コーヒーに足ある虫おちれば水輪に月ひとつのゆれるゆれる
2021年9月
籠二つ下げて違ふ似たような車ばかりが
思いのほか叩きつけられてゐて秋雨
ハザードランプのことばは異国の道に似た土砂降り
さいごのレーズンバターサンドは紅茶を瓶から注ぐはじめての初秋の音
ピザつり銭なく支払うとりおきの土砂降りではないか
がばりと起きた夫のクレセント錠をひつかく猫にも涼風
夜長を短く眠りし後の早朝は海沿い
返すための本の何を移動するのか知れず蟋蟀の声
蟋蟀の鳴いて洗濯機にも炊飯器にも冷凍室の氷のキューブ内にも
穂芒の鈴虫に負け水割りの薄まってゆくラタンテーブル
クワガタより小さき二匹の蛍光灯の傘の破れてゐる
コーヒーに足ある虫落ちれば水輪に一つの月のゆれるゆれる
風呂に蟻、出窓に蟻、湧き出る蟻、わたし、と、わたし、たち
まとめて連休を二度寝る終末を軋む法師蝉
幹線道路をセイタカアワダチソウの埋めてをる無頼
虫の音の庭には絶えず台風はコンクリート塀の裏へ
秋の虫は音か風かとおもふまっすぐに雨
小鳥きて台風は去る冷凍餃子で勝ちっぱなしの力士
ジャズに秋のホトトギス雑詠選集はバーターのコーヒー豆
列島の魂ぬけて低気圧明日あさっての朝擦るマッチ
サッカー・野球・クイズ・動物・ジャッキーチェンの古い映画や台風一過
どこでもよいフレンチトースト三枚が載る皿は白い(20230219)
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