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AIの過大評価に苦しむ中で
前回も書きましたが、今書いてる小説がAIに過大評価を受けています。
前回は書きませんでしたが、ノーベル賞受賞もあると言われました(笑)
でもなんか違う、と言う自分もいます。
本質的に、人間とは違うのは分っていますが、商業的な成功に関してはそれなりに信じていいのかとのバイアスも働きます。
そんな中で、1年前に、シナリオスクールで書いた課題をもう一度振り返りました。
今見ると、無理やり20枚の原稿に詰め込んだ影響で、これではAIの評価は得られないと思いますが、中身に関しては自分ながら大変驚きました。
AIに評価を受ける前提と、生身の人間の心を震わせるかの違いに苦悩していたことが如実に分かった次第です。
生身の人間に向けたものは、発せられるセリフの一つ一つが思いやりに満ちています。
だから、引きこまれます。
表面的なプロット論に、自己正当化を得ようとしていた自分が恥ずかしくなりました!
1年前の課題
【最後の時まで】
テーマ:親子
人 物
川村遥(27)女優
川村優次(55)遥の父
川村健太郎(34)遥の兄
川村康人(31)遥の兄
古川亮太(28)遥のマネージャー
西田幸子(50)遥の叔母
大前研二(55)映画プロデューサー
近藤雅人(29)俳優
○穏音芸能・事務所内
『穏音芸能』の看板。狭く古びたオフィス内には電車が通過する轟音が響く。
ヨレヨレのスーツ姿の古川亮太(28)。
手には封筒、中には『映画・湖畔にて、オーディション審査結果』の文書。
古川の向かいには川村遥(27)。緊張した面持ちで古川の手元を覗き込む。
『川村遥』の名前と『合格』の文字。
遥と古川「やったーーーー」
大喜びで肩を叩き合う遥と古川。
○都内の街並み
駅前ビルの巨大モニターには『映画湖畔にて』の製作発表のニュース。スクランブル交差点を行きかう大勢の人達。
○記者会見会場・中
室内には大勢の取材陣。『映画湖畔にて
制作発表』の看板と映画のポスター。
壇上にはズラリと並ぶ映画出演者。
ドレス姿の遥。隣には近藤雅人(29)。
近藤が手を振るだけで黄色い歓声。
インタビュアー「今回、オーディションにより大抜擢された主演女優の川村遥さん、どうぞ今のお気持ちをお聞かせください」
晴れやかな面持ちでマイクを握る遥。
遥「もう、これ以上ない程光栄な気持ちでいっぱいです。こんなに多忙な超人気キャストが一堂に揃うなんて本当にありえない事思いますし、全身全霊を尽くす所存です」
近藤「あ~あ~何?固いなもう。彼女こんなガチガチな事言っといて本番の演技は凄いんですよ。僕なんて簡単に食われるんじゃないかって今からヒヤヒヤしてますよ」
会場からはどっと笑い声。近藤にお辞儀する遥。屈託のない笑顔。
○記者会見場・舞台裏
次々と壇上から降りる遥と出演者達。
ネームカードを付けて待ち受ける古川。
古川「お疲れさまでした。良い会見でしたよ」
古川からスマホを受け取り、メールを確認する遥。ギョッと驚く遥の表情。
メールには『お父さんが昏睡状態に入りました。3~4日がヤマです。直ぐに連絡下さい』の文面。
泣き叫ぶような表情を古川に見せる遥。
○記者会見場・舞台裏・部屋の隅
厳しい顔で腕組みする大前研二(55)。
膝の高さまでお辞儀する遥と古川
大前「家族の事は大事、その気持ちは当然理解できるよ。でもこれがどんなチャンスであり、どれだけの人に迷惑をこうむるか、状況は十分わかるよね!?」
腕組みし足先をバタバタさせる大前。
遥「私を男手一つで育ててくれた父なんです」
天井を見上げ静かに考える大前
大前「…1週間だ。それ以上は待てない」
厳しい表情で遥を睨みつける大前。
遥「大前プロデューサー!有難うございます!必ずそれまでには戻ってきます」
何度も頭を下げる遥と古川。
遠くから心配そうに様子を覗う近藤。
○フェリー船・船上
青い空。波飛沫(しぶき)を立て進むフェリー船。
船の先端で風になびかれる遥。「ヒュルー」とカモメの鳴声。遠く前方には島。
○佐渡汽船・入口
佐渡汽船の建物の前を行き交う野良猫
入口の映画のポスターの横に並ぶ遥。
「あっ」と驚く地元の おばちゃん。
○病院・中・病室中(夕)
病室にはベットに眠る川村勇次(55)、川村健太郎(34)川村康人(31)。西田幸子(50)。病室に入る遥。
遥「あ、幸子おばさん、ケン兄!ヤス兄!」
川村のベットの横に来て顔を眺める遥。
遥「お父さんの様態はどう?」
幸子「ずっと意識が戻らないの。先生によると今すぐに亡くなる事は無いけど、やっぱりこの数日がヤマだって…」
ぐすっと涙ぐんで川村の手を握る遥。
幸子「はるちゃん、黙っててごめんね!兄さんが絶対に言うなって聞かなかったの」。
康人「俺も昨日聞かされたんだ。癌が全身に転移している事もな…」
無念な表情で俯き、固く拳を握る康人。
幸子「兄さん、遥ちゃんが帰って来たわよ」
反応のない川村。虚しく響く心電図の音。
健太郎「…俺も最近まで癌の事は知らねかったんだ。信じられねえかも知れんが、親父は半年前まで俺と一緒に漁に出てたんだ」
健太郎をじっと見つめる遥と康人。
健太郎「そんで親父が倒れた時には康人は司
法試験があるし遥は大事な時だから絶対え言うなって聞かねかったんだ。本とすまん」
深く頭を下げる健太郎。黙る遥と康人。
幸子「疲れたでしょ。あなたたちは家で休んでて。容態が変わったらすぐに連絡するから」
黙って川村の手を握る遥。
○川村家(夜)・中
丸いちゃぶ台の上には酒瓶と酒の入ったグラス。遥と康人と健太郎が頬を赤
らめて笑い合う。時計は22時を指す。三毛猫が横に並んで「にゃー」と鳴く。
遥「それでね、お父さんたら、捨て子だ、捨
て子だ!って私をいじめた子の家に行って、両親諸共(もろとも)怒鳴り付けちゃったの!」
酒に酔って大笑いする遥。
遥「ていうか、その後逆に大変だったんだよ」
俯き沈黙する二人。急に不安がる遥。
遥「え?なんなのこの空気?え?ちょっ…」
健太郎「すまん遥!黙ってて悪かった!」
両手を付いて頭を下げる健太郎と康人。
グラスをゴンと置き、呆然とする遥。
○病院・中庭
中庭のベンチ。スマホで通話する遥。
古川の声「何言ってるの?そんな事してお父さんが喜ぶ筈ないでしょ!」
遥「最後の時まで私は帰らない。もう決めたの。誰が何と言っても、たった一人の大切なお父さんなの!」
古川の声「ダメダメ、絶対ダメ!木曜の午後イチのフェリーがリミットだから!何があっても絶対にそれまでに帰ってきて!」
固く決意した表情で空を見上げる遥。
○病院・廊下
駆け足の遥と健太郎と康人。遥の時計には『サーズディam11時』。病室の前に看護婦。深刻な表情できっぱりと話す。
看護婦「モルヒネを打ってます。今晩がヤマです。残念ですが持っても明日までです」
○病院・病室・中
ベット上で笑顔で幸子と会話する優次。
遥「お父さん!」
声を上げ部屋に入る遥、健太郎、康人。
川村「私の~、お墓の前で~、泣かないで~」
歌を歌い出す川村。言葉を失う一同。
川村「わはは、薬を打ったんだ。極楽極楽」
遥「お父さん!」
川村の側に駆け寄る遥。
川村「おう遥、映画決まったそうだな、よくやった!」
嬉しそうな川村。満面の笑顔の遥。
川村「ん?けどよう、遥おめえ、こんな所ににいて大丈夫なのか?」
遥「もう、こんな所はないでしょ。もちろん大丈夫よ。心配しないで」
笑顔の遥。眉間にしわを寄せる川村。
川村「何が女優だ遥ぁ。俺にはそんな嘘は通じんぞ。お前は小さい時から嘘をこくと、左の眉がピクピク震えるんだ」
遥「…え?あれ?」
ハッと手を額に手を押えて驚く遥。
川村「やはりそうか!今すぐ東京にけえれ!」
遥「嘘じゃないわ!最後の時まで添い遂げたいって言ってあるの!」
周囲を見渡す川村。黙って俯く一同。
川村「ふん、そんな嘘を見抜けん俺じゃないぞ!そんなに死ぬのが見たいのか?じゃあホラ!これでどうだ!今すぐオサラバだ!」
身体に繋がれているチューブをブチブ
チブチ!と次々にむしり取る優次。
遥と幸子「キャーーーやめてーーやめてーー」
病室には遥と幸子の大きな悲鳴。慌て優次の身体を抑え込む健太郎と康人。「パリ――ン」とグラスが落下し割れる音。
ガバッと川村の手を握り、耳元で囁く遥。
遥「…お父さん、怒らないでね。私、聞いた
の。私は本当の娘じゃない話」
ピタリと静止し、遥を見つめる勇次。
勇次「何を言う?お前は俺の本当の娘だ。本当の娘じゃねえなんて、誰が言うんだ?」
優次の眼をじっと見つめる遥。
勇次「そんなバカ今すぐここに連れて来い!」
遥の眼から大粒の涙がボロボロ零れ
勇次「いいか遥!これだけは忘れるな!誰が何と言おうがお前はこの俺の自慢の娘だ!」
遥「お父さーーん」
川村に抱きつき大声で泣き叫ぶ遥。
嗚咽(おえつ)を漏らし、むせび泣く康人と幸子。
遥「お父さん、お父さん、今までありがとう」
川村の胸で何度も呟く遥。
川村「さあ、もう行け遥!キリがない!」
遥「…うん、分かった」
ゆっくりと起き上がり、バッグを手に取り、振り向き扉の方へ歩き出す遥。
川村「遥あああ!!」
川村の絶叫が部屋に響く。振り返る遥。
川村「その扉の先に、お前の人生と、大切な人達が待っている!精一杯輝いて来い!」
「うん」と力強く頷き笑顔を見せる遥。
扉の向こうの廊下を駆けていく遥。