クソババア記念日
「クソババア」と君が言ったから、十一月十五日はクソババア記念日。
男児を産んだその日から、いつか息子に「クソババア」と言われる日が来るんだろうなと思ってはいましたが、そのXデーはあまりに唐突にやって来た。息子、小学三年生。私の見積もりより四年早い。
ついにこの日が来たか……!という謎の興奮を覚えつつ、かねてからシミュレーションしてきたクソババアへの対抗呪文を唱えた。
「クソババアっていうヤツには絶対ご飯作ってやんねー」
予想よりクソババア記念日が早すぎたせいでこちらの対抗呪文も小三レベルになってしまったことは見逃してほしいところだが、ともかく衣食住の食を取り上げられたら謝罪のカードを切るしかないであろうと私は鷹をくくっていた。
しかしいつも叱られた後にはすんなりと謝ってくる息子は、スカした態度で「いいし」と言うとスッと歯を磨き、そのまま一人で寝室に入り就寝した。(PM9:00)
さすが、クソババアと言ってのけただけあって覚悟が決まっている。
朝食、覚えておけよ。
息子が去ったリビングで、小五の娘が「大丈夫。まだクソババアって年には早いよ」と慰めてくれたので、加齢によりクソババアになるのかという発見があった。
翌朝、起き抜けで白米だけが置かれたダイニングテーブルを見た息子が「クソババアなんてもう言いません」と謝罪をしたのでクソババア記念日は幕引きとなった。