寒がりな猫が飛び込んでいくはずの枯野は薄
12月5日
眼鏡を鼻でもちあげる透明のネバネバを貼りにいく前日の洗濯物
ホットケーキ焼く二枚目のリフレインに戻らないJーPOP
きのこのかたちのカフェは初めてのルカによる福音書とは無関係なクリスマスツリー
市街地を蝶結びした軌跡の結び目にカーナビの目的地周辺というアイコンは木のある自宅
乗り上げて顎を擦ったケンタッキーフライドチキンは警備員の崩れてビスケットの美味
業務上加湿器に曇りのない窓ガラスを嵌め殺してみた眼鏡市場のY字路は小文字で
急遽解凍した鶏むね肉とブロッコリーはシチュー沈み冷やされていく深夜
12月12日
太陽礼拝したし朝粥と白湯の白い生活
寒がりな猫が飛び込んでいくはずの枯野は薄
天婦羅といへば夫婦の隠語かにカタカナで書く苗字のならぶ
紅玉弐拾参萬圓青玉壱伍萬圓と記す通帳の余白
モールの屋上午前十時の駐車場のまばゆい
まだ君には若すぎるそのインバネス人民帽は似合っているが
パッツンの似合う女の「フラフラしない?」といふ丸眼鏡
12月19日
うずくまる靴紐を未来が結び直してわたしのコールドスリープ
手にアイス前だけを見て足元の母の気持ちは無いものとする
虚空とは母に靴紐なおされている間に少女が見ている未来
母のつむじなんて見たくなかった太るからミスタードーナッツは月に二度
苛立った片手で持てる花束を握る力を加減しているので
初老と思われている花束の似合う白いジャケットならば眼鏡は丸いのか
かっこいいでしょカードよりアプリがブレンドコーヒーしかたのまない行列の三番目まできて
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