
今世紀末までに脊椎動物の種が27%減少か 科学者ら発表
欧州で最も強力なスーパーコンピューターを使って行ったシミュレーションによると、今世紀末までに、地球上の様々な場所で、脊椎動物の種が27%減少する可能性があることが明らかになった。
これは、2022年12月16日に学術誌『サイエンス・アドバンシス』に掲載された、欧州委員会の科学者ジョバンニ・ストローナ氏と豪フリンダース大学のコリー・ブラッドショー教授による研究が示したものだ。
それによると、1つの種の絶滅が「共絶滅」と呼ばれる絶滅の連鎖を引き起こすことも明らかになった。また、気候変動が最悪のシナリオをたどった場合、共絶滅を考慮しない場合においても、絶滅する種はさらに34%増えることもシミュレーションでは示された。
このコンピューターモデルには、炭素排出量を加味した気候変動予測と、土地利用の変化予測も組み込まれている。ブラッドショー教授によると、炭素排出量の削減に向けた政策は、地球全体に焦点を当てて実施される必要があることが、研究で明らかになったと述べた。
「生物多様性の保全と気候変動の緩和は、非常に密接に関係している」とブラッドショー教授は力説し、「より多くの生物種を保護できれば、次の100年に向けて、気候変動を影響をより一層抑制できるようになる」と述べた。
ブラッドショー教授は、「一つの種の絶滅がもたらす「共絶滅」の影響は無視できず、それによってどれだけ多くの種が失われるか、人々はあまりにも楽観的になりすぎている」と指摘し、「われわれが提供した枠組みによって、科学者らは、特定の政策が別の政策に比べて、より多くの種を救えるかどうかを見ることができる。私たちは、人類の歩む軌道が示唆していることを、より現実的に直視しなければならない。」と警鐘を鳴らした。
この研究を行うにあたり、科学者らは、仮想の生物種と15,000以上の食物網を持つ人工的な地球を作り、生物種の相互関係がたどる道筋を予測した。
その結果、南米、アフリカ、オーストラリアなど、現在最も生物多様性が豊かな地域が、気候変動や土地利用の変化の影響を最も受けることがわかった。
特に肉食動物や雑食動物は、自分たちが暮らす場所で、他の種が絶滅することの影響を受けると考えられる。
この研究では、昆虫や植物は調査していない。