困った。困った。
困った。困った。また、人間嫌いになりそうだ。
人間ちゅうもんは、実に卑しい生き物だ。
私だって例外ではあるまい。
しかしながら、ひとつ私が気を付けていることがある。
『人の心を利用することはしたくない。逆に、自分の心を利用しようとするものは切り捨てて良し。』
自分のことは自分のことなのでコントロールできることだが、人にそのようにされる時、気づくのがアホほど遅いのが私である。酷い時はずいぶん時間が経ってから、「まさか!」と気づく、めでたいアホなのだ。これに気づくには、お人よしではいかんのであって、少しばかり、対する人によっては相当の性悪で当たらねばならない。最近は随分、性悪も出来るようになってはいるが、まだまだである。
「いいですよ。」
「大丈夫ですよ。」
「何でも言ってくださいね。」
そんなお調子者の言葉は滅多と言わないことにしている。
父が亡くなった後、しばらくして人に会うと気づく。
「お父様、大変だったわね。」
と大体の大人は声をかけてくださる。社交辞令とは分かっていても有難いものである。そんな中、社交辞令もすっ飛ばして、スキップ交じりに近寄り、「これから、色々頼んじゃうかも!」と、これからは私の番よね!と言わんばかりに私を都合よく使ってやろうとせん人を発見。
困った。困った。また、人間嫌いになりそうだ。
人間ちゅうもんは、実に卑しい生き物だ。
いつだったか、「一度、プロの人に頼んでみる!」と彼女は私をスッパリと切り捨てたのに、もう一度一緒に仕事がしたいと連絡してきた。
プロって…。一応、私も長年報酬を頂いていましたが、それはプロとは言わんのか…?ま。『私はプロです!』と言ったことはないけれど、報酬が発生する以上は、そのつもりでやってきたつもりではあったのだが…。プロって何を持ってプロと言うのか?
しかし、その『プロ』に頼んだのに駄目だったらしい。
おかしいですね…。
私としてはうれしい結果だった。ここで「いいですよ。」と言えば、収入が増える。あちらも、きっと、「収入が増えるんだから、WINWINでしょ?」とお金をチラつけせてニヤリとしている姿が浮かぶ。
ここでノルのはお人よし過ぎる。もう再度関わる気にはなれなかった。
いやしかし、この意地はやっぱりアホなのか?揺れ動く気持ちをグググっと抑え、結局いばらの道を選んでしまった。
困った。困った。また、人間嫌いになりそうだ。
人間ちゅうもんは、実に卑しい生き物だ。
夜遅めの時間にラインが鳴った。
義弟の嫁からだ。こんな時間にLINEが来ることはあまりない。
「保育園が決まりました!これからは、これまで以上にご迷惑おかけすることになりますが、よろしくお願いします!」
なんじゃこりゃ。彼女には二人の子供がいる。二人別々の保育園に決まったらしい。ご丁寧に保育園の名前までしっかりと書いていある。公務員の彼女は、二人分の育休をしっかり満期で過ごした後、四月からフルタイムで復帰するのだ。
「これはトラップだな…。」
横から首を突っ込んで見ていた主人が言う。今までのお人よしの私なら、このトラップにまんまとハマった。
介護もひと段落したはずだし、在宅で仕事だと時間に余裕あるはず。そして、子供がいないから子供と接するのは疑似体験ができてうれしいはず。
きっと、そう思われているに違いない。
何か知らんが何かを頼まれて私が断れば、
「あの子たちが可愛くないんですか?」
と訴えるような眼をして言うだろう。お嬢ちゃん、それは卑怯ってもんだ。可愛いくないわけじゃないし、万が一、可愛くないなんて言えば、人間性を疑われるところでもある。でもね。こちらにも色々な心情と言うものがあるのだよ(あんまり見ては欲しくないけど、このマガジンの1話目にあり。)。人の心を利用して脅迫する節が彼女にはある。
人の心を利用する前に、考えられることはまだあるはずだが…。
困った。困った。また、人間嫌いになりそうだ。
人間ちゅうもんは、実に卑しい生き物だ。
昔からの友人が切り出したのは、巧みにカモフラージュされた、ギリギリマルチ商法ではないマルチ商法だった。
一番大切な人から誘っている…。一緒に幸せになりたい人から…。
うん。その気持ち、大切に思ってくれている気持ち。その気持ちはうれしい。だけど、違うよ。私は大切に思ってくれている人の誘いを断った。
一度、クーリングオフしたというのに、最後に聞くだけ…と訪れた講演会で、彼女は落ちた。洗脳とは怖いもんだ。いくら長年の付き合いのある私が否定しても右から左だった。彼女を止められなかった。彼女は、私の次に大切だという知人の元へ去っていった。
結婚もしていない。子供ももう産めない。親の介護が待ってる。自分の老後。心配な要素しかない。そう言って、私を誘いながら彼女は目頭を赤くした。
宗教やマルチ商法…。もしかしたら、実際に素晴らしいキラキラしたものかもしれない。でも、人のそういう弱い心に魔の手を伸ばし、揺れ動く人の心を利用する…その時点でそれはもう素晴らしくもキラキラしたモノでもない。まやかしだ。
困った。困った。また、人間嫌いになりそうだ。
人間ちゅうもんは、実に卑しい生き物だ。
この二週間、たった二週間の間の出来事。
それもこれも、自分が蒔いた種なのか?
人の思惑が見えすぎるのも困った困った。
人から逃げたい今日この頃。