活感のある文体は成人した人でも読んでいて心地よいのではないだろうか。

そして漫画でもその結末が分かってしまうのだが、小説で登場する華火が方治の取れていたスーツのボタンを修繕するシーンは振り返ると切なく、悲しい感情に浸ってしまう。

るろうに剣心がわからない人でも理解しやすい1作品で完結できるタイプなので、おすすめです。