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【#72】2千円

高校の先生とご飯に行く事があった。
父が亡くなってから
数週間後くらいだった気がする。

当時のわたしを心配して
学校の行事をついでとして誘ってくれた。

前にも記した
海外のパフォーマーとショーを作る行事の
発表があり卒業生として
よかったら見に来てと。

この行事には思い出がある。
表現をするのが好きだったというのもあるが
数ある高校の行事の中で
唯一父が見に来た行事だった。

わたしたちの代は2回行われたが
2回とも見に来た。

父は海外ドラマのgleeが好きで
みんなでパフォーマンスをするのを
観るのが好きだったからだと思う。

高校時代、毎年あの行事はないのかと
聞いてくるくらいだった。

それをお客さん側として見る。
父がわたしを見守っていたように
後輩たちの勇姿を見守った。

行事が終わったあと
少し待っていると仕事を終えた先生が来た。

食べたいものを聞かれたが
特に思いつかなかったので
最寄りの駅にあった大戸屋に入った。

定食屋だ。
ご飯の種類を白米と雑穀米かに選べた。

わたしの豆知識だが
飲食店でまともに注文が通ることが
そうそうない。
大抵何かしら間違ってやってくる。

このときも店員にどちらにするか
聞かれたのではっきりと白米と答えた。

先生にこういう時大体間違えられるんですよねと話していると料理が来た。

案の定届いたのは雑穀米。

先生に変えてもらう?と聞かれたが
普段なら頼まないので大丈夫ですと答えた。

ご飯を食べながらいろんな話をした。
正直内容はあまり覚えていない。

でも少しでもわたしが前を向けるように
励ましてくれたと思う。

わたしとしては
この空間が存在するだけでありがたかった。

この温かさは
わたしにとって唯一無二だった。

感謝の気持ちが溢れた。
なのでわたしは先生が席を離れている間に
まとめて会計を済ませた。

帰ろうとしてその旨を伝えた。

すると店の外で
お金を払う、いらないの押し問答になった。

この状況で誘った身だから払うという先生。
恥ずかしく感謝の気持ちとは言えず
こういうのやってみたかったというわたし。

何度か言い合ったが
最終的に先生が無理やりお金を渡してきた。

2千円。
ただの2千円だが先生から貰った2千円。

なにか大切なときに使おうと決めた。
将来の我が子のおむつ代にしようかななんて。

そのお金はいまも使わずに大切に取ってある。

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